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税務

中小企業の生命保険活用法 その1

今回から2回にわたり中小企業の生命保険活用法について解説していきたいと思います。
ご自身で会社を経営されている方で、生命保険に個人で契約した場合と法人で契約した場合とではどちらが有利なのか、比較・検討している方も 多いかと思います。
では、契約者が個人の場合と法人の場合とでは何が違ってくるのでしょうか。
個人契約の場合には、保険料を個人が支払い保険金を受け取るのも個人(あるいは家族)となり、法人契約の場合には、保険料を法人が支払 い保険金を受け取るのも原則的には法人となります。
もちろん、これだけでは有利・不利は判断できないでしょう。
それでは、生命保険と密接な関係がある税金はどうなっているのでしょうか。

生命保険に個人で契約した場合

ご存知のように、個人の所得税では生命保険料控除という制度があり、年間で最大12万円の生命保険料控除(介護医療保険、個人年金保険を含む)の適用が受けられますが、この制度の適用を受けた場合でも、実際には住民税も含めて年間でも最大6万円前後の税金が安くなるにすぎません。個人で支払っている生命保険料は個人事業の必要経費とはならず、生命保険料控除の適用を受けることができるだけなのです。

生命保険に法人で契約した場合

これに対して、法人契約の場合には生命保険の種類等によりますが、会社が支払った保険料は会社の経費となり、その半分が損金(法人税法 上の費用)となるような生命保険も多々存在します。
仮に月の保険料が10万円で保険料の半分が損金となる生命保険に法人名義で加入した場合、年間の保険料は120万円となりますが、その半分の60万円が法人の損金となるため、法人税等の実効税率を仮に30%としたとき、その事業年度の法人税等が18万円(60万円×30%)安くなり、節税効果があることになります。
では、なぜ保険料を支払うとその事業年度の法人税等が安くなるかといいますと、法人税等は会社のもうけである所得(利益)に対してかかる税 金のため、保険料のような新たな損金が発生すると、原則的にはその損金×税率分の税金が安くなる構造となっています。
法人契約の場合には、個人のときの生命保険料控除の上限12万円のような金額が存在しないため、保険料の金額によって節税効果も増減することになります。

法人で契約したほうがお得?

それでは、生命保険は法人で契約をしたほうが損金にもなるので税金面では断然お得となるのでしょうか?
上記の法人の事例の場合で、契約から10年経過後に保険契約を解約した場合を考えてみましょう。
支払った保険料は総額で1,200万円(120万円×10年)となり、仮に生命保険の解約返戻率が100%、法人税等の実効税率も30%だったとしますと、解約返戻金は支払った保険料と同額の1,200万円となり、この解約返戻金による収入は法人税等の対象となり課税されることになります。
では、解約返戻金を受取ることによって法人税等はいくらかかることになるでしょうか?
この場合には、解約返戻金の合計額1,200万円から、保険料支払い時には損金としていなかった金額の合計額600万円を差し引いた600万円に対して課税されることになります。
実際に計算してみますと、法人税等は600万円(1,200万円-600万円)×30%の180万円となりますが、実はこの金額は保険料を支払っていた10年間に節税の恩恵を受けていた金額の合計金額(18万円×10年)と同額になります。
つまり、保険料を支払うことによって安くなっていた法人税等ですが、生命保険の解約返戻金を受け取ることによって一時に課税されることとな り、今まで節税効果の恩恵を受けていた金額の合計額を解約した事業年度の法人税等として支払うことになります。
生命保険による節税ですが、実際には課税の繰延べ効果を有するにすぎない場合が多数なのです。

本当の意味での節税効果

それでは、生命保険を使った節税というものは課税の繰延べにすぎず、解約返戻金を受取ったときには必ず法人税等が発生し、支払わざるを得ないのでしょうか。
このことを考える際のポイントは出口戦略となります。
生命保険契約を解約したときに受け取る解約返戻金ですが、この解約返戻金を受取る事業年度と同じ事業年度に事前に準備しておいた別のイベントを実行することによって、課税の繰延ではない本当の意味での節税効果を享受することが可能となります。

次回はこの別のイベント(役員退職金、大規模修繕)を実行する方法について、具体的に説明していきたいと思います。

 

税理士 西村敦正氏
株式会社BAMC associates代表税理士。相続・事業承継を中心とする資産税が専門。1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案件に精通している。

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