家事動線を考える際の4つの基本を解説|スムーズな動線に隠された落とし穴も紹介

1日のうち数時間を占める家事の時間。出来る限り家事は効率よく行い、より多くの時間を家族団らんや趣味、睡眠などに充てたいですよね。
家の購入や、リフォーム・リノベーションを考えている方のなかには、家事をスムーズに行うことのできる間取りに住みたいと感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、どのような間取りがよいかは一概には言えません。なぜなら、近年はさまざまなライフスタイルが生まれ、家事の行い方も多様化しているからです。家事をスムーズに行うためには、自分や家族が「どのような生活をしたいのか」をもう一度見直し、家事動線のよい住まいを考えることが大切です。
この記事では、家事の行い方や家電の選択肢などを見直しながら、家事動線の考え方を解説していきます。自分のライフスタイルに合った住まいの家事動線を考えてみてください。
目次
1. 家事動線を考える際の4つの基本
家事を効率よく行うためには、家事動線を考えることが近道です。動線とは「建物のなかを人が自然に動くときに通る経路を線であらわしたもの」です。よって家事動線とは、家事を行うために、家のなかで人がどのような経路を辿っているかを示したものと言えます。下の図は、洗濯を行うときの工程を、家事動線とともに表しています。

洗濯を行う際の一連の動きは、以下のとおりです。
- 洗濯かごから洗濯機に衣類を入れる
- 洗剤を入れる
- スイッチを押す
- 洗い終わった洗濯物をバルコニーまで運ぶ
- 干す
- 取り入れる
- たたむ
- 洋服ダンスにしまう
この過程で、洗面室からバルコニーへ、そしてリビングで洗濯物をたたみ、各部屋へ持っていくという動線が生まれます。洗濯は、調理や洗い物などほかの家事に比べて移動距離が長く工程も多いので、重労働だということも、家事動線や工程を一つずつ分解するとわかってきます。
この家事動線や工程そのものをよりスムーズにできれば、家事がとてもラクになるでしょう。ここでは、家事動線を考える際の基本として、以下の4つを解説します。
- 生活パターンを考慮する
- 使用する家電を考慮する
- シンプルで短い動線を意識する
- 家事スペースのつながりを意識する
ぜひ読み進めてみてください。
・生活パターンを考慮する
効率のよい家事動線を考えるには、まずは自身の生活パターンを見つめ直すことから始めましょう。共働きか専業主婦かでも、家事のできる時間帯は異なってきます。例えば専業主婦の場合、天気が良ければ朝2回洗濯機を回して掃除をして、夕方は早いうちからご飯を作り、ついでに数日分のおかずまで一度に仕込む人もいるかもしれません。
この場合は、調理をしながら朝干した洗濯物をたたむ、洗い物をしながら次々に材料を用意しタッパーに詰めるなど、複数の家事を同時に行います。よって色々な場所を行き来しやすい動線がよいでしょう。また共働きならば、平日は料理をつくるだけで、休日にまとめて掃除と洗濯をする人もいるはずです。この場合は調理と掃除・洗濯は同時に行わないので、それぞれの動線が離れていても問題ないでしょう。立場や生活パターンの違いで、必要な家事動線も変わってきます。
・使用する家電を考慮する
どの家電を使用するかでも、家事時間や家事動線は変化します。例えば、乾燥機付き洗濯機を導入すると「洗濯物をバルコニーへ持って行って干す」という工程がなくなります。また、雨の日でも部屋干しの嫌な匂いを気にしなくて済むので、天候に左右されることもありません。シャツを洗ってアイロンにかけるか、それともクリーニングを利用するかでも、必要な工程が変わります。
では、洗濯以外の家事はどうでしょう。床を掃除する時も自分で掃除機をかけるかロボット掃除機を使用するかで、手間は異なってくるでしょう。調理後に自分で食器を洗うか、それとも食器洗い機を利用するかで、時間を短縮できるはずです。
共働きで家事をする時間があまり取れない場合は、最新の技術を備えた家電で家事をラクにすることも一つの選択肢といえるでしょう。重要なのは、負担なく家事を行えるかどうかです。
・シンプルで短い動線を意識する
具体的な家事動線について考えていきましょう。結論から述べると、家事動線はシンプルなものが一番です。シンプルな家事動線とは、無駄がなくすぐにアプローチできる動線のことをいいます。
例えば、キッチンから洗濯機のある洗面室まで行くとしましょう。リビングを横切ってドアを一つ開けて、さらに廊下を曲がってもう一つドアを開けてやっと到着、という間取りだったら毎日の移動が大変です。これが、たった2歩で洗面室まで行けて、ドアも1つ開けるだけの間取りに変われば、行き来がとてもラクになり、調理と洗濯を同時に行いやすくなります。家事だけではなく家づくり全体に言えることですが、必要な場所にすぐアプローチできる動線は、家族全員の生活をスムーズにするためにとても大切なのです。
・家事スペースのつながりを意識する
同時並行で色々な家事を行う方も多いのではないでしょうか。調理をしながら洗濯をして、メイクもして、子どもの世話という慌ただしい朝の時間をお過ごしの方もなかにはいるでしょう。同時並行で色々な家事を行う場合、それぞれの家事スペースをつなげると、作業効率がアップします。
例えば、洗濯と調理を同時に行うならば、洗面室からキッチン、バルコニーを一直線上にし、それぞれを引き戸などでつなぐことで行き来が楽になります。玄関とキッチンがつながっていれば、食材を大量に買い込んだときにすぐしまうことが可能です。調理や洗い物などで慌ただしい朝は、キッチンで集めた生ゴミの入ったゴミ袋をすぐに玄関まで運べると嬉しいですよね。同時に行う家事がある場合、家事スペースをつなぎ、行き来する動線を短くすることで家事効率をよくできます。
2. 家事時間の動向から見る動線の重要性
みなさんは、1日にどれぐらいの時間を家事に費やしていますか?毎日こまめにやっている、平日ほとんど時間が取れないので休日にまとめてやっているなど、ライフスタイルによってさまざまでしょう。下の図は、国立社会保障・人口問題研究所が5年おきに行っている「全国家庭動向調査」の結果から、「妻の平均家事時間の推移」を表したものです。

妻の平均家事時間は、2013年から2022年にかけて、平日で30分以上、休日で20分以上減少しているとわかります。近年、共働きの家庭が増加したことで家事の一部が夫との協業により妻の家事負担が減っていることや、便利な家電の普及、家事に焦点を当てた間取りが増えていることなども、家事時間を減少させている理由と考えられるでしょう。
次に、妻の従業上の地位が家事時間にどう関係しているのかを見てみます。下の図は「妻の従業上の地位別にみた平日における妻の家事時間の分布と平均」を、2022年に国立社会保障・人口問題研究所が調査した結果です。

平均家事時間が最も短いのは「正規」の186分、次に「非正規」と「自営」がほぼ同じで237分と246分、一番長いのが「仕事なし(大部分が専業主婦)」の344分でした。専業主婦か仕事をしているかで、家事時間に大きな差があることがわかります。一番家事時間が短い「正規」の主婦でも、平日は平均3時間を家事の時間に費やしており、家事は生活と切っても切り離せない時間だといえます。限られた時間のなかでスムーズに家事を行う必要があるので、効率よく動ける家事動線がいかに重要かがわかるでしょう。
3. スムーズな家事動線を考える際の落とし穴
家事をしやすくするためには、スムーズな家事動線を考えることが大切です。しかし、家事動線を考えすぎるあまり、以下のような点を見落とす人も多いです。
- 収納スペースが少なくなる
- 居室空間が狭くなる
それぞれ詳しく解説します。
・収納スペースが少なくなる
スムーズな家事動線を優先するあまり、収納スペースが少なくなる場合があります。例えば、キッチンと洗濯機が置いてある洗面室がつながっていると、行き来がしやすくなり家事効率は格段に上がるでしょう。
この家事動線を実現するために、なかには洗面室が廊下以外にキッチンからも入れる、つまり入口が2箇所ある間取りも存在します。入口が2箇所あるということは、その分壁が少なくなるということです。つまり、家具の配置に制限が生まれ、収納スペースを確保しづらくなることを意味しています。
収納スペースが減ると、手の届きにくいところに棚を設置して、無理やり収納することになるかもしれません。それぞれのスペースへの行き来がラクになっても、付随するほかの作業がスムーズにできなくなれば、結局は家事時間が長くなる可能性もあります。
収納についてはこちら:住まいの見栄えが変わる! 理想のマンション収納を考えよう!
・居室空間が狭くなる
回遊性のある家事動線は動きやすいため、アイランド型のキッチンを取り付ける例が多くあります。しかし、回遊性を生むには通路が必要です。つまり、通路を確保した分、居室空間が狭くなってしまう可能性があるのです。特に床面積に余裕がない場合は、想定よりも窮屈な生活になる可能性があるので注意が必要です。住まいの広さや家族の生活パターンから、本当に便利でスムーズな家事動線を考えるようにしましょう。
4. 【パターン別】家事動線の工夫を紹介
家事を効率よく行うための動線をイメージしてもらえるように、以下の実際の間取りを紹介します。
- 同時並行派|グルグル動線
- スピード派|短距離動線
- 楽チン収納派|直アクセス動線
それぞれ詳しく解説するので、自分や家族にあったものを考えていきましょう。
・同時並行派|グルグル動線
まずは、家事を同時並行で行う人向けの「グルグル動線」です。洗濯機の置いてある洗面室と、キッチンが隣り合わせでつながり、さらにキッチン周りにも回遊性が生まれます。必要な時にすぐに行き来でき、家事効率が上がる作りです。

一番左のタイプAは、バスルームから洗面室、キッチン、家事室、そしてバルコニーまでを直線でつなげられる間取りです。洗濯や調理をしながら、リビングで遊ぶ子どもの様子を見れます。特にバルコニー横の家事室では、取り込んだ洗濯物の仕分けからたたみ作業、アイロンがけまでを同時に行えるので便利です。
洗濯物は、リビングかその隣の和室まで運び、たたんだりアイロンをかけたりするのが一般的です。しかし、家事室を設けることで、ほかの人がリビングを使っているときでも邪魔になりません。あちこち部屋を移動する手間も省けるので効率よく動けます。また家事室に作業台を設けると、床の上で洗濯物をたたむ必要がなくなり衛生面でも安心です。
真ん中のタイプBは、キッチンと洗面室を結ぶフリールームがある間取りです。フリールームには、食品や食器、リネンなどさまざまなものが収納可能なので、洗面室の入口が2箇所あるのに収納スペースに困らないように工夫されています。「家事はスピーディーに行いたい!大きな収納スペースもほしい!」という方には、このような間取りがオススメです。
一番右のタイプCは、忙しい朝の身支度に役立つ間取りです。キッチンと洗面室をつなぐ動線とキッチン周りをグルグル回遊できる動線、さらに洋室への裏動線を確保しています。アイランドキッチンは、Cの図面のようにリビング空間の広さに余裕がある場合だと、とても便利に機能します。家族が自然に集まるコミュニケーションスペースになるでしょう。
・スピード派|短距離動線

この間取りの売りは、キッチンと洗濯機のある洗面室が近く、ほぼ直線で行き来できるところです。回遊性がある間取りにすることによって弱点となっていた収納も、入口を1つにし、壁側に3箇所とれています。よく、リビングダイニングキッチンがドアを挟んで廊下につながっており、その廊下を通って洗面室やトイレに行く間取りが見受けられますが、それでは移動に時間がかかります。キッチンから2歩で洗面室にたどり着ける距離は、スピーディーに家事を行いたい人にはうってつけです。
またキッチンの左側にある収納には、パントリーとして食材を入れてもよいですが、掃除機やホコリ取りのような掃除用具を入れておくと、このスペースを中心にさまざまな家事を行うことができるのです。最もシンプルに家事を行える間取りだといえるでしょう。
・楽チン収納派|直アクセス動線

この間取りの特徴は、リビングダイニングキッチンと洋室の両方からアプローチできる、ファミリークローゼットが設置されている点です。
通常、クローゼットといえば、それぞれの洋室からアプローチするつくりが多いと思います。しかし、この間取りではリビングダイニングキッチンからもアプローチできることにより、朝の忙しい時間に最短経路で身支度が可能です。
季節の変わり目などは肌寒い日と暖かい日が交互に訪れるので、羽織ものの選択に悩む人も多いでしょう。しかし直アクセス動線であれば、もう少し厚手のコートの方がよかった、マフラーがあればよかった、という場合にすぐ取り出せるため非常に助かります。また洗濯物をしまう際も、それぞれの部屋に入っていく必要がないので効率がよくなります。
このファミリークローゼットが設置された間取りのように、家族がそれぞれ「使いそうなもの」を置いておき、すぐに取り出せる場所があると、とても便利なのです。
5. まとめ
家事を効率化するためには、自分のライフスタイルに合った家事動線や家電の選び方が関係しています。自分に合った家事動線を考えるには、まず自分がどのように家事を行いたいのかを明確にする必要があるでしょう。
コスモスイニシアでは、毎日の暮らしに欠かすことのできない家事を、ストレスなく楽しみながらできるよう、2008年に「ハピカジ」という形で実現しました。その後もさまざまな研究の成果を、物件ごとの商品として展開しております。

新しく家の購入を考えている、またリフォーム・リノベーションを考えているという場合は、ぜひこの記事で紹介した間取りを参考にし、自分にぴったりの住居を探してみてください。
2025/09/10時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。




