不動産投資を始めたいが、資金も少なく現物不動産の購入は難しいと考える人も多く、そうしたニーズに対して、少額投資で始めることができる、さまざまな不動産投資商品が登場しています。
不動産投資にはさまざまな方法がありますが、中でも、昨今注目を集めているのが「不動産クラウドファンディング」です。
本記事では、不動産クラウドファンディングについて、メリット・デメリットを合わせて詳しく解説していきます。
不動産クラウドファンディングとは?
不動産クラウドファンディングとは、インターネット上で事業者が投資家から資金を集めて不動産事業を行い、そこで生まれた運用益の一部を、投資家に分配する投資手法です。
インターネットより少額から投資ができるのが特徴で、2017年12月に、不動産特定共同事業法が国土交通省によって改正されたことで可能になった、比較的新しい投資手法です。
現在は、不動産クラウドファンディングの知名度が上がるにつれ、多くのサービスが登場しています。
その他の不動産投資との違い
不動産クラウドファンディングと、その他の不動産投資との違いを見ていきましょう。
REIT(リート)
REITは「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとったもので、もともとアメリカで生まれた金融商品です。日本の不動産投資信託(REIT)はJ-REITと呼ばれ、投資家から集めた資金を元手に、専門家である投資法人がホテルやオフィスビルなど複数の不動産投資を行い、そこから得られた収益を投資家に分配する仕組みです。
REITの利益分配時期は、年に1〜2回と定められているため、利益を得られる期間が明確なのがメリットです。ただし、REITは、市場の影響を受けやすく、価格の上下動があります。実際に、2020年のコロナ禍においては、大きく値を下げました。
現物不動産投資
現物不動産投資は、マンションや賃貸住宅などを、自分自身で物件を購入して、賃料収入を得ることで、利益を得る方法です。マンションの一棟購入、区分マンションの購入など、いずれも大きな投資金額が必要です。
多くの場合、管理・運営面は専門の会社に委託しますが、経営の責任はすべて自分にあります。さらに、物件情報の入手、売却までの出口戦略や空室を生まないための対策など、不動産経営としてのノウハウも必要となります。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、仲介企業を介して、希望する企業に投資をする方法です。そのため、不動産クラウドファンディングとは、投資先する対象に違いがあります。別名を「融資・貸付型クラウドファンディング」ともいわれており、インターネット上で資金を募集します。
物件ではなく、企業に投資をするソーシャルレンディングは、仲介業者から企業に支払われるお金が、「融資」になるのが特徴です。企業が融資されたお金に対しての利息を仲介業者に渡し、そのお金を投資家に分配します。
また、ソーシャルレンディングは、株式投資と異なり、価格の変動リスクを抑えることができます。ただし、元本が保証されるわけではなく、倒産などによる貸し倒れリスクはあります。
不動産小口化商品
不動産小口化商品とは、実際に不動産のオーナーとなる権利(小口化された)を持つことができる投資商品です。同じ不動産を複数の投資家が共同で所有しますので、運用で生まれた収益は、所有している投資額に応じて事業者から投資家に分配されます。
一口の価格は物件価格と口数によって異なりますが、一般の投資家では買えないような高額の物件も、資金に応じた価格で購入できるのが魅力です。
(不動産小口化商品には「任意組合型」と「匿名組合型」の2つのタイプがあり、「任意組合型」の現物出資であれば対象不動産が登記され、現物不動産の保有者になることができます)
REITや不動産クラウドファンディングと異なり、不動産の所有権も得ることができますから、相続時の分割がしやすくなるなど、将来も見据えた投資商品だと言えるでしょう。
不動産クラウドファンディングのメリット
ほかの不動産投資との違いがわかったところで、不動産クラウドファンディングのメリット・デメリットを解説していきます。メリットだけではなく、デメリットも考慮した上で、不動産クラウドファンディングを利用するかしないか、検討してみてください。
まずは、不動産クラウドファンディングのメリットから見ていきます。
メリット① 少額からの投資が可能
不動産クラウドファンディングの投資金額は、1万円からでも可能です。少額からの投資ができるため、投資が初めての人や若い世代の人にも可能な投資であると言えるでしょう。
投資のリターンは、投資金額に比例しますので、少額からの投資から始め、経験を積むことで投資金額を増やしていくことも可能です。
メリット② 市況に影響されにくく、利回りが安定している
不動産クラウドファンディングは、株式などの金融商品と異なり、市況の影響を受けにくく、利回りが比較的安定していると言えるでしょう。不動産クラウドファンディングでは、投資金額が少額で可能なため、分散型の投資を行う人が多く、リスクが分散されることになります。単一の不動産への投資に比べて、全体への影響は少ないと言えるでしょう。また、投資家保護のために優先劣後方式を採用する事業者が多く、損失が出た場合には投資家を優先して守る仕組みがあるのも、リスク低減につながります。
メリット③ 基本的に何もしなくてよい
クラウドファンディング業者が間に入るため、投資家は基本的に何もする必要がありません。不動産クラウドファンディングであれば、管理・運営はファンディング業者が行なうため、利益の分配を待つだけでよいのが魅力です。
メリット④ 個人投資できないものにも投資可能
一般的に、商業施設・ホテル・病院などに個人投資するには莫大な費用がかかる、商業施設・ホテル・病院などにも投資が可能です。資金調達や物件を購入した際に発生する決済や不動産投資などの、難しい手続きもなく、投資が可能です。
メリット⑤ 社会貢献などの応援ができる
不動産クラウドファンディングの中には、地域創生や再生可能エネルギーなど、社会貢献につながるものもあります。少額の投資でも、ESG投資にかかわることが可能です。
不動産クラウドファンディングのデメリット
不動産クラウドファンディングは、メリットだけではありません。投資をする際は、メリットだけではなく、デメリットも理解した上で利用しましょう。
デメリット① 元本割れのリスクがある
不動産相場が下落すると、家賃収入が下がって、収益が減る可能性があります。想定利回りより分配金が下がる、元本の一部または全部が返還されない可能性があることは、リスクとして備えておく必要はあります。
デメリット② 融資を利用できない
不動産クラウドファンディングは、融資を利用することはできず、全額自己資金で行う必要があります。
デメリット③ 途中解約に条件がある
中途解約に対応していない運営会社・ファンドがあり、権利を売却することもできない場合があります。また、運用期間があらかじめ設定されていますので、流動性が低いことも、デメリットのひとつかもしれません。
不動産クラウドファンディングにおいて注意すべきこと
続いては、不動産クラウドファンディングにおいて、注意するべきポイントをご紹介します。
運営会社の信頼性
リスクの少ない投資を行ないたいのであれば、信頼できる運営会社に投資を行なうようにしましょう。運営会社のこれまでの実績や、出資を受けている大手企業の有無など、倒産リスクの低さを確認しましょう。
取扱物件数・物件情報
運営会社が取り扱いしている物件数も、事前に確認しておきましょう。取扱物件数が、多ければ多いほど運用の選択肢が広がります。
物件数と合わせて、物件情報も確認しておきましょう。物件情報には、所在地・築年数・立地情報・施工会社・設備・収支シミュレーションなどが記載されているため、投資をして利益が期待できるかどうかの、判断基準になります。
取扱物件の入居率
マンションなどの人が居住する物件に投資を検討している場合は、入居率も大切な判断基準のひとつになります。居住用の物件は、空室によるリスクが発生します。空き部屋があると、その分の家賃収入が得られず、収益も減少するため、分配される利益が少なくなります。
運営会社の物件状況から確認できない場合は、インターネットの賃貸サイトで空室状況を確認できる場合もあります。
不動産クラウドファンディングの収入は「雑収入」に分類される
不動産クラウドファンディングで得た収入は「雑収入」に分類されるため、税金がかかります。
一般的に、利益の分配時には、20.42%の所得税(復興特別所得税を含む)を源泉徴収した後に、投資家に支払われる仕組みです。しかし、雑収入は所得が大きい人の税率が高くなり、所得が少ない人は低くなる累進課税が適応されます。
累進課税では、年間の収入が3,299,000円までであれば、税率は10%です(国税庁ホームページより)。不動産クラウドファンディングで得た収入が、累進課税で定められている金額以下であれば、確定申告で払いすぎた税金の還付を受けられます。
*条件により異なる場合がありますので、詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。
ただし、年末調整を受けた給与所得以外での収入が20万円以下の場合は、原則として確定申告は不要です。確定申告には、税に関する知識が必要になるため、個人での書類作成が難しい場合は、税理士に依頼をする方法もあります。
出資の割合
不動産クラウドファンディングにおいて、投資家の損失リスクを最小限に抑える優先劣後出資という方式があります。
この方式により、運用が終了した際に物価評価が下落して損失が発生した場合、最初に運営会社の出資金(劣後出資者)が補填されます。そのため、投資家の出資金が最初から使われるわけではありません。
劣後出資の割合は各ファンドによって異なり、一般的には5〜30%の範囲で設定されています。出資割合が30%に近づくほど、損失リスクは低くなるのです。逆に、出資割合が10%であれば、損失リスクは高まる可能性があります。
適切な情報開示
不動産クラウドファンディングでは、事業者や不動産の情報の開示範囲が決まっているわけではありません。詳しく開示している会社もあれば、概要のみしか載せていない会社などさまざまです。
どれぐらいの範囲の情報を開示しているかは、会社の健全性を知る目安になります。選ぶ際のポイントとして、運用している事業の「損益計算書」といったものが開示されていると安心です。
情報を開示している範囲が広ければ、不動産の価値やエリア内での需要が見えるため、適切な情報開示をしているファンドがおすすめです。
リスクを回避する
少額といえども投資に変わりはありません。できる限りリスクを回避するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
1:利回りだけを重視しすぎない
2:長期運用よりも短期運用にする
3:複数の案件に投資を分散する
4:過去の記録に、元本割れがないかチェックする
この中でも、最も重要なのが「利回りだけを重視しすぎない」点です。利回りが大きければ収益も大きくなりますが、ハイリスク・ハイリターンになります。リスクを回避しつつ上手く投資をするには、利回りが低い案件から始めるのもひとつの方法です。
利回りが低い案件は、収入が安定しやすい傾向にあります。事前の情報収集をしっかり行いましょう。
少額投資の手数料負けをしない
不動産クラウドファンディングの投資には、少額であっても手数料がかかります。1万円といった少額投資をする際は、手数料負けをしないようにしましょう。手数料負けとは、投資によって得る利益よりも、投資にかかる手数料の方が大きいために、損失が起こることです。
利益が小さい場合や、手数料の価格が大きすぎる場合に、手数料負けが起こりやすくなりますので注意しましょう。不動産クラウドファンディングのサービスごとに設定されている提携銀行を利用するのも対策のひとつです。
ひとつのサービス・案件に資金を集中させすぎない
資金をひとつのサービス・案件に集中させすぎてしまうと、トラブルが発生した際の損失を、全て被ることになってしまいます。そのため、複数のサービス・案件に分散をするのがおすすめです。
また、ひとつの事業者の案件を複数持っていても、リスクは分散されません。その事業者が莫大な資金の運営に失敗をして倒産・投資元本の返済が遅延するようなことがあれば、分散していたつもりの全ての案件に損失が生まれてしまうので注意が必要です。
トラブル対応の有無
どのような投資にも言えることですが、トラブル対応の有無は、非常に重要なポイントです。投資した不動産会社や運営会社に、万が一のトラブルがあった時の対応が、しっかりしているところを選ぶことも大切なポイントです。
複数の事業者を比較した上で、候補が決まったら、過去のトラブルやその対応についてリサーチしておくようにしましょう。
まとめ
不動産クラウドファンディングは、まだ比較的新しい投資の手法です。少額投資も可能なため、初めての投資や若年層の人にも適しています。しかし、投資にリスクはつきものです。メリットだけではなく、デメリットも理解した上で、利用の検討をしてみてください。