2017.05.10
融資

銀行員は決算書のどこをみているか

銀行員が決算書を受け取り最初に見るのは「黒字であるか?」「純資産先であるか?」「債務償還年数が一定範囲内か?」の3つです。 銀行は年一回以上、融資先の財務内容や今後の見通しなどを踏まえ、融資先の「格付け」作業を行います。そしてその結果で融資先の融資方針は大方決定されます。ですから、この3つのポイントをしっかり押さえ、格付けを上げることが銀行取引を有利にするにはとても重要です。

元メガバンク支店長 菅井敏之氏 三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事した後、支店長を歴任。[br] 48才で銀行を退職。起業し、アパート経営に力を入れる。現在は年間7000万円の不動産収入がある。[br] 銀行員としてお金を「貸す側」、不動産投資家としてお金を「借りる側」、どちらの視点も持つため、講演やセミナーでも一躍人気講師になった。[br] 初の著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム 2014年3月)は40万部を突破。

topics1

1.黒字か赤字か

前期決算は黒字であったか、今後も安定的に黒字を維持できるのかについてチェックされます。赤字である場合は、何か一時的な要因(不動産取得・台風影響などの特別損失)が発生したのか、低稼働が続いており慢性的な赤字になっているのか、ということがチェックされます。[br] 本業の儲けを示す営業利益を上げられず、営業赤字が続くようであれば、事業の存続意義は無いとされ、融資は受けにくくなります。[br] 税金を払いたくないと、何でも経費計上をし、平気で赤字を計上する大家さんがいます。税務対策にはなっても、財務対策にはなっていません。損益状況が赤字では金利引き下げ交渉もうまくいかないでしょう。銀行員が金利を下げるのは、他行からの借り換えを阻止するためです。赤字先を積極的に肩代わりする銀行などありません。

topics2

2.実質自己資本はプラスか

銀行は、皆さんから提出された決算書類の資産明細について補正評価を行っています。簿価をそのまま審査に使用している金融機関はほとんどありません。そしてこの補正された時価ベースの自己資本が「実質的な自己資本」であり、そこがゼロを下回った場合、「実質債務超過先」と判定します。[br] 不動産の評価方法には「積算評価法」「収益還元法」「取引事例法」があります。それぞれの評価方法について、十分に理解しておくことは賃貸事業者として必須であることは言うまでもありません。[br] 資産の中で、区分マンション・海外不動産・太陽光発電・築古不動産などを銀行がどう資産評価しているか。資産を拡大していくステージにおいて、そのことを十分に頭に入れながら取得していかないといけません。銀行によって「クセ」がありますので、取引銀行に確認されることをお勧めします。[br] 出資金・関連会社貸付金・その他流動資産などで回収困難なものは減算します。社長への貸付金などは論外です。経営姿勢が問われますので、回避して下さい。

topics3

3.債務償還年数

「債務償還年数が長い」とはつまり「過剰債務の状態にある」ということです。[br] 「キャッシュフロー=利益+減価償却費」に対して借入金が多く、完済までに相当な時間がかかってしまうということです。[br] 実質的な有利子負債は、現預金をマイナスして計算します。[br] 「債務償還年数=実質的な有利子負債÷キャッシュフロー」[br] 一般的な業種ではおおむね10年以内であれば問題ない水準と判定されますが、不動産賃貸業の場合15年以内など長めの基準となります。[br] この年数が長いと過剰債務先となり、新規融資は受けにくくなります。[br] 債務償還年数を下げるには、キャッシュフロー(分母)を増やすか、借入金(分子)を減らすことです。地道に空室を減らし経費を削減し、資産売却などの財務リストラなどを行うしかありません。[br][br][br] 賃貸事業者の方は「税金対策」には熱心に取り組むものの、「財務」に関する対応は得意ではなく、かつ関心が薄い面があります。銀行は書類文化であり、口でいくら説明できても事業の通信簿である決算書類の内容が悪ければ、いいお付き合いはできません。そのことを十分に意識してください。

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます