住宅ローンの頭金の賢い決め方とは?目安とシミュレーション、額を決めるポイントを解説

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一般的に、マイホームを購入する際は頭金の支払いが必要です。頭金の額は明確には決められておらず、どれくらい用意すればよいか悩む方は多いでしょう。

頭金が少ないと住宅ローンの負担は大きくなり、多すぎると急な出費への対応が難しくなります。適切な額の頭金を用意するには、事前の資金計画が欠かせません。この記事では、住宅を購入する際の頭金について以下の内容を解説します。

  • 住宅購入時にかかる費用
  • 頭金の目安
  • 頭金を用意するメリット・デメリット頭金の額と利息負担のシミュレーション
  • 頭金の額を決めるポイント

ご自身の状況に合った頭金の決め方がわかり、無理のない購入計画を立てられるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。

1. 頭金とは「住宅購入時に自己資金で支払う費用」

マイホーム購入時の頭金とは、物件を契約する際に「住宅ローンを利用せず自己資金で支払う費用」です。物件価格の一部として充当され、借入額を減らす役割があります。一般的には物件価格の2割程度が目安とされますが、年収や貯蓄額、ライフプランによって適正額は人それぞれです。

一方で、近年は低金利を背景に、頭金を入れずにフルローンで購入するケースが非常に多いです。頭金を多く入れるほど毎月の返済額や総返済額を抑えられ、ローン審査にも有利になりますが生活防衛資金が減るためバランスが重要です。

2. 住宅の購入時には「物件価格」と「初期費用」が必要

マイホームを購入する際は、大きく分けて「物件価格」と「初期費用」の2種類の支出が発生します。物件価格は土地や建物そのものの代金で、頭金と住宅ローンを組み合わせて支払うのが一般的です。

一方、初期費用は契約や登記、ローンの手続きなどにかかる諸費用を指し、具体的な内訳は、以下のとおりです。

  • 手付金
  • 仲介手数料
  • 借入手数料
  • 印紙税
  • 不動産取得税
  • 登記費用
  • 固定資産税
  • 引っ越し費用

頭金と初期費用は別々に用意する必要があり、現金で支払うケースが多いです。手数料の多くは物件価格に比例し、新築では物件価格の約3〜7%、中古住宅では約6〜13%が目安です。

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3. 住宅の購入における頭金の目安額と実情

住宅購入時の頭金は、物件価格の2割程度が目安とされています。しかし実際には、物件の種類や購入者の状況によって頭金の割合は様々です。数百~数千万円単位の頭金を用意するケースもあれば、金利水準が下がっている状況を受けて頭金ゼロのフルローンで購入する人も増えています。

頭金は「物件価格の2割」という目安にとらわれず、自分の年収や貯蓄額、ライフプランに合わせて無理のない資金計画を立てることが大切です。

4. 頭金を入れる3つのメリット

住宅購入の頭金を用意すると、借入額や利息の負担が軽減されるだけでなく、金利や審査の面でも有利になることがあります。ここでは、頭金を多く入れることで期待できる3つのメリットを見ていきましょう。

・住宅ローンの借入額を減らせる

頭金を入れる最大の効果は、住宅ローンの借入額を直接抑えられる点にあります。借入額が少なくなれば毎月の返済額と総返済額共に抑えられ、利息の負担を軽くできます。例えば、5,000万円の物件を固定金利1.87%、35年ローンで購入する場合のシミュレーションは、以下の表のとおりです。

借入額 毎月返済額 総返済額 支払額の差
頭金1,000万円あり 4,000万円 約129,800円 約5,454万円
頭金なし 5,000万円 約162,300円 約6,817万円 約1,363万円多い

毎月の返済額の差が3万円以上になるため、長期的な家計の安定を考えると借入金額を減らす効果は非常に大きいと言えます。

・優遇金利を受けられる可能性がある

金融機関によっては、頭金を多く入れることで優遇金利が適用されることがあります。例えば、物件価格の80%以下の融資であれば、金利を引き下げてもらえるケースが多いです。金利がわずか0.1%下がるだけでも、35年間の総返済額は数十万円以上変わる可能性があるため、頭金を多めに用意する価値は十分にあると言えるでしょう。

・ローン審査が通りやすくなる

頭金を多く入れることで借入額は減り、返済負担率が下がります。返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合のことで、25~35%以内を目安としている金融機関が多いです。

借入額が少ないと返済負担率も低くなり、金融機関からの評価は高まるため審査通過の可能性が上がります。年収や勤続年数が審査基準に達していない場合でも、頭金を多めに準備することで、ローン審査に通りやすくなるでしょう。

5. 頭金を入れることで生じる3つのデメリット

頭金を増やすことで返済の負担が軽くなりますが、注意すべき点もあります。手元資金の減少や購入時期の遅れ、税金面での優遇が受けにくくなる場合もあるため、メリットとデメリットを総合的に判断することが大切です。ここでは、主な3つのデメリットについて解説します。

・手元資金が減るため生活防衛力が落ちる

頭金を多く入れると借入額や利息の負担を減らせますが、その分現金資産が大きく目減りします。購入直後は引っ越し費用や家具・家電の買い替えなど、予想外の支出が発生することが多いです。

十分な生活費や緊急時の備えを残さずに頭金を優先してしまうと、病気や失業といった不測の事態に耐えられず、家計の安定が保てなくなる恐れがあります。そのためローン返済だけでなく、予備費も含めた家計シミュレーションを行うことが重要です。

・用意に時間がかかり購入時期が遅れる

多くの頭金を用意することにこだわると、購入までの期間が長引くことで、地価や建築資材の価格高騰や住宅ローン金利の上昇といったリスクがあります。頭金を優先するあまり市場の変動に乗り遅れてしまうケースがあるため、資金の準備期間と市場動向のバランスを意識することが重要です。

・住宅ローン控除による節税効果が小さくなる

住宅ローン控除は、年末時点のローン残高に応じて所得税や住民税が減額される制度です。頭金を多く入れると借入額が減るため、控除対象となるローン残高は小さくなり減税額が少なくなります。特に低金利の場合は、控除の節税効果を活用しながら手元資金を残す戦略も検討すると良いでしょう。

6. 住宅購入時の頭金と利息負担のシミュレーション

住宅ローンの返済額や利息負担は、頭金の額によって大きく異なります。2025年8月現在、フラット35(返済期間32~35年)の最も多い金利は、融資率9割以下は年1.87%、9割超は年1.98%です。例えば、5,000万円の物件を購入した場合の頭金割合別の試算は以下のとおりです。

頭金額(金利) 借入金額 毎月の返済額 総返済額 支払額の差

(頭金1,000万円と比較)

1,000万円(1.87%) 4,000万円 約129,900円 約5,454万円
500万円(1.87%) 4,500万円 約146,000円 約6,135万円 約681万円多い
0円(1.98%) 5,000万円 約165,000円 約6,935万円 約1,481万円多い

(出典元:住宅金融支援機構ホームページ)

シミュレーションでは、頭金を2割用意した場合と頭金なしの場合を比較すると、総返済額の差は約1,481万円にのぼります。頭金を増やすほど利息負担が下がる点を考慮し、無理なく準備できる額を計画することが大切です。

頭金を入れれば利息負担は軽くなりますが、実際の返済計画を立てるうえでは「返済負担率」にも注意が必要です。返済負担率とは、年収に対して住宅ローンの年間返済額が占める割合を示す指標です。住宅ローンの審査において重要な基準の1つで、以下の計算式で求められます。

返済負担率(%)= 住宅ローンの年間返済額 ÷ 年収 × 100

一般的に返済負担率は年収の25~35%以内が望ましいとされていますが、フルローンの場合は毎月の返済額と総返済額が増加するため、この割合が高くなります。返済負担率が上がると、家計に占める住宅ローンの比重が大きくなり、教育費や老後資金の積み立てに影響が出る恐れがあるため注意が必要です。

7. 頭金の額を決める3つのポイント

頭金の額は単純に多ければ良いというものではなく、家計やライフプランとのバランスを踏まえて考えることが重要です。ここでは、頭金を決める際に押さえておきたい3つのポイントを解説します。

・物件価格の20%を目安に家計やライフプランで増減する

住宅ローンの頭金は、一般的には物件価格の20%程度が目安です。頭金を2割程度入れることで、金融機関の審査が通りやすくなり借入額が抑えられるため、毎月の返済や総返済額の負担を軽くできます。

ただし家計や老後資金・教育費などの準備状況、ライフプラン全体を考慮して、無理なく用意できる範囲で頭金を設定することが大切です。現在の貯蓄や収入と毎月の返済額を照らし合わせながら判断すると、現実的な資金計画が立てやすくなります。

・想定外の出費にも対応できる現金を残しておく

頭金を入れすぎると手元の現金が不足し、急な医療費や家電の買い替えなどの予期せぬ支出に対応できなくなる恐れがあります。購入後の生活資金や数年以内に必要な資金は確保しておきましょう。頭金を抑えて現金を多く残すことが、家計の安定につながるケースもあります。

万が一収入が途絶えた場合でも、生活を維持できるだけの「生活防衛資金」として、生活費の半年~1年分を確保しておくと安心です。その際、子どもの将来の教育費などは住宅購入資金とは分けて管理しておくことが望ましいです。

・毎月の返済可能額から逆算する

住宅ローンを無理なく返済していくために、自分の家計から毎月支払える返済額を明確にしておきましょう。現在支払っている家賃や生活費、将来の支出計画を元に負担が重くなりすぎない金額を算出します。頭金がなくても住宅ローンは組めるものの、無理な借り入れは家計を圧迫する恐れがあります。

年収に対する年間返済額の割合を示す「返済負担率」は、金融機関の審査基準であると同時に、無理のない返済計画を立てる目安です。一般的には25~30%以内が望ましいとされていますが、住宅ローンのシミュレーションツールなどを活用し、家計にゆとりのある返済額を設定すると良いでしょう。

8. まとめ|住宅を購入する際は資金計画を立てて頭金を支払おう

マイホームを購入する場合、月々の住宅ローンの支払いや総返済額は、頭金の額によって大きく左右されます。一般的に、頭金は物件価格の2割が目安とされていますが、近年は長引く低金利の影響で頭金なしで購入するケースが増えています。

頭金を多く入れれば借入額を減らして返済負担を軽くできる一方で、フルローンを選べば手元資金を残して柔軟に活用できます。現在の貯蓄や将来的なライフイベントを考慮し、自身に合った資金計画を立てることが大切です。

返済額の試算はこちら:住宅ローンシミュレーション|コスモスイニシア 

※2025年9月時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。