相場はいくら? マンションの修繕積立金を確認しよう!

マンションを購入する場合、毎月の返済は住宅ローンだけではなく、修繕積立金や管理費の支払いも必要です。管理費や修繕積立金は長期的に見ると大きな金額となり、マンション購入後に各種費用が値上がりするケースがあるため、事前にしっかりと理解しておきましょう。
今回の記事では、マンションの修繕積立金や管理費について以下の内容を解説します。
- 修繕積立金の概要
- 管理費の概要
- 各種費用が必要な理由
- 修繕積立金・管理費の相場
- 住宅ローン返済における注意点
マンションの築年数や戸数ごとの費用相場についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 修繕積立金とは「マンションの特別な管理にかかる費用」

修繕積立金は、建物の診断や改修工事を行うために充てられる費用です。マンションを所有する方から毎月決まった金額を徴収し、将来的な大規模工事に備えて積み立てます。金額は「長期修繕計画」に基づいて定められ、マンションの築年数や戸数によって変動します。
長期修繕計画とは、マンションの老朽化を防いで性能を維持するために、管理組合が作成する改修プランです。近年、建築されたマンションの耐用年数は、約50〜100年とも言われています。
マンションに長期間住み続けるためには「外壁」「屋根」「エレベーター」などの設備や建物自体の修繕を定期的に行うことが重要です。適切なメンテナンスや工事を行い、できるだけ長く住み続けるために、修繕積立金は必要な費用です。
2. 管理費とは「マンションの日々の保守・点検にかかる費用」

管理費は、マンションの共用部分にある設備等の維持管理に充てられる費用です。「マンションの設備の点検費」「共用部分の清掃費用・水道光熱費」「管理人の人件費」などは管理費に含まれています。
共用部分の維持に必要な費用をまかなうために、マンションの購入者がお金を出し合うことになっています。修繕積立金は計画的な改修工事にかかる費用を指す一方で、管理費は日常的なメンテナンスに必要なお金です。
3. マンションの修繕積立金と管理費が必要な理由

修繕積立金や管理費は、マンションを住みやすい環境に整えるために必要なコストです。加えて、資産性の観点においては、定期的なメンテナンスが重要です。外壁が整っており、エントランスや廊下などが清潔な状態を保っているマンションは築年数を感じさせにくく、リセールバリューを高めることにつながります。
また、これらの費用は建物の維持に必要な費用のため、区分所有者が住んでいる期間に応じて負担することになっています。そのため、2つの費用はマンションの購入価格に含まれず、毎月の負担とされているのです。
特に、修繕工事は大規模かつ長い周期(12年や15年など)で行われる場合が多く、その工事費用は高額です。大規模な修繕工事の度に区分所有者がお金を出し合うことにすると、非常に大きな負担となります。
費用を全額集められずに修繕工事ができなくなる事態を避けるため、将来的にかかるメンテナンス費は計画的に積み立てる必要があります。
4. マンションにおける修繕積立金の相場

ここでは、マンションの修繕積立金における適正額や相場について解説します。マンションの修繕積立金を知るにあたり、令和6年に国土交通省が公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を参考にできます。これは、国土交通省が作成した「長期修繕計画作成ガイドライン」に沿って作成された長期修繕計画があるマンションの84事例をまとめたデータです。
また、修繕積立金の相場については、国土交通省が公表した「令和6年度マンション総合調査結果」を参考にしましょう。これは、マンション管理に関して今まで講じられてきた施策の検証、管理状況、居住者の管理に対する意識などを調査した資料です。
以上3つの資料を参照し、修繕積立金の相場を算出します。
・適正額の目安
マンションの修繕積立金に関するガイドラインより、修繕積立金の目安は次の計算式で求められます。
Y=AX+B
Y:修繕積立金額の目安
A:専有床面積あたりの修繕積立金額
X:専有床面積
B:機械式駐車場がある場合の加算額
Aの金額の目安は、マンションのフロア数や床面積などによって以下のように分類されます。
階数・建築延床面積ごとの修繕積立金(1㎡あたりの月額)
| 階数・建築延床面積 | 平均値 | 事例の3分の2が あてはまる範囲 |
|
|
15階未満
|
5,000㎡未満 | 218円 | 165〜250円 |
| 5,000〜10,000㎡ | 202円 | 140〜265円 | |
| 10,000㎡超 | 178円 | 135〜220円 | |
| 20階以上 | 206円 | 170〜245円 | |
※平成25年時点の数字を元に算出しています。
Bの金額は、以下の計算式で算出が可能です。
B=機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費×台数×各住戸の負担割合
機械式駐車場がある場合は、修繕工事のコストが大きくなるため、Bとして以下の数値を加算します。
機械式駐車場の機種修繕工事費(1台あたりの月額)
| 機械式駐車場の機種 | 修繕工事費 (1台あたりの月額) |
| 2段(ビット1段)昇降式 | 7,085円 |
| 3段(ビット2段)昇降式 | 6,040円 |
| 3段(ビット1段)昇降横行式 | 8,540円 |
| 4段(ビット2段)昇降横行式 | 14,165円 |
※収集サンプルが84しかなく、平均値が必ずしも目安と直結するわけではありません。そのため「事例の3分の2があてはまる範囲」も参考にすべき数値として示されています。
※一般的に、負担割合は「専有部分の床面積割合」とされています。
※平成25年時点の数字を元に算出しています。
・目安額の計算例
適正額の計算方法をもとに、具体的な目安額の算出例を以下のように示します。
(例1)
12階建て、建築延床面積9,000㎡のマンションで、専有面積100㎡の物件の場合
A=202円、X=100㎡となるので、
Y=202×100=20,200円(目安の平均値)
目安の幅は、14,000(140×100)~26,500円(265×100)です。
(例2)
例1の物件に「2段(ビット1段)昇降式」の駐車場(50台)がある場合
B=7,085円×50×100/9,000=3,936円
これを例1の金額に加算すると、目安の幅は17,936~30,436円です。
ガイドラインにもとづいて計算した金額は、あくまで目安です。そのため、同等の金額を積み立てても、予定通りに修繕ができるわけではありません。しかし、目安となる水準より少ない金額しか積み立てていないマンションは多く、修繕積立金の不足が問題視されています。
・築年数から見た相場
修繕積立金の相場は、マンションの築年数や戸数などの条件によって異なります。築年数ごとの修繕積立金の相場は、以下の表のとおりです。
| 完成年次 | 築年数換算 | 平均修繕積立金 (月額) |
| 〜平成元年 | 24年以上 | 12,226円 |
| 〜平成6年 | 19〜23年 | 11,618円 |
| 〜平成11年 | 14〜18年 | 12,402円 |
| 〜平成16年 | 9〜13年 | 10,359円 |
| 〜平成21年 | 4〜8年 | 11,031円 |
| 平成22年以降 | 3年以内 | 10,319円 |
(平成25年度マンション総合調査結果より作成)
「築浅であるほど修繕積立金は安くなる」と考える方は多いでしょう。しかし実際には、修繕費と築年数に相関はありません。
また、不動産会社は新築物件を売りやすくするために、各種費用を操作するケースがあります。最初は修繕積立金や管理費が安く設定されていても、数年後に値上げする場合があるため注意が必要です。
修繕積立金は、住み始めた際に設定された費用から変動することがあります。数年後に値上げするケースを考慮に入れつつ、資金計画を立てることが大切です。
・戸数から見た相場
戸数ごとの修繕積立金の相場は、以下の表のとおりです。
| 総戸数 (マンションの規模) |
平均修繕積立金 (月額) |
| 31〜50戸 | 11,203円 |
| 51〜75戸 | 11,587円 |
| 76〜100戸 | 12,273円 |
| 101〜150戸 | 12,221円 |
| 151〜200戸 | 12,192円 |
| 201〜300戸 | 11,675円 |
| 301〜500戸 | 12,018円 |
| 501戸〜 | 16,509円 |
(平成25年度マンション総合調査結果より作成)
多くの物件では12,000円前後ですが、501戸以上の大規模マンションでは大幅に高くなっています。大規模なマンションは設備が充実している物件が多いことから、月額に差が出ると予想できます。
5. マンションの修繕積立金・管理費における3つの注意点

購入するマンションを決める際、修繕積立金や管理費の相場との比較のみで判断するのは危険です。各種費用はマンションによって異なるだけでなく、住み始めてから変動する場合があり、十分に理解しないと返済計画が破綻するリスクがあります。
ここでは、マンションの修繕積立金や管理費における注意点を紹介します。
・中古より新築の方が各種費用は安い場合がある
修繕積立金や管理費は、中古物件よりも新築の方が安くなる傾向にあります。これは中古物件の場合、管理費・修繕積立金の徴収額に見直しが入ることが多いためです。
ただし、一概に「最近建てられたマンションの方が修繕積立金や管理費が安くなる」とは言えません。不動産会社は新築物件を売りやすくするために、修繕積立金や管理費を安く設定するケースがあるため注意が必要です。
販売価格を下げれば売れ行きが良くなりますが、不動産会社の売上は減少します。そこで、不動産会社の売上とは関係のない修繕積立金や管理費を下げ、お得感を出すのです。
例えば、修繕積立金を5,000円下げた場合を想定します。住宅ローン(金利1%・借入期間30年)に換算すると、約155万円の借り入れに相当します。「修繕積立金が5,000円高いマンションと比べると約155万円安いのと同じ」と聞けば、お得であるように感じるでしょう。
また管理費は一定であり、修繕積立金だけが安く設定されている場合があります。マンションの管理は、デベロッパーや販売する不動産会社の系列会社が担当しているケースがあります。その場合は、管理費を下げると間接的に売上が落ちるため、修繕積立金額だけが安く設定されているのです。
・各種費用は値上がりすることがある
修繕積立金の安さが原因で工事費用が不足すると予想される場合は、将来的に各種費用が値上がりする可能性があるため注意が必要です。近年では、修繕積立金の不足が問題視されています。新築時に設定された修繕積立金額の低さに加え、工事費用が値上がりしていることが原因です。
修繕積立金が不足している場合の主な対処法は、以下の2つです。
- 修繕工事をしない
- 修繕積立金を値上げする
修繕工事をせず応急措置だけで済ませていても、いずれは本格的なメンテナンスが必要になるタイミングが訪れます。また、建物の状態が悪いまま放置されていると、物件を売却するときの価格は下がる可能性が高くなります。そのため、修繕積立金を値上げして工事を実施するケースがほとんどです。
修繕積立金だけでなく、管理費も値上がりすることがあります。建物の老朽化に伴い日常的なメンテナンスを頻繁に行うことになれば、現状の管理費では不足する可能性があるためです。マンションを購入する際は、修繕積立金や管理費は購入当初の設定金額から値上がりする場合があることを考慮しましょう。
・住宅ローンは各種費用を含めて返済計画を立てる
マンションは非常に高価な買い物であり、物件価格と住宅ローンの返済額には注目しやすいでしょう。修繕積立金や管理費は、月々の住宅ローン返済額に比べると安いものの、長期的に考えると大きな出費です。
例えば、修繕積立金や管理費が毎月2万円とすると、30年では720万円です。住宅ローンの返済計画を立てる際は、修繕積立金や管理費も考慮しましょう。
また、修繕積立金や管理費が安く設定されている場合には、将来的に値上げする可能性があるため注意が必要です。各種費用が目安額より大幅に安く設定されていれば、将来の値上げを見越して返済計画を立てる必要があります。可能であれば、目安額と実際の費用の差額を毎月貯蓄しておくと良いでしょう。
6. まとめ|マンションを選ぶ際は修繕積立金と管理費を考慮しよう

修繕積立金と管理費は、マンションを快適な状態で維持するために欠かせない費用です。それぞれの費用が目安額よりも安く設定されているマンションでは、適切なメンテナンスが行われず物件の価値が下がるリスクがあるため注意しましょう。
また、目安額に比べて修繕積立金と管理費が大幅に低い場合や、長期間住んでマンションの老朽化が進めば、将来的に値上げされるケースがあります。物件価格に比べると修繕積立金や管理費は低いものの、長期的に考えると高額な出費になるため、各種費用を考慮して住宅ローンの返済計画を立てましょう。
※2025年3月時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。





