離婚するならマンションは売却?住み続ける?【夫が住宅ローンを払っている場合】

離婚することが決まった際は、マンションの財産分与について夫婦で話し合う必要があります。夫が住宅ローンを支払っている場合であっても、妻子はマンションに住み続けられますが、あらゆるリスクが伴うため注意が必要です。
住宅ローンの返済や退去を迫られる可能性を考慮し、必要に応じて売却を検討しましょう。今回の記事では、離婚後のマンションの扱い方について以下の内容を解説します。
- 財産分与におけるマンションの位置付け
- 離婚後も以前のマンションに住み続けるリスク
- マンションに関する離婚後のトラブルを避ける方法
- 住宅ローンが残っているマンションを売却する方法
- 離婚時に住宅ローンが残っている場合の注意点
離婚後のトラブルを避け、安心して暮らすためのヒントを紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. マンションは離婚時の財産分与でトラブルになりやすい資産

離婚する際には、夫婦の所有物を公平に分ける「財産分与」を行います。しかし、マンションなどの不動産は、物理的に分けられない財産です。そのため、離婚時の財産分与において、マンションはもっともトラブルに発展しやすい資産と言われています。
なお、名義や住宅ローンの返済者に関わらず、マンションは財産分与の対象です。夫名義で購入したマンションであっても、婚姻中に築いた資産であれば、夫婦共有の財産とみなされます(民法 第762条「夫婦間における財産の帰属」など)。また、妻が専業主婦であり、夫が住宅ローンを支払っている場合であっても、離婚時には財産の半分を請求できる権利が認められています。
2. 離婚後も以前のマンションに住み続ける3つのリスク

離婚した後であっても、これまで住んでいたマンションは売却せずに妻子が住み続けるケースがあります。特に子どものいる家庭では、同じマンションに住み続ける方が安心して暮らしやすいでしょう。親の離婚によって引っ越しや転校をすることなく、離婚後も同じマンションに住み続ければ、大きく環境を変えずに過ごせるため安心です。
ただし、同じマンションに住み続ける場合は、さまざまなリスクが伴います。ここでは、離婚後も同じマンションに住み続ける際に想定されるリスクを3つ解説します。
・売却できない場合がある
将来的にマンションを手放すことになっても、売却できない場合があるため注意が必要です。例えば、再婚が決まり、新居へ引っ越すために既存のマンションを売却するケースが考えられます。
しかし、離婚後に住み続けていたマンションが夫や夫婦の共有名義であった場合、妻の独断では売却できません。共有名義のマンションであっても、売却するためには夫の承諾が必要です。離婚後に夫と音信不通になった場合は、売却できない状況に陥る可能性があります。
離婚後もマンションに住み続ける際は、妻の単独名義に変更しましょう。ただし、住宅ローンを借り入れて購入したマンションでは、名義変更には金融機関の承諾が必要な場合が一般的です。
夫婦の共有名義で住宅ローンを借り入れた場合、2人の収入の合計額を考慮して審査を通過しています。単独名義に変更する際は、収入が基準を満たさず、住宅ローンの審査が通らない可能性があるため注意しましょう。その場合は、住宅ローンの借り換えが必要ですが、単独で融資を受けられるだけの収入が必要です。
・住宅ローン返済の肩代わりが必要なケースがある
夫が住宅ローンの契約者であり、妻は連帯保証人となっているケースには注意が必要です。夫が住宅ローンを滞納した場合は、連帯保証人である妻に支払い義務が課せられます。
離婚後に住宅ローンの連帯保証人から外れるためには、新たに別の方を引受人とする必要があります。しかし、別の連帯保証人を見つけるのは難しいでしょう。住宅ローンの肩代わりを避けるには「妻を連帯保証人から外し、新たな保証人を立てること」を離婚条件のひとつとして提示することをおすすめします。
・差し押さえにより退去を迫られる可能性がある
共有名義で住宅ローンを組んだ場合、夫婦の双方に返済義務があります。離婚後に妻子のみでマンションに住んでいても、夫は引き続き住宅ローンの返済が必要です。
しかし、家を出た夫は住宅ローンの返済意欲が低下しやすく、中には滞納するケースがあります。住宅ローンを滞納した場合、金融機関が一括返済を迫る可能性があるため注意が必要です。
住宅ローンを返済できなければ、マンションを差し押さえられ、強制退去となる場合があります。夫名義のマンションに妻子が住み続ける際も、同様のリスクが伴うため注意しましょう。
3. 離婚後のトラブルを避けるにはマンションの売却がおすすめ

離婚後もマンションに住み続ける場合は、別れた相手と関わり続ける必要があるだけでなく、さまざまなリスクが伴います。離婚後のトラブルを避けるには、マンションを売却して現金化するのがおすすめです。ここでは、離婚する際のマンションの売却方法や注意点を解説します。
・手放す方法は「買取り」または「仲介」
離婚後にマンションを売却する方法として「買取り」と「仲介」の2種類が挙げられます。買取りとは、不動産会社が買主となりマンションを売り渡す方法を指します。仲介とは、不動産会社が売主と買主をつなぎ、取引を成立させる方法です。
マンションの買取りでは、時期に関わらず好きなタイミングで売却が可能です。仲介の場合は、購入希望者が現れるまで売却できないため、現金化するまでに時間がかかる可能性があります。
また、マンションの買取りを依頼した場合、不動産会社は物件に利益を乗せて販売する必要があります。そのため、マンションの買取りでは、仲介に比べて売却価格が安くなるのが一般的です。買取りによるマンションの売却価格は、仲介の7〜8割程度と言われています。
離婚の際にマンションを早急に売却して現金化したい方は、買取りを依頼しましょう。時間がかかってもできるだけ高く売却し、財産分与の取り分を増やしたい方には、仲介をおすすめします。
・住宅ローンの返済中は売れない場合があることに注意
離婚後にマンションを売却するにあたって、住宅ローンの返済中は売れないケースがあるため注意が必要です。マンションを売却する際は、抵当権を抹消することが原則とされています。抵当権を抹消するためには、借り入れている住宅ローンの完済が必要です。
貯金で住宅ローンを完済できなければ、マンションを売却した資金で返済する必要があります。住宅ローンの完済が難しいと考えられる場合は、買取りや仲介による売却は難しい場合があります。
4. 住宅ローンが残っていても離婚後にマンションを売却できる2つのケース

ここでは、住宅ローンが残っている場合であっても、マンションを売却できる2つのケースを紹介します。離婚後にマンションの売却を考えているものの、住宅ローンの残債に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
・アンダーローンの場合|売って得られた資金での返済計画を立てる
「アンダーローン」とは、住宅ローンの残債が物件の価格よりも低い状態です。例えば、住宅ローンの残債が1,500万円であり、マンションの査定価格が2,000万円の場合、アンダーローンに該当します。
アンダーローンの場合は、マンションの売却で得た資金で住宅ローンを完済できるため、買取りや仲介を依頼できます。また、住宅ローンの完済後は、残高から売却時に発生した諸費用を差し引き、残りを夫婦で折半するケースが多いです。
・オーバーローンの場合|貯金や住み替えローンで充当する
「オーバーローン」とは、住宅ローンの残債が物件の価格を上回る状態です。例えば、住宅ローンの残債が1,500万円で、マンションの査定価格が1,000万円の場合、売却しても500万円の借り入れが残ります。
特に、マンションは購入後に急激に価格が下がるため、入居直後に離婚する場合は多額のオーバーローンになる傾向があります。なお、夫が住宅ローンを払っていても、残債は夫婦で負うことが原則です。
オーバーローンにおける不足額は、夫婦で支払い方法を話し合う必要があります。オーバーローンにおける不足額を、貯金や住み替えローンなどで充当できる場合は、買取りや仲介での売却が可能です。
5. 離婚後にマンションの住宅ローンを完済できない場合は「任意売却」を検討

オーバーローンの場合、不足額を充当できなければマンションの売却は難しいです。住宅ローンを完済できない場合は、夫婦のどちらかが住み続けるか、任意売却による処分を検討しましょう。
・金融機関の合意を得られれば売却が可能
任意売却とは、オーバーローンが原因で借り入れの返済ができない場合に、金融機関の合意を得て物件を売買することです。一般的に、住宅ローンを返済できなければ、金融機関は担保の物件を差し押さえ、競売にかけて債権を回収します。しかし、競売はオークション形式のため価格は安くなる傾向にあり、債権者にとってデメリットが生じる売却方法です。
一方で、任意売却では、市場価格に近い額での売却を目指せます。住宅ローンの名義人や債権者にとって、売却時の回収額を増やせることがメリットです。
・適用できないケースに注意
以下のようなケースでは、任意売却ができないため注意しましょう。
- 物件が内覧に適した状態ではない
- 所有者・連帯保証人の承諾が得られないか、本人確認ができない
- 債権者が認めない
売主が内覧に非協力的な場合や、清掃が不十分な物件では、任意売却は困難です。また、共有名義のマンションや、夫が名義人で妻が連帯保証人であり、一方が任意売却に納得していない場合は利用できません。
その他に、債権者である金融機関が認めない場合は、任意売却は不可です。金融機関にとって任意売却は「損切り」であるため、社内方針で応じないように定められているケースがあります。また、マンションの購入直後の離婚など、住宅ローンを借り入れて日が浅いときは、金融機関の評価が低く任意売却に応じない場合があります。
6. まとめ|離婚後は住宅ローンの残債に注意してマンションを売却しよう

離婚後にマンションに住み続けるにあたって、住宅ローンが残っている場合は、トラブルに発展するケースがあるため注意が必要です。金銭的なリスクや別れた相手とのトラブルを避けるためには、マンションを売却することをおすすめします。
マンションを早急に現金化したい場合は買取りを、できるだけ高く売却したい方は仲介を依頼しましょう。マンションの住宅ローンが残っていると売却できないケースがあるため、完済までの資金計画を立てることが大切です。
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※2025年8月時点での情報です。
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