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不動産市況

「東京への一極集中」が一段と顕著に

東京への一極集中が一段と顕著に

仕事柄、全国各地を訪れ、多くの都市を見ているが、東京の変化は群を抜いている。そこで感じることは、東京は国内の他の都市と比較するものではなく、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海などとの比較で論じなければならない、ということである。
今年3月、国土交通省が発表した「地価公示」を見ても、東京圏と地方圏とでは価格水準が桁外れに違うだけでなく、価格の推移、変化のトレンドも全く異なっている。
図表1は、東京圏と地方圏の地価の推移を示したものだが、その方向は住宅地・商業地とも、真逆になっている。また、東京に次ぐ第2・第3の都市である大阪市や名古屋市と比較しても大差がついており、地価上昇のトレンドは全く異なっている。例えば、東京の銀座地区の価格は1990年頃のバブル期を上回っているが、大阪市の梅田はバブル期には遠く及ばない水準に止まっていて、格差は一段と拡大している。

都内でも見られる格差


東京と他の都市との格差が進行しているが、同じ東京でも、地区や地点による地価水準は、天と地ほどの差異が見られる。図表2は、東京23区の住宅地価の平均値を比較したものであるが、区によって大差がついている。前年比で見ても、千代田区、港区の伸びが目立っている。一方、足立区、葛飾区、江戸川区等では、上昇はしているものの、その幅は小さい。
このように、格差時代と言われる中で、東京・特に中心部の存在感は一段と増している。今、東京の都心部を回ってみると、高層ビルや超高層のマンション群が競い合うように建設され、都市開発が数多くの場所で行われている。東京の経済力の凄さが実感できる。地域経済の活力が雇用を生み出し、人を惹きつけていることは言うまでもない。
東日本大震災後の復興が遅々として進まないのは「働く場所」が少ないからであり、そうした場所に、人はなかなか集まってこない。東京には「働く場所」が数多くあるからこそ人が流入し、人口増加が続いている。東京23区への転入超過数のデータを調べてみても、今世紀以降、一貫して転入超過の状況が続いている。リーマンショック直後の数年間は、経済環境が厳しく、転入超過数は少なかったが、その後は増加している。直近の日本の人口は、年間で約30万人の減少となっているが、そうした中で東京23区への人口流入が続いている。
東京の地価・不動産価格が高水準で推移しているのは、活発な雇用、それに伴う人口増加と異次元の金融緩和によるものと言える。これらの条件が揃っているからこそ、長期に亘って東京の地価上昇が続いてきた。今後も、これらの条件に変化が無いか否かを注意深く見ておくことが肝要と言える。

富裕層が与える大きな影響


高水準な東京の地価を支えているもう一つの理由として、富裕層の多さを挙げておきたい。最近では、世界的に見ても所得・資産の格差が拡大しているという事実がある。日本でも同様に、格差社会が出現していることは、否定できない事実と認めざるを得ない状況に達している。
ほんの一握りの富裕層の人達が資産全体の大半を持つ時代になったことで、不動産市場への影響も強まっている。図表3は、都府県別に見た年収1億円以上の人数を示したものであるが、東京都の割合は圧倒的となっている。また、図表4は、所得の高い市区町村の上位10位までを示したものであるが、ここでも東京都区内が突出して多くなっている。
東京は、大きな経済力、増加する人口、更に富裕層のボリュームも大きい。しかも、その富裕層は厚みを増してきている。即ち、富裕層の人達の増加が続いている。
富裕層の人達が住宅や土地を取得する時の考え方は、「価格で買う」というよりは、「価値で買う」というところから発想することが多い。「希少性」のある立地や環境であれば、それこそ「金に糸目をつけない」のである。その結果、経済的合理性を超えた価格であっても取得するということになる。

目が離せない金融情勢

何れにせよ、様々な市場環境から考えると、東京の抜きん出た価格を説明できないこともないのだが、今後注意しなければならないのは「金融」である。現在の選別融資が更に強まっていけば、東京の高値を支えている所与の条件に変わりがなくても、価格の調整が余儀なくされることになる。

 

不動産市況アナリスト 幸田昌則氏
ネットワーク88主宰。不動産業の事業戦略アドバイスのほか、資産家を対象とした講演を全国で多数行う。市況予測の確かさに定評がある。

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