媒介契約って何?どれが一番いいの?不動産売却の際に知りたい契約方法とは

不動産の売却をする際には不動産の仲介会社と「媒介契約」の締結が必要です。媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があり、それぞれ不動産の売却に関する条件が異なります。媒介契約の種類によっては物件の売却に時間がかかったり、売値が下がったりする場合があるため、事前に把握することが大切です。

今回の記事では、不動産の売却時に重要となる媒介契約について以下の内容を解説します。

  • 媒介契約の概要
  • 3種類の媒介契約の比較
  • 不動産の購入時に結ぶ契約

後悔のない不動産売却を行うヒントを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1. 媒介契約とは、不動産売却を依頼する際の取り決め

物件を売却する場合、個人では自分で買い手を探すことが難しいため、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。仲介を受けた不動産会社は「宅地建物取引業法」にもとづいて、依頼者の不利にならない売買契約を締結することが義務付けられています。

そのため、物件の売却を依頼された際は「どのような条件で売買活動を行うか」「成約した際の報酬金額をどのようにするか」などの内容を定めた契約を結ぶことが必要です。この取り決めを「媒介契約」と言います。

媒介契約を締結することによって、依頼者と不動産会社間の利害関係を明確化させ、仲介業務に関するトラブルを未然に防ぎます。媒介契約書の詳しい内容については、国土交通省の定める「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」を参考にしましょう。

2. 3種類の媒介契約とそれぞれの特徴

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不動産売却における媒介契約は、以下の3種類に大別できます。

  • 一般媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約

それぞれの媒介契約の違いは、以下の5点です。

  1. 同時に複数の不動産会社と媒介契約を締結することができるか
  2. 自分で見つけてきた買主と売買契約を結ぶことができるか
  3. 契約期間は何ヶ月か
  4. 指定流通機構(レインズ)への登録義務はあるのか
  5. 販売状況報告の義務はあるのか

以下の表では、3種類の媒介契約の違いをまとめています。

専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
複数の不動産会社との契約について
× ×
契約は一社のみ 契約は一社のみ 同時に複数社と契約可能
自分で買い手を見つけた場合
×
不動産会社の仲介が必要 不動産会社の仲介なしで販売可能 不動産会社の仲介なしで販売可能
契約期間
最長3ヶ月
最長3ヶ月
規定なし
行政指導に従って3ヶ月が一般的
不動産流通機構(レインズ)登録義務
×
契約から5日以内に登録 契約から7日以内に登録 登録義務はない
販売状況報告の頻度 7日に1回以上 14日に1回以上 規定なし

表から読み取れるように「一般媒介契約→専任媒介契約→専属専任媒介契約」の順に制限が厳しくなります。ここでは、それぞれの媒介契約の詳しい内容やメリット、デメリットについて解説します。媒介契約の種類によって物件が売れる早さや売値の高さが異なるため、希望の条件に応じて適切な内容を選びましょう。

なお、以降の媒介契約の説明は、国土交通省の「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」を前提としています。媒介契約の中には標準媒介契約約款に基づかない場合があるため、以下の解説と一致しないケースがあります。

・専属専任媒介契約

専属専任媒介契約とは、1社の不動産会社のみに物件の売却を依頼できる取り決めです。専属専任媒介契約を結んだ場合、他の不動産会社への売却依頼はできません。また、親族や知人と直接交渉をするなど、買主を自分で見つけてきた場合であっても、不動産会社を媒介して取引を行うことが契約で義務付けられています。

専属専任媒介契約には有効期間が定められており、3ヶ月を超えての締結はできません。また、媒介契約を締結した翌日から5日以内に「指定流通機構(レインズ)」に登録する必要があります。指定流通機構(レインズ)についての詳細は後述します。

また依頼を受けた不動産会社は、売主に対して7日に1回以上の割合で販売状況の報告義務が課せられています。報告の方法は規定されておらず、口頭や書面、メールなど各種連絡手段で通達されます。

専属専任媒介契約のメリット

専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社は積極的に売却活動を行うと期待できます。毎週販売状況の報告がされるため、売り手は現状を把握しやすいことがメリットです。

また不動産会社にとっては、必ず自社を通じて売買契約が行われるため、仲介手数料を確保できるという利点があります。3種類の中で最も制限が厳しく定められている媒介契約ですが、物件を早く売りたい方は締結する価値があるでしょう。

専属専任媒介契約のデメリット

専属専任媒介契約の有効期限である3ヶ月の間、物件の売却を依頼できるのは不動産会社1社のみに限定されます。不動産会社の対応に不満があったとしても、依頼先は変えられないため注意が必要です。

また、不動産会社による「囲い込み」を受ける場合があり、不利な条件での売却を迫られるリスクがあります。

指定流通機構(レインズ)への登録義務がある

指定流通機構とは、レインズ(Real Estate Information Network System=REINS)と呼ばれ、宅地建物取引業法に基づいて国土交通大臣が指定した不動産流通機構です。現在全国に4法人(東日本、中部圏、近畿圏、西日本)が設立されており、不動産流通の活性化を図るためそれぞれの地域の物件情報の交換業務などを請け負っています。

専属専任媒介契約や専任媒介契約を締結した場合、依頼した不動産会社の売却活動に全てを委ねることになります。しかし、担当者が一人で購入希望者を探し出すことは難しいのが現状です。そのため指定流通機構では、オンラインの物件情報システムを利用してより広く購入希望者を探すよう義務づけています。

出典:国土交通省 不動産流通について

指定流通機構(レインズ)のサイト上では、所在、規模、形質、売買すべき価格などの物件に対する情報が掲載され、一般公開はされていません。指定流通機構による情報交換を通じて、最適な買主を見つけ、毎年10万件以上の売買が成立しています。

専属専任媒介契約における注意点

専属専任媒介契約を結んだ際、不動産会社は「売却を任された物件の情報を一般に公開しない」「他社からの物件照会に応じない」などの対応を取るケースがあります。この状態は「囲い込み」と呼ばれ、不動産会社が自社の利益を最大化するために実施される問題行為です。

売買契約が成立すると、物件の売り手と買い手は不動産会社に仲介手数料を支払います。不動産会社にとって最も利益が出るのは、売り手と買い手の両方から仲介手数料を得られる「両手取引」が行われたときです。両手取引によって2倍の仲介手数料を得るために囲い込みを行い、自社の顧客から購入希望者が出るまでの時間を稼ごうとします。

一部の不動産会社による囲い込みは、以前から問題視されています。しかし第三者が実際に囲い込みを立証することは難しいうえ、原因となる両手取引の禁止ができないため防ぎづらいのが現状です。「囲い込みをされているのでは」と不安になったときは、指定流通機構(レインズ)で物件の登録内容や取引状況を確認すると良いでしょう。

平成28年1月4日より物件の売り手にはID・パスワードが交付され、登録内容や取引状況を直接確認できる機能を追加しています。取引状況の項目には「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類で状態が表されています。

・専任媒介契約

専任媒介契約は、専属専任媒介契約と同じく1社のみに物件の売却を依頼できる取り決めを指します。他の不動産会社と併せて仲介を依頼することができず、有効期限は3ヶ月である点も専属専任媒介契約と同様です。

専属専任媒介契約とは異なる専任媒介契約の特徴は、以下の3つが挙げられます。

  • 自分で購入希望者を見つけた場合は不動産会社の仲介なしで売買契約を結べる
  • 指定産流通機構(レインズ)への登録は媒介契約を締結した翌日から7日以内
  • 依頼者への販売状況の報告義務は14日に1回以上

専任媒介契約では各種制限が緩和されており、売り手と不動産会社の双方にメリットがあります。

専任媒介契約のメリット

専任媒介契約は専属専任媒介契約と同じく1社にのみ依頼をするため、不動産会社の売却活動の活発化が期待できることがメリットです。また、定期的に販売状況の報告を受けられるうえ、自分で購入希望者を見つけた場合の売買契約の締結が認められています。

専任媒介契約のデメリット

専任媒介契約では、専属専任媒介契約に比べて不動産会社への制限が緩和されています。指定産流通機構(レインズ)への登録期間が長く設定されているため、買い手に紹介されるまで時間がかかる場合があることには注意が必要です。

また、販売状況の通達義務は14日に1回以上となり、専属専任媒介契約に比べて報告頻度は低くなります。自分で購入希望者を探さないのであれば、専任媒介契約より専属専任媒介契約を締結する方が手厚いサポートを受けられるでしょう。

・一般媒介契約

一般媒介契約は、専属専任媒介契約・専任媒介契約とは異なり、複数の不動産会社に仲介を依頼できます。また、依頼者は自分で購入希望者を見つけた場合に不動産会社の仲介なしで売買が可能であり、比較的自由な売却活動が可能です。

指定流通機構(レインズ)への登録は任意であり、販売状況の報告は義務づけられていません。契約期間は当事者同士で自由に決められますが、国土交通省の定める「標準媒介契約約款」では3ヶ月以内が一般的です。

一般媒介契約には「明示型」と「非明示型」の2種類があり、依頼者はどちらかを選択可能です。どちらを選択しても、売却が成約した際は、どの不動産会社によって契約が結ばれたのかを速やかに通知する必要があります。明示型と非明示型の特徴は後述しますので、一般媒介契約の締結を考えている方はぜひ参考にしてください。

一般媒介契約のメリット

一般媒介契約では、複数の不動産会社と契約を結べることが最大のメリットです。複数社と契約している場合、不動産会社は他社より先に成約しなければ仲介手数料を得られません。

1社しか契約できない専属専任媒介契約・専任媒介契約とは異なり、不動産会社同士の競争が活発になるため、早く買い手が見つかりやすいでしょう。

一般媒介契約のデメリット

需要が少ない物件の場合、不動産会社による競争が起こりづらいため、一般媒介契約の恩恵を受けにくいでしょう。不動産会社は「人気エリアにある」「相場よりも値段が安い」などの需要がある物件に対して時間や労力をかけて売却活動を行う傾向にあり、競争は活発化します。

好条件の物件ではない場合は、不動産会社同士の競争は活発になりづらく、売却までに時間がかかるケースが多いです。

一般媒介契約の明示型・非明示型

一般媒介契約には「明示型」と「非明示型」の2種類の方式があります。明示型では、売り手は不動産会社へ仲介を依頼する際に、他社との契約の有無を告知する必要があります。

複数社で媒介契約を締結している場合は、依頼先の不動産会社の名称などを明示します。なお、標準媒介契約約款では、明示型の一般媒介契約が提示されています。

非明示型では、複数社と媒介契約を結んでいる旨を知らせる必要がありません。非明示型を選択する場合は、明示型の根拠となる約款部分を不適用とし、明示する義務を負わないとする特約事項の記載が追加されます。

3. 不動産を購入する時に締結する媒介契約の概要

不動産を売却する際だけではなく、購入する(探している)時にも媒介契約を締結します。売却の際は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類から選んで不動産会社へ依頼します。物件を購入する場合は「希望する条件」「希望の程度」などを不動産会社に対して書面で伝えるための条件として媒介契約を締結するのです。

(国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」より)

購入希望者にとって「1社しか依頼ができない」という条件は不利なため、一般媒介契約を結ぶケースが大半です。不動産会社の媒介によって売買が成約される場合は、以下の4つの条件を満たすことが必要となります。

  1. 宅地建物取引業の免許を所有している不動産会社である
  2. 不動産会社と依頼者(売主と買主の双方)との間に媒介契約が成立している
  3. その不動産会社が媒介業務を行った
  4. その不動産会社の媒介業務によって売買契約が成立した

4つの条件を満たし、売買契約が締結されたときに初めて仲介手数料の支払いが求められます。

本来であれば、買い主が物件の紹介を希望した時点で媒介契約の締結が可能です。しかし、店舗に物件を探しに来た方や電話での問い合わせに対して「媒介契約を締結しましょう」と提案するのは現実的ではありません。実際は、重要事項を説明するタイミングか、売買契約の締結と同時に媒介契約を交わします。

4. まとめ|状況に応じて納得できる媒介契約を結ぼう

物件を売却する際には、不動産会社と媒介契約を結ぶことが必要です。媒介契約には3種類あり、依頼できる不動産会社の数やサポートの手厚さが異なります。媒介契約の種類は、物件が売れる早さや売値の高さなどに影響するため、それぞれの特徴を踏まえて選びましょう。

物件の売却において最終的に重要となるのは、不動産会社と依頼者との信頼関係です。自分の意向を明確にしたうえで複数の不動産会社を比較し、納得のできる依頼先と媒介契約を結ぶようにしましょう。

「不動産を売る予定はないけれど、どのくらいの値段になるのか気になる」という方は、不動産売却の際に情報を入力するだけの簡易査定をおすすめします。

売却査定のときに担当者へ相談し、一番納得できる媒介契約を提示した会社に依頼すると良いでしょう。自分の所有する物件の売却活動を進めていくにあたって、最適な媒介契約の種類を知りたい場合は、不動産会社の担当者への相談をおすすめします。

※2025年3月時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。