住み替え費用の目安と4つの節税方法|データでわかるタイミングと資金計画を解説

現在の家が暮らしにくいと感じる方は、住み替えを検討することをおすすめします。しかし、ローンの負担や引っ越しによる生活の変化が気になり、住み替えをするか悩む方は多いでしょう。

今回の記事では、住み替えに関するデータをもとに以下の内容を解説します。

  • 住み替えをする主な理由
  • 住宅を2回以上購入する方の割合と年齢
  • 住み替えをためらう理由
  • 住み替えを実施した世帯の年収

ライフステージに合った家で快適に暮らすヒントを紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

1. 住み替えとは「現在のニーズに合った家へ引っ越すこと」

住み替えとは「既存の住居から、現在のニーズに合った家へ引っ越すこと」です。住み替えの主な方法としては「新居の購入」「賃貸から賃貸への引っ越し」などが挙げられます。本記事では「現在の家を売却し、新居を購入して引っ越すこと」を住み替えとして定義しています。

家の売買を行う住み替えでは、大きな決断が必要です。多額を扱うことはもちろん、生活環境が変化することに不安を感じる方は多いでしょう。実際に住み替えをした方のデータを参照したうえで、新居の購入を検討することをおすすめします。

2. 【データ分析】住み替えする人の現状

住み替えはどんな年代でも可能性があり、年齢や年収によって特徴が異なります。一般的な理由や傾向を把握し、自身の住み替えの参考にしてみましょう。ここでは、国の調査データをもとに解説します。

・住み替えを検討する主な理由は「ライフスタイルの変化」

住み替えを検討する主な理由としては、ライフスタイルの変化が挙げられます。慎重に検討して購入した家であっても、ライフスタイルの変化に伴い、住まいに対するニーズは変わります。

一般的に「世帯人数」「勤務地」「子育ての方向性」などは変化する可能性があり、それぞれの状況に対して暮らしやすい家の条件は異なるのです。実際に、国土交通省の「令和5年住生活総合調査(確報集計)結果」によると、住み替えのきっかけや理由とその世帯割合は以下のとおりです。

出典:「令和5年住生活総合調査(確報集計)結果

住み替えの目的として以下のような項目が挙げられていることから、ライフスタイルの変化を理由に引っ越しを検討している方は多いと分かります。

  • 世帯からの独立
  • 転勤や退職
  • 子どもの誕生・成長・進学

「間取りの変更」「バリアフリーへの対応」などの簡易的な工事であれば、リノベーションや建て替えによって解決できるでしょう。しかし、大幅な面積の増減や住環境の改善などを希望する場合は、住み替える必要があります。

住み替えは、ライフスタイルごとに変化するニーズに対応し、理想の生活を手に入れるための手段です。ご自身の理想を叶える最適な家を手に入れたい方は、住み替えを検討しましょう。

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・住み替えをした方の平均年齢は「40~60代」

マイホームは「一生に一度の大きな買い物」という印象が強い一方で、住み替えのために家を複数回購入している方は一定数います。国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査報告書」によると、各住居で暮らす方の住宅取得回数は、以下の図のとおりです。

出典:令和6年度住宅市場動向調査報告書

住宅を2回以上取得、つまり住み替えをした方は15%近くにのぼります。これは、7人の住宅購入者のうち1人は住み替えをしている計算です。

また同調査の以下のグラフから、住み替えを行った世帯主の平均年齢が分かります。

 

出典:「令和6年度住宅市場動向調査報告書」

初めて家を購入した方の平均年齢は、30〜40代がメインです。一方で、住み替えをした方の平均年齢は、40〜60代が目立ちます。また、30歳未満や60歳以上で家を買い替えた方は一定数おり、年齢に関係なく住み替えが行われていると読み取れます。

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・住み替えをためらう主な理由は「資金の問題」

「住み替えに対する意識調査」の結果から、敷居の高さがうかがえます。

住み替えを妨げる理由の76%は、資金面の不安です。近年は住宅価格や物価の上昇が続き、新居の購入資金を思うように準備できないケースが増えています。また、現在の住宅ローンが完済できていない場合、次の家の購入資金をどのように確保するかが問題です。

国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査報告書」によると、住み替えをした方の平均世帯年収は、以下の図のとおりです。

出典:「令和6年度住宅市場動向調査報告書

グラフを見ると、新築は600万~1000万円、中古は600万円未満の世帯年収が多いことが読み取れます。年収を理由に新居の購入をためらう方は多いですが、実際には幅広い年収層の世帯が住み替えをしているのです。

3. 住み替えの3つの方法

資金計画や生活スタイルによって、住み替えに適した進め方は異なります。ここでは、3つの進め方の特徴を解説します。

・売り先行(売却後に購入)

売り先行とは、今の家を先に売却してから新居を購入する方法です。売却代金が確定してから新居を購入するので、手元の資金を把握したうえで安心して進められます。売却を急がずに済むため、買い手との交渉を有利に進めやすいです。

一方で、売却から購入までの時間が長引けば、賃貸物件などで一時的に暮らす必要があります。引っ越しが2回になるため、費用や手間が増えます。

売り先行は新居の資金計画に余裕を持たせたい人や、実家など仮住まいのあてがある人にとって有効な方法です。ただし、2度の引っ越しによる費用負担も考慮したうえで、住み替えの全体予算を組み立てることが大切です。

・買い先行(購入後に売却)

買い先行とは、新しい住まいを先に購入してから、現在の住まいを売却する方法です。仮住まいが不要であり、今の家に住みながら時間をかけて物件選びができます。注意すべき点は、一時的に二重ローンを抱える可能性があることです。

今の住まいの支払いが完了していないと、新居を購入後に2つのローンを同時に返済しなければいけません。売却がスムーズに進まないと資金面での負担が大きくなり、価格を下げてでも売らざるを得ない状況になることがあります。買い先行は、住宅ローンの残債が少ない人や、新居をじっくり選びたい人に適した方法です。

・売買同時進行

現在の家の売却と新居購入を同時に進める方法であり、売却代金を新居購入にそのまま充てられます。費用負担や時間のロスを最小限に抑えられ、資金計画がシンプルになりやすいです。仮住まいを用意する必要がなく引っ越しは一度で済むため、余分な費用や時間のロスを抑えられます。

しかし、売却と購入のスケジュールを揃えることは簡単ではなく、計画通りに進まないリスクも考慮しなければなりません。売却先が決まると新居探しを急ぐ必要があるため、希望条件を妥協することになる可能性があります。一方で、新居を先に決めてしまうと売却を急ぐ必要があり、価格を下げて契約せざるを得ない場合があります。

売買同時進行は、住み替えの期限が決まっている人におすすめです。ただし、スムーズに進めるためには不動産会社と調整し、売却と購入の両方を同じペースで進める工夫が必要です。

4. 住み替えにかかる費用

住み替えでは、まとまった費用が必要であり、売却と購入の費用総額を把握しておくことが大切です。ここでは、売却・購入・その他に分けて具体的な費用項目を解説します。

・売却にかかる費用

売却にかかる費用の中で、一番大きい金額は仲介手数料です。たとえば、5,000万円で売却した場合、仲介手数料は約172万円かかります。売却にかかる費用の一覧は、以下のとおりです。

項目 金額
仲介手数料 売買価格×3%+6万円+消費税
印紙税 売却額に応じて数千~数万円
ローン繰上返済手数料 数万円
抵当権抹消登記 数万円

印紙税は、売買契約書に貼る収入印紙の金額であり、売却価格によって異なります。住宅ローンが残っていなければ、ローン繰上返済手数料と抵当権抹消登記は不要です。

売却を有利に進めるために、クリーニングや土地・建物の調査を実施するケースがあり、費用は数万~数十万円程度かかります。正確な金額は、売却前に不動産会社に確認してみましょう。

・購入にかかる費用

購入にかかる費用の中で金額が大きいものは、仲介手数料と不動産取得税です。不動産取得税の税率は、土地と住宅は軽減税率が適用され4%から3%に引き下げられます。仲介手数料は売買価格の3%程度必要なので、費用の総額は6~7%となります。

項目 金額
仲介手数料 売買価格×3%+6万円+消費税
印紙税 売却額に応じて数千~数万円
不動産取得税 固定資産税評価額×(3~4%)
登記費用 数十万円(司法書士費用含む)
住宅ローン関連諸費用 借入額の数%
火災保険・地震保険 保険会社によって異なる

不動産を購入する場合、固定資産税は一般的に精算金として日割り計算した金額を支払うことが通例です。印紙税や固定資産税は、引渡日に精算されるので詳細は内訳を確認してみましょう。マンションを購入する場合は、管理費や修繕積立金が日割り計算されます。

不動産取得税は、購入後に納税通知書が届いてから納付します。住宅ローン関係費用や保険料は、金融機関によって金額が異なるので事前に確認が必要です。

・その他の費用

売却費用や購入費用のほかにも費用は発生します。

たとえば、引っ越し費用は数万~数十万円ほどで、荷物量や時期によって金額が変動します。仮住まい関連費用としては、敷金や礼金などで数十万円が目安です。住み替えに伴う住所変更の手続きには、証明書取得費用として数千円かかります。

引っ越しも仮住まいも、選ぶ会社によって金額が変わるので見積もりで比較して決めると良いでしょう。家財道具を別途保管する場合は、トランクルームなどの一時保管費用が必要です。

5. 住宅ローン残債がある場合の3つの資金計画

今の住まいに住宅ローンが残っていても、住み替えを実現する方法はあります。ここでは、3つの資金計画の特徴を解説します。

・住み替えローン

住み替えローンは、現在の家の残債と新しい住まいの購入資金をまとめて借り入れる方法です。一時的な資金不足や二重ローンを避け、返済を一本化できます。ただし借入額は必然的に高額になり、毎月の返済額が重くなる可能性があります。

通常の住宅ローンよりも金利が高く設定される場合があり、総返済額が増える点には注意が必要です。また、金融機関によっては、住み替えローンの取り扱いがない可能性があります。

利用を検討する際は、無理のない返済計画を立てることが重要です。将来の収入とライフプランを踏まえ、返済期間の設定や金利の条件を慎重に検討しましょう。

・つなぎ融資

つなぎ融資は、新居購入の支払いが先にあり、現在の家の売却代金は後に受け取る場合に利用される短期融資です。数ヶ月から1年程度の期間が一般的で、売却が完了するまでの資金不足を補う役割を持っています。

通常の住宅ローンとは異なり毎月の分割返済ではなく、売却代金を受け取った時点で一括返済することが多いです。期限が短いため、売却が成立しなければ返済負担が重くなるリスクがあります。

住み替え時期を柔軟に対応できる便利な方法ですが、売却が計画通りに進むことが前提です。事前に不動産会社と販売スケジュールを明確にし、売却のめどを立てたうえで利用することが求められます。

・ダブルローン

ダブルローンは現在の家の残債がある状態で、新居のローンを別に組む方法です。売却と購入のタイミングを合わせる必要がないため、自分のペースで住み替えを進められます。

2つのローンを同時に返済するため、毎月の支出は増加します。金融機関の審査が厳しく、十分な返済能力がある人でなければ利用は難しいです。

ダブルローンは資金に余裕があり、急がずにじっくり売却と購入を進めたい人に向いています。利用を検討する際には、ローン完済時の年齢や将来の収入見込みを考慮し、長期的に無理のない返済が可能かを判断することが重要です。

6. 住み替え費用のシミュレーション

住み替えを検討する際、多くの人は「実際にいくらかかるのか」が気になるのではないでしょうか。ここでは、具体的に想定した価格で売却費用と購入費用を解説します。

・売却費用

住み替えを検討する際、現在の家を売るとどのくらい費用がかかるのかを把握することが大切です。築10年のマンションを3,000万円での売却を想定すると、以下のような金額となります。

項目 金額
仲介手数料 3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円
印紙税 1万円
ローン繰上返済手数料 1.65万円
抵当権抹消登記 1.85万円(登録免許税及び司法書士報酬含む)

売買契約書に貼付する印紙代として必要となる印紙税は、契約金額3,000万円の場合で軽減税率適用後1万円です。ローン繰上返済手数料は、たとえば三菱UFJ銀行を利用する場合に支払う手数料は1.65万円がかかります(2025年9月現在)。抵当権抹消登記費用は、登録免許税が不動産1個につき1,000円と司法書士報酬が1.747万円を合わせて約1.85万円です。

合計すると、売却に必要な費用は約110万円です。売却益が3,000万円以下の場合は「3,000万円特別控除」が適用されるため、譲渡所得税は課税されません。

・購入費用

新居を購入するときには、物件価格以外にも多くの諸費用がかかります。築10年の中古マンションを4,000万円(固定資産税評価額は2,545万円)での購入を想定して試算します。

項目 金額
仲介手数料 4,000万円×3%+6万円+消費税=138.6万円
印紙税 1万円
不動産取得税 2,545万円×3%=約76万円
登記費用 19万円(司法書士費用含む)
住宅ローン関係費用 22万円(借入額の2.2%想定)
火災保険・地震保険 3万円(5年契約想定)

売買契約書に必要な印紙代として印紙税は、契約金額4,000万円で軽減税率適用後1万円です。登記費用は、以下の内訳で合計約19万円かかります。

  • 所有権移転登記の印紙代:8万円(価格の1,000分の20)
  • 抵当権設定登記の印紙代:1.1万円(軽減税率を適用すると借入金額の1,000分の1)
  • 司法書士報酬(移転登記):56,678円
  • 司法書士報酬(抵当権設定登記):42,699円

住宅ローン関係費用は、借入額の2.2%想定し約22万円とします。保険を5年契約で約3万円とすると、合計費用は259.6万円です。

7. 住み替え費用の負担を抑える4つの節税方法

住み替えでは売却や購入に多額の費用がかかるため、節税できる制度を上手に活用することが重要です。ここでは、住み替えで利用しやすい4つの制度を解説します。

・3,000万円特別控除

マイホームを売却したときに利用できる、代表的な節税策が「3,000万円特別控除」です。売却によって得た譲渡所得から最大3,000万円まで差し引ける制度であり、多くのケースで適用できます。

たとえば2,500万円の利益が出た場合、特別控除を使えば課税額はゼロです。適用を受けるためには売却した翌年に確定申告を行う必要があり、手続きを忘れると控除を受けられません。

利用条件は「実際に居住していた家であること」や「売却先が親族でないこと」などがあり、一般的な住み替えなら満たしやすい要件です。住宅ローン減税とは同時に利用できないため、どちらを選ぶか事前に検討しておきましょう。

・所有期間10年超軽減税率の特例

現在の家を10年以上所有してから売却した場合、軽減税率の特例を利用できます。通常は譲渡所得に対して20.315%が課税されますが、特例を適用すると6,000万円までの部分について税率が14.21%に下がります。売却益が大きい場合に効果が大きく、節税効果を実感しやすい制度です。

軽減税率の特例は「3,000万円特別控除」と組み合わせて利用できるため、控除後に残った利益に軽減税率が適用されます。ただし、適用を受けるには翌年の確定申告で手続きを行う必要があります。

特例の要件は「売却物件が居住用であること」や「売却相手が親族でないこと」などがあるため、事前に確認しておきましょう。売却益が大きいケースでは、早めに税理士や不動産会社へ相談し、特例を適用できるか確認しておくと安心です。

・買換え特例

現在の家を売却して住み替える場合は、買換え特例を利用できます。売却益にかかる譲渡所得税の支払いを先送りできる制度で、今すぐ納税しなくても良い点が特徴です。

たとえば、売却によって利益が出た場合、新居を購入すればその時点で課税されず、購入した新居を売却する際にまとめて課税されます。買い替え特例によって税金が免除されるわけではなく、あくまで課税のタイミングを繰り延べる制度です。

特例を受けるには「売却する住宅を10年以上所有していること」や「売却金額が1億円以下であること」などの条件を満たす必要があります。また「3,000万円特別控除」とは併用できず、どちらかを選択しなくてはいけません。適用には翌年の確定申告が必要になるため、売却前に必ずどちらを選ぶかをシミュレーションしておくと安心です。

・譲渡損失の損益通算・繰越控除

購入時よりも安い価格で売れてしまうと、譲渡損失が発生します。損失は「損益通算」という制度を使えば、給与所得や事業所得など他の所得と相殺することが可能です。たとえば、会社員の場合は毎月の給与にかかる所得税や住民税を軽減できるため、赤字の売却であっても節税効果が得られます。

さらに、1年間で控除しきれない金額がある場合は「繰越控除」により最長3年間、翌年以降の所得から差し引けます。ただし、赤字であれば通常は確定申告の義務はありませんが、特例を利用するためには確定申告を行う必要があります。

売却しても住宅ローンが残るオーバーローンの場合でも、条件を満たせば損益通算の対象です。住み替えで発生した損失は、損益通算や繰越控除の適用を検討しましょう。

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8. まとめ|住み替えは費用のシミュレーションが大切

ライフスタイルの変化を理由に、より暮らしやすい家への住み替えを検討する方は多いです。

しかし、住み替えの意向があっても、資金の面を理由にためらう方は多いでしょう。売却と購入にかかる費用は数百万円規模になるため、正しく把握しないと資金が不足して計画を断念せざるを得ない可能性もあります。そのため、住宅ローン残債がある場合は事前にシミュレーションを行い、節税できるか確認することが重要です。年齢や年収に関わらず、準備をしっかり行えば理想の住まいへの住み替えは実現できます。

コスモスイニシアでは、現在の家の売却から新居の購入まで、住み替えに必要な手続きを一括してサポートが可能です。ライフスタイルに合った理想的な家への住み替えを実現し、快適に暮らせるようにお手伝いいたします。

※2025年9月時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。