あなたならどうする? 隣人・近隣トラブルの事例と正しい対処法
今回の記事では、マンションで発生しやすい隣人・近隣トラブルについて以下の内容を解説します。
- 代表的な隣人・近隣トラブル
- 問題が発生した際の対処法
- トラブルを避けるための対策
隣人・近隣トラブルが発生しづらいマンションの見極め方を紹介していますので、ぜひ物件選びの参考にしてください。
目次
1. マンションで発生しやすい隣人・近隣トラブル7選
マンションの隣人・近隣トラブルにおける代表的な例は、以下のとおりです。
- 生活音、騒音
- ペットの飼育方法
- タバコのマナー
- ゴミの出し方、分別方法
- 玄関前や廊下などの共用部分の使い方
- 車や駐車場でのマナー
- すれ違った時の挨拶
それぞれのパターンについて事前に理解し、隣人・近隣トラブルを回避しましょう。
・生活音、騒音
マンションの構造によっては隣人・近隣の生活音が気になりやすく、トラブルに発展する場合があります。トラブルにつながる生活音の例は、以下のとおりです。
- ドアを閉める音
- トイレの水を流す音
- 携帯電話のバイブレーションが鳴る音
- 子どもの走る音
- 赤ちゃんの泣き声
また、以下のような騒音は大きな問題に発展しやすいため特に注意しましょう。
- 大音量での音楽の再生
- 楽器の演奏
- 必要以上に大きな声での会話
- 怒鳴り声での喧嘩
生活音や騒音は、原因を作っている方が認識している以上に大きく響いている場合が多く、解決の難しいトラブルの1つです。
詳しくはこちら:【原因別】もう悩まない! マンションでの騒音・防音対策を徹底解説
・ペットの飼育方法
ペット可のマンションでは、飼育方法やマナーの悪さが隣人・近隣トラブルに発展しやすいため注意が必要です。苦情の原因となるのは「ペットの鳴き声」「ニオイ」「糞尿の始末」などさまざまなケースが考えられます。
一般的にペット可のマンションでは、居住者の快適な生活を守るためにマンションの管理規約にて「ペット飼育規約」を定めています。規約を守らない飼い主がいると、多くの近隣住民は不満を抱えるでしょう。また、ペットを飼う方と飼わない方の間で飼育方法への認識の差があることは、隣人・近隣トラブルに発展する一因です。
お住まいのマンションの管理規約・使用細則などを確認して、規約の中でペットとの楽しい生活を送るようにしましょう。
・タバコのマナー
昨今、マンションの共用部おける喫煙は禁止とされているケースが増えています。まずは、お住まいのマンションの管理規約・使用細則に記載されている喫煙に関しての項目を確認しましょう。
加えて、ベランダ・バルコニーなども専有部ではなく共用部にあたるため、マンションの管理規約・使用細則の規約を守りながら喫煙をするようにしましょう。
また、喫煙マナーはタバコを吸う方と吸わない方で認識の差が大きく、隣人・近隣トラブルに発展しやすい問題です。ベランダで喫煙する際、タバコの煙が上階や隣の室内に入ると、苦情につながる場合があります。
またタバコを吸う人のマナー自体が悪く、ポイ捨てや共用部分での喫煙がトラブルの原因になるケースが考えられます。
・ゴミの出し方、分別方法
ゴミの出し方や分別方法はお住いの市区によって異なります。まずはお住まいの地域のルールを確認するようにしましょう。昨今は24時間ゴミ出しOKとなっているマンションが増えてきていますが、地域のルールとゴミ出しマナーは守りつつ、マンションにお住まいの方がお互い気持ち良く暮らせるように心がけましょう。
別の地域や自治体からマンションへ引っ越して来た方が、ゴミの出し方や分別のルールを守らず隣人・近隣トラブルに発展する場合があります。基本的には、ゴミの出し方や分別方法を居住者が理解できれば解決が可能です。
しかし、ルールを知っていても「ゴミ出しの時間を守らない」「ゴミ袋の口をきちんと閉めない」のような居住者がいる場合は、問題を解決しづらいでしょう。また、ゴミの中には各世帯のプライバシーに関する品が含まれています。ゴミを通じたプライバシーの侵害が原因となり、隣人・近隣トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
・玄関前や廊下などの共用部分の使い方
マンションの玄関や廊下などの共用部分の使い方は、隣人・近隣トラブルに発展しやすい事柄の1つです。共用部分の使い方に関する苦情としては、以下のような例が挙げられます。
- 放火の危険があるダンボールや新聞紙などの可燃物を、廊下に放置したままの居住者がいる
- 駐輪場があるにもかかわらず、廊下や玄関前などの共用スペースに自転車を停めている居住者がいる
それぞれのマンションには規則があるものの、共用部分を巡るトラブルの原因となる居住者はルールを守らない場合が多いでしょう。
・車や駐車場でのマナー
車や駐車場を利用する際のマナーに不満が募り、隣人・近隣トラブルに発展するケースがあります。「早朝や夜間にエンジンの音がうるさい」「隣の居住者の知人が勝手に自分の駐車スペースに車を停めていた」など、苦情の内容はさまざまです。
車のエンジンの音量に対する評価は、人によって異なります。今まで問題にならなかった音量であっても、新しい居住者は不快に感じる場合があり、トラブルに発展する可能性があります。
・すれ違った時の挨拶
マンションの敷地内ですれ違った時に挨拶をするかの問題は、予想以上に多い隣人・近隣トラブルです。例えば、関西地方のあるマンションでは、2016年に敷地内の居住者への挨拶禁止がルール化されました。
挨拶禁止がルール化された発端は、管理組合の総会で小学生の親御様から「知らない人に挨拶されたら逃げるよう教えている。マンションで挨拶するのはやめて欲しい。」という要望が挙がったことです。また、年配の居住者からは「挨拶の返事がなく気分が悪かった。」という意見が挙がり、挨拶禁止のルール化に至りました。
このニュースに対しては賛成・反対の両方の意見が多く挙がっており、マンションでの挨拶における問題の重要性を物語っています。
2. マンションにおける隣人・近隣トラブル発生時の2つの対処方法
隣人・近隣トラブルに直面した際、どのように対処すれば良いか不安に感じる方は多いでしょう。トラブルの基本的な対処方法としては、以下の2つが挙げられます。
- 管理会社や自治会などに相談する
- 警察や弁護士などに相談する
予期せぬ隣人・近隣トラブルに備えるため、事前に対処方法を理解しましょう。
・管理会社や自治会などに相談する
隣人・近隣トラブルが発生した際は、管理会社や自治会などに相談してみましょう。
管理会社への問い合わせ
隣人・近隣トラブルが発生した際は、管理会社が対応することが一般的です。ただし、管理会社が対応できる範囲には限度があります。
騒音を出す居住者に注意通達を送ったり、電話で連絡をしたりすることは可能であっても、実際に話し合いの場を設けることはできない場合があります。管理会社の対応範囲については、問い合わせの際に確認するのがおすすめです。
また、管理会社によっては契約の時に「居住者の間のトラブルには一切介入しない」という文面を交わしているケースがあるため、規約も合わせて確認しましょう。
自治会への問い合わせ
隣人・近隣トラブルが発生した際に、住んでいる自治体の市役所や区役所に相談する方法があります。各自治体には、日常生活に関する相談を受け付けている「生活課(※)」という窓口があり、隣人・近隣トラブルについての問い合わせを受け付けています。
ただし、自治体が対応できる問題の範囲は限られている点に注意が必要です。基本的に、自治体はトラブルの原因となっている相手と直接交渉をしたり、問題解決のための手続きを代行したりするような対応はできません。
なぜなら自治体は、あくまで「相談に対する助言をする」というスタンスをとっているからです。自治体への相談は、トラブル時の対応について客観的・法的な視点からアドバイスを求める対処方法のため、必要に応じて活用しましょう。
(※)名称は自治体によって異なる場合があります。
管理組合の理事会への問い合わせ
隣人・近隣トラブルへ本格的に対応するには、管理組合の理事会に対応を依頼する方法が有効です。理事会とは、管理組合の業務を遂行する機関を指します。トラブル時の相談先としては、理事会のほかに自治会も考えられるでしょう。
ただし、中にはこれらの組織がトラブルの原因になっているケースがあります。適切に機能している組織ならば相談する価値はありますが、場合によっては状況が悪化するリスクがあるため注意が必要です。
・警察や弁護士に相談する
管理会社や自治体の対応では状況が改善しない場合は、警察や弁護士に相談すれば法的な措置を取れる可能性があります。警察や弁護士への相談は、隣人・近隣トラブルが起きた際に「相手に威嚇された」「暴力を振るわれるような怖い思いをした」などのケースに有効です。
警察への問い合わせ
警察に相談する場合、まずは「警察相談専用電話#9110」に電話をかけてみましょう。基本的に、警察は事件性がなければ対応できません。一方で、警察相談専用電話では「ストーカー」「悪質商法」「隣人・近隣トラブル」など、犯罪や事故には至っていない悩み事の相談を受け付けています。
電話に限らず、警察署の相談窓口へ直接出向いて相談することも可能です。その場合は、都道府県警察本部の「警察総合相談室」か、各都道府県の警察署にある「警察総合相談窓口」に相談しましょう。
電話と対面どちらの場合も、対応するのは専門の「警察安全相談員」(警察官、元警察官など)です。警察安全相談員に事件性があると判断されれば、捜査担当部門に引き継いで検挙や補導などの法的措置が取られます。
事件性がないと判断された場合は、トラブルの原因となっている相手への具体的な対応方法など、法律上または事実上の手段に関するアドバイスや指導を受けられます。状況によっては、他の行政機関を紹介されたり、未然に事件を防ぐために警察が指導・警告・説得などを行ったりするケースがあり、トラブルの解決につながりやすいでしょう。
(参考:警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ)
弁護士への問い合わせ
刑法に基づいて対応する警察に対し、民法に抵触する隣人・近隣トラブルに対応できるのが弁護士です。例えば、騒音が原因のトラブルの場合、民法709条に基づく「受忍限度」を超えていれば、法律上の「不法行為」として裁判所へ訴えられます。訴えが認められると、裁判所からの騒音行為の差し止めや損害賠償の請求が行われるのです。
ただし、受忍限度の判断を含め、弁護士に依頼をすれば費用がかかります。相談の段階で「法律相談料」がかかり、依頼をすれば「着手金」「接見・面接費用」「報酬金」などが必要です。
加えて、交通費や法的手続きにかかる費用が別途実費で請求されます。場合によっては、自分が引っ越した方が低コストになる可能性があるため、弁護士と相談のうえ冷静に判断するようにしましょう。
3. マンションの隣人・近隣トラブルを避けるための3つの対策
ここでは、マンションの隣人・近隣トラブルを避けるための3つの対策を解説します。
- 住まいを購入する前に確認を行う
- 引っ越し前に挨拶をする
- トラブルの原因を作らないよう注意する
隣人・近隣トラブルを未然に防ぎ、安心して暮らせるように対策しましょう。
・住まいを購入する前に確認を行う
隣人・近隣トラブルを避けるために効果的な対策の1つは、実際に転居する前の確認です。マンションの管理会社に対し、トラブル発生時の対応が可能かを確認しましょう。
加えて、以下3つのポイントを確認するのがおすすめです。
自分と既存の居住者のライフスタイルにズレはないか
マンションを購入する前に、周囲にどのような方が住んでいるかを確認しましょう。近隣住民の家族構成やライフスタイルは、特に重要なチェックポイントです。
例えば朝早く出て夜遅く帰る単身者世帯と、夜は家族で過ごすファミリー世帯では、生活音が気になる時間帯は異なります。マンションの既存の居住者に子どもがいる家庭が多ければ、泣き声や足音への許容範囲は広いと予想できます。
ただし小さな子どもがいる場合、泣き声や足音などは騒音トラブルに発展しやすため注意が必要です。特に上下左右の居住者とはトラブルに発展しやすいため、家族構成やライフスタイルの違いの有無を入念にチェックしましょう。
共用部分は適切に利用されているか
ゴミ捨て場や駐輪場など、共用部分の使い方にはマンション全体のモラルが表れます。「ゴミが散乱していないか」「乱雑な駐輪がされていないか」などのポイントを確認しましょう。
現時点で隣人・近隣トラブルはないか
購入を検討しているマンションにおいて、現時点での隣人・近隣トラブルの有無を確認してみましょう。トラブルの有無をチェックする際は、広い視野で情報を集めることが大切です。不動産会社だけでなく管理会社や管理組合、可能であれば居住者にも確認すると良いでしょう。
・引っ越し前に挨拶をする
近隣住民への引っ越しの挨拶は、可能であれば作業が始まる直前か、少なくとも翌日までには行いましょう。挨拶をせずに引っ越し作業で大きな音を立てれば、両隣や上下階(斜め上や斜め下を含む)の居住者は不快な思いをする可能性があります。
引っ越しの物音がきっかけで「常識のない人が来た」と思われれば、何かの拍子にトラブルへ発展しかねません。引っ越しの挨拶が翌日になってしまった場合は「昨日はご迷惑をおかけしてすみません」などの一言が大切です。
マンションのコミュニティが強固なほど、既存の居住者は「新参者」に対して過敏に反応する傾向にあります。警戒心を解くには、まず「得体の知れない人物ではありません」というポーズをとることが大切です。そのポーズを示すための手軽な方法が、引っ越しの際の挨拶なのです。
引っ越しの際の挨拶を「古い習慣」と否定せず、できるだけ時間を見つけて実践しましょう。
・トラブルの原因を作らないよう注意する
隣人・近隣トラブルを避けるためには、自分自身が問題の原因とならないことが大切です。特に、他の居住者と行動範囲が重なる場所や生活時間のずれは、トラブルにつながりやすいため注意しましょう。
「エントランス」「郵便受け」「エレベーター」「駐輪場」「ゴミ捨て場」など、共用部分での行動には十分な注意が必要です。また、他の居住者が眠っている時間帯に自分が活動する場合には、静かな行動を心がけましょう。
マンションにおける隣人・近隣トラブルのほとんどは、上下左右の部屋で起こります。そのため、全居住者の目に怯えながら生活する必要はありません。自分自身が可能な範囲で、他の居住者との適切な距離感を保ちましょう。
4. まとめ|マンションの隣人・近隣トラブルを避け、安心して生活しよう
マンションには多くの世帯が住んでおり、価値観やライフスタイルは家庭によってさまざまです。生活音やゴミ出しの方法など、近隣住民の暮らし方が気に掛かることは多いでしょう。
近隣住民の様子に対して不満が溜まると、トラブルに発展する場合があります。まずはマンションのルールである、管理規約・使用細則を確認しましょう。
また、隣人・近隣トラブルを避けるためには、マンションを購入する前に揉め事の有無を確認しましょう。良好な人間関係を築けるよう、引っ越し前には挨拶をすることが大切です。
隣人・近隣トラブルが発生した際、対処するときは当事者以外の第三者の力を借りながら穏便に解決できるよう心がけましょう。
※2025年3月時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。