相場はいくら? マンションの修繕積立金を確認しよう!

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マンションを購入する際、毎月の返済は住宅ローンだけではなく管理費や修繕積立金の支払いも必要であることはご存知だと思います。
月々の支払いで比較すると、管理費や修繕積立金は住宅ローンの返済額よりも少ない金額ですが、「相場はいくらくらいなんだろう?」「もう少し安くすることはできないのかな?」と考えている方もいるでしょう。
一見、安ければ安いほどいいと考えてしまいがちですが、将来的なメンテナンスに使われるためのお金なので、実際はそうでもありません。
また、購入してから数年後にいきなり値上がりする場合や、マンション共有部分の修繕のために高額な一時金がかかる場合もあるため、注意が必要です。

そこでこの記事では、マンションの管理費も解説しつつ修繕積立金とはどういうものか、またどんな特徴があるのか、相場を知るにはどうすればいいのかを説明していきます。

将来的に何にどれくらいのお金がかかるのかを理解して、マンションの購入を検討するようにしましょう。

 

目次

 まずは確認! 修繕積立金とは?|特別な管理に要する費用

 管理費とは?|日々の保守や点検に要する費用

 修繕積立金の相場

 要注意! マンション購入を考えたときのチェックポイント

 最後に|修繕積立金と管理費は、快適に過ごすために必要な費用!

 

まずは確認! 修繕積立金とは?|特別な管理に要する費用

修繕積立金は、建物の診断や修繕工事を行うために充てられる費用のことです。そのマンションを所有している人から毎月決まった金額を徴収し、将来的な大規模工事に備えて積み立てていこうというものです。金額は長期修繕計画に基づいて定められ、そのマンションに住んでいる戸数によっても変動します。
長期修繕計画とは、マンションの老化を防いで性能を維持するために、管理組合が作成する長期的な修繕計画のことです。

最近のマンションの耐用年数は、50年とも100年とも言われていますが、それだけ長期間住み続けるのであれば、マンションの外壁や屋根、エレベーターといった建物や機械設備などの修繕を定期的に行わなければなりません。

つまり修繕積立金とは、マンションのメンテナンスや工事をおこない、できるだけ長く住み続けるために必要不可欠な費用なのです。

管理費とは?|日々の保守や点検に要する費用

修繕積立金を理解する上で知っておきたいのが、この「管理費」です。

管理費とは、マンションの共用部分にある設備等の維持管理に充てる費用のことを言います。マンションの設備を点検する費用や、共用部分の清掃費用・水道光熱費、管理人の人件費などが管理費に含まれています。
マンションの住人が毎日快適に生活できるよう、共用部分を維持するために必要な費用をマンションの購入者でお金を出しあうものなのです。

修繕積立金と管理費は混合しがちです。修繕積立金は計画的な修繕に、管理費は日常的な管理に必要な金額であると覚えておくとよいでしょう。

なぜ必要? マンションの修繕積立金と管理費

修繕積立金や管理費は、マンションを住みやすい環境に整えるために必要な費用です。建物の維持に必要な費用なので、区分所有者が住んでいる期間に応じて負担することになっています。そのため、この2つの費用はマンションの購入価格に含まず、毎月の負担とされているのです。

修繕工事は、大規模で長い周期(12年や15年など)で行われるものが多く、その工事費用も非常に多額になります。そのため、大規模な修繕工事の度に、区分所有者がお金を出しあうのは非常に大きな負担になってしまいます。費用を全額集められずに修繕工事ができなくなる事態を避けるため、将来必要になるとみられる工事費用を計画的に積み立てるのが「修繕積立金」なのです。

修繕積立金の相場

修繕積立金にも相場があります。しかし、実際の修繕積立金が「適正な金額」かというとそうでもないようです。まずは、修繕積立金の適正額と相場についてみていきましょう。
マンションの修繕積立金を知る上では、平成23年に国土交通省が公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が参考になります。これは、国土交通省が作成した「長期修繕計画作成ガイドライン」に沿って作成された長期修繕計画があるマンションの84事例をまとめたデータです。

また、修繕積立金の相場については、国土交通省が公表した「平成25年度マンション総合調査結果」に目を通してみるとよいでしょう。これは、マンション管理に関して、今まで講じられてきた施策の検証、管理状況、マンション居住者の管理に対する意識などを調査したものです。

以上3つの資料を参照にし、修繕積立金の相場を算出していきます。

修繕積立金の適正額の目安

マンションの修繕積立金に関するガイドラインによると、修繕積立金の目安は次の計算式で求められます。

Y=AX+B
Y:修繕積立金額の目安
A:専有床面積あたりの修繕積立金額
X:専有床面積
B:機械式駐車場がある場合の加算額

Aの金額については、マンションのフロア数などで次のように分類した上で目安がわかります。

(金額は、「1㎡あたりの月額修繕積立金額」を示す)

修繕積立金の適正額の目安

B=機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費×台数×各住戸の負担割合
機械式駐車場がある場合には修繕工事のコストが大きくなるため、Bとして下の数値を加算します。
※収集サンプルが84しかなく、平均値が必ずしも目安と直結するわけではありません。そのため、「事例の3分の2があてはまる範囲」も参考にすべき数値として示されています。

※一般的に、負担割合は「専有部分の床面積割合」としている場合が多くなっています。

機械式駐車場の機種修繕工事費(1台あたりの月額)

修繕積立金の適正額の目安

この表だけで理解するは難しいので、具体的な目安の計算例を示しておきます。

(例1)
12階建て、建築延床面積9,000㎡のマンションで、専有面積100㎡の物件の場合
A=202円、X=100㎡となるので、
Y=202×100=20,200円(目安の平均値)
目安の幅としては、14,000円(140×100)~26,500円(265×100)となります。

(例2)
例1の物件に「2段(ビット1段)昇降式」の駐車場(50台)がある場合
B=7,085円×50×100/9,000=3,936円
これを例1の目安金額に加算します。
目安の幅:17,936円~30,436円

このガイドラインで計算した金額は、あくまで目安です。そのため、これだけ積み立てていれば予定通りに修繕ができるというわけではありません。
しかし、この目安となる水準よりも少ない金額しか積み立てていない物件が数多くあるため、修繕積立金は問題視されているのです。

築年数から見た修繕積立金の相場

修繕積立金の相場は、どんなマンションでも同じ金額が設定されている訳ではありません。

まず、築年数によって修繕積立金の相場がどのように変わるのかを見てみましょう。

築年数から見た修繕積立金の相場

平成25年度マンション総合調査結果より作成)

「築浅であればあるほど、修繕積立金は安くなる」と思いがちですが、「新しいマンションの方が、修繕積立金が安く済む」というわけではないことがよくわかるでしょう。
不動産会社が新築物件を売りやすくするために、修繕積立金や管理費を最初は安く設定しておき、数年後に値上げするという場合もあるのです。

修繕積立金は、住んでからずっと一定の金額でなければならないという決まりはありません。数年後に値上げすることも考慮に入れつつ、資金計画を立てる必要があるのです。

戸数から見た修繕積立金の相場

次に、戸数別で修繕積立金はどのような違いがあるのかを見てみましょう。

戸数から見た修繕積立金の相場

平成25年度マンション総合調査結果より作成)

多くのマンションで12,000円前後となっていますが、501戸以上の大規模マンションではかなり高くなっています。大規模マンションには設備が充実しているものが多いことから、月額に差が出ていると予想できます。

要注意! マンション購入を考えたときのチェックポイント

ここまで、修繕積立金の相場についてみてきました。しかし、修繕積立金を加味しつつマンション購入を考えるには「相場よりも安ければよい」と判断するのは正しくありません。

では、マンションの購入を考えた時に、修繕積立金や管理費に関してどのような点に注意するべきなのでしょうか?

修繕積立金・管理費は、中古より新築の方が安い!?

修繕積立金や管理費は、中古物件よりも新築物件の方が安くなる傾向にあります。とはいっても、「最近建てられたマンションの方が修繕積立金や管理費が安くなる」というわけではありません。

注意しておきたいのは、不動産会社が新築物件を売りやすくするために、修繕積立金や管理費を安く設定している場合があるということです。販売価格を下げれば売れ行きもよくなるはずですが、そうすると不動産会社の売上が減少してしまいます。
そこで、不動産会社の売上とは関係のない修繕積立金や管理費を下げて、お得感を出すようにするのです。
例えば、修繕積立金を5,000円下げたとしましょう。住宅ローン(金利1%・借入期間30年)に換算すると、約155万円の借り入れに値します。つまり「修繕積立金が5,000円高いマンションと比べると約155万円お安いのと同じ」であると聞けば、お得感が得られた気分になります。あるいは、その分を貯蓄に回せば1年間で6万円、10年間で60万円も貯まることにもなり、一見すると、販売価格が少し下がるよりもインパクトが大きいように感じられるのです。

また、修繕積立金だけが安い場合もあります。マンションの管理は、デベロッパーや販売する不動産会社の系列会社が担当していることも少なくありません。その場合は、管理費を下げることが間接的に売上を下げることになるため、修繕積立金額だけを安く設定するのです。

値上がりすることもある…!?

修繕積立金が安く設定されていれば、それだけ負担が減るのだからよいだろうと思うかもしれません。しかし、修繕積立金が少なく、将来の修繕工事費用が不足すると予想される場合には、値上がりする可能性も考えられます。
近年、修繕積立金の不足が問題になっています。その原因は、新築時の修繕積立金額が低すぎるということです。そこに工事価格の上昇もあり、積立が不足しているケースが増えているようです。

もしも修繕積立金が不足している場合には、2つの選択肢があります。ひとつが修繕積立金の値上げです。
もうひとつに、「修繕工事をしない」という選択肢があります。しかし、大規模な修繕工事をせずに応急措置だけで済ませていても問題を先延ばしにしているだけで、いずれは修繕工事が必要になるときが来るはずです。修繕積立金が値上げされるでしょう。しかも、建物の状態が悪いまま放置することになるので、物件を売却するときの価格も下がってしまう可能性が高いのです。

また、管理費が値上がりすることもあります。建物の老朽化に伴い、日常的なメンテナンスがよりたくさん必要になれば、現状の管理費では不足するかもしれないからです。

修繕積立金も管理費も、購入当初の金額設定でなければならない訳ではありません。値上がりする可能性もあるということを覚えておくとよいでしょう。

住宅ローンだけではなく、修繕積立金や管理費も含めて返済計画をたてよう!

マンションは、非常に高価な買い物です。それだけに、物件価格と住宅ローンの返済額ばかりに目が行きがちです。しかし、修繕積立金や管理費は毎月数万円程度とはいえ、長期的な目で見れば多額になります。例えば毎月2万円だとしても、30年では720万円にもなります。

それに、前述のように修繕積立金や管理費が安く設定されている場合には、将来の値上げも考えられます。目安とするべき金額よりもかなり安くなっているのであれば、将来の値上げを見越しておく必要もあるでしょう。可能であれば、目安とするべき金額と実際の費用の差額を、毎月貯蓄しておくことも考えておくとよいかもしれません。

最後に|修繕積立金と管理費は、快適に過ごすために必要な費用!

修繕積立金と管理費は、マンションを快適な状態で維持するための費用です。金額が低ければ、安さに応じたレベルのメンテナンスしかできません。購入直後にはわからないことですが、10年後、20年後に影響が出てくるかもしれないのです。
想定外の値上げや、マンションの老朽化による影響で、将来に出費がかさんでしまい、その時の生活に影響が出てしまわないよう注意しておきたいところです。

そのためにも、修繕積立金と管理費について理解し、購入を検討しているマンションの費用がどれくらいなのかをつかむようにしておきましょう。

2017/04/20時点での情報です。