築30年超えの中古マンション、本当に大丈夫? 購入前のチェックポイントと注意点を解説

マンションの購入や住み替えを検討しており、低コストが魅力である築30年超えの物件を視野に入れている方は多いのではないでしょうか。日本の中古マンションのうち、築30年を超える物件は増え続けており、同様に購入を検討している方の数も増加傾向にあります。
しかし、マンションの耐震性や老朽化などに不安があり、購入を悩む方は多いのが現状です。今回の記事では、築30年超えの中古マンションについて以下の内容を解説します。
- 中古マンションの人気の傾向
- 築30年超えの中古マンションの魅力
- 古い物件を購入する際のチェックポイント
築30年以上の中古マンション購入に不安を抱えている方や、マイホームの購入を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. 築30年超えの中古マンションの需要が高まっている2つの理由

近年では、築30年超えの中古マンションは増加傾向にあります。ここでは、築年数が長い中古マンションの戸数や需要が伸びている現状について解説します。
・マンションの戸数の変遷
国土交通省の資料によると、2024年末時点でのマンションの総戸数は約713.1万戸とされています。このうち、旧耐震基準のマンションは約103万戸でした。
(参照:国土交通省「分譲マンションストック数の推移」)
・不動産市場では中古マンションが人気
築30年以上のマンションの増加に伴い、中古物件の人気が高まっています。以下の図は、REINSが2024年に発表した中古マンションの成約件数と新規登録件数の変遷です。


(引用:REINS「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」)
中古マンションの成約件数と新規登録物件ともに、ここ近年高い水準で推移しています。今後の中古物件数の増加に伴い、人々の関心はさらに高まっていくと予想できます。
2. 築30年超えの中古マンションにおける5つの魅力

築30年超えの中古マンションは新築とはさまざまな面で異なるため、購入する際は不安に感じるでしょう。しかし同時に、築30年以上の物件だからこそのメリットは多くあります。ここでは、築30年超えの中古マンションにおける4つの魅力を解説します。
・新築物件より比較的安価で購入しやすい
築30年を超える中古マンションの最大のメリットは、価格の安さです。以下の図では、中古マンションの築年帯別平均価格を示しています。

(引用:REINS「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」)
築10年以内と築20年超の物件価格を比べると、半値ほどに下がっています。実際の物件価格は立地や間取りによって異なりますが、同条件であれば築30年以上の中古マンションはほぼ底値での購入が可能です。
「安さ」がメリットになるのは、購入時だけではありません。新築マンションを購入すると、10年ほど経って売却する場合の物件価格は、大幅に下がる可能性があります。一方で、底値まで下がった中古マンションを購入すれば、年月を経ても値崩れしにくく大きな損失を出さずに済みます。買う時も売る時も最小限のコストで済むのが、築30年超えの中古マンションの大きな魅力です。
・立地条件のよいマンションが多い
築30年超えの中古マンションであれば、立地条件に恵まれた物件が多いことがメリットです。「立地に恵まれた物件」とは、すでに発展している地域に建つマンションを指し、具体的には以下のような利点が挙げられます。
- 交通の利便性が高い(駅から近いなど)
- 生活の利便性が高い(学校やスーパーが近いなど)
- 環境がよい(自然が多い、街並みが整っているなど)
基本的に、マンションは好条件の立地から順に建設され、地域の発展に伴って次々と物件が増えます。そのため、地域が成熟した頃の好立地には築年数の長い物件が多くを占めるのです。
また、立地条件のよい地域に建つ中古マンションであれば、今後大きく値崩れする可能性は低いでしょう。
・管理状況を確認しやすい
新築マンションの場合、当初の建物はきれいですが、今後の管理が丁寧に行われるかは分かりません。一方で、築30年超えの中古マンションならば、建物自体を見ることでこれまでの管理状況を確認できます。
隅々まで掃除が行き届いており、適切な修繕が行われていれば、大切に扱われてきたと分かるでしょう。また、丁寧に扱われているマンションは、管理会社や管理組合がしっかり機能していることを示しています。
反対に、メンテナンスの記録が残っていなかったり、修繕積立金が徴収されていなかったりするマンションは、管理会社などが機能していない可能性があるため注意が必要です。
・リノベーションで理想の間取り・内装を実現できる
マンションの購入を検討する際、理想どおりの間取りや内装の物件が見つからずに悩む方は多いでしょう。新築物件を購入し、さらにリノベーションをする場合、必要な費用はかなり高額です。
築30年超えの中古マンションであれば、購入価格を比較的安く抑えられます。最初からリノベーションすることを前提に予算を設定しておけば、新築物件より低コストで理想の間取りや内装を実現できるでしょう。また、金融機関によってはリノベーションの費用を住宅ローンに組み込める場合があります。
ただし、リノベーションを行う場合であっても、バルコニーや玄関ドアなどの共用部分の位置や天井の高さなどは変更できません。また、給排水配管をまとめている「パイプスペース」によっては、水周りのリノベーションに制限が生まれることに注意が必要です。中古マンションをリノベーションする際には、管理組合の了承を得てから実施しましょう。
・日当たりなどの周辺環境を確認できる
竣工前に販売している新築マンションの場合、購入を検討する際にはパンフレットやモデルルームのみを参考にすることが多いです。未完成の新築マンションでは、実際の日当たりや周辺環境を正確に把握できません。一方、中古マンションはすでに完成している物件なので、内見の時点で実際の日当たりや周辺環境をチェックできます。
また、中古マンションは「物件にどのような人が住んでいるのか」「管理がどのように行われているのか」などを実際に見られるため、生活環境をイメージしやすいです。実際の物件を見ることで、住んだあとに「思っていたのと違った」となるリスクを軽減できます。
4. 中古マンション購入時の注意点

中古マンションの購入時には、初期費用や住宅ローンの条件など、後悔しないために注意すべき点が数多くあります。ここでは、押さえておきたい代表的なポイントを分かりやすく解説します。
・見た目だけでは分からない劣化に気を付ける
中古マンションの購入時は、外から見ただけでは分からない劣化に注意しましょう。よくある劣化のケースは以下のとおりです。
- 壁紙の下がカビだらけだった
- 給水管がサビだらけだった
- コンクリートの床に穴が開いており、板で塞がれていた
- 床の遮音性能が低い状態になっていた
- マンションの外壁に穴が空いていた
特に、水漏れは自分の居室が被害を受けるだけではなく、下の階の住人にも迷惑がかかるので、注意が必要です。中古マンションの購入を検討する場合は、必要に応じて建築士にホームインスペクション(住宅診断)を依頼すると良いでしょう。
・妥当な価格であるか冷静に判断する
中古マンションは、似た条件の物件でも価格が大きく異なることがあります。購入前に価格の根拠を把握することが重要です。具体的には以下のポイントを確認しておくと良いでしょう。
- 同じエリアで築年数が近い中古マンションの成約事例と価格
- リフォーム込みの価格か(表面上の価格だけで判断しない)
- 売主が不動産会社か個人か(仲介手数料に違いが出るため)
リノベーション済みマンションは、物件価格にリフォームコストが上乗せされています。リフォーム内容に納得できるか、仕様は自分の好みに合うかも含めて判断が必要です。
5. 築30年超えの中古マンションを購入する際の6つのチェックポイント

築年数の長い中古マンションを購入する場合、価格の安さや立地条件だけに注目して選ぶと後悔する可能性があるため注意が必要です。ここでは、築30年超えの中古マンションを選ぶ際にチェックすべき5つのポイントを解説します。
・新耐震基準で建てられているか
購入を検討している中古マンションは、1981年6月に施行された「新耐震基準」に基づいて建てられているかをチェックしましょう。日本は、何度も大きな地震被害に遭っている国です。そのため、耐震設計についての法律は、大地震の被害に伴ってアップデートされています。
1981年の「新耐震設計基準」は、1978年に起きた「宮城県沖地震」の被害を反省して制定された法律であり、従来の耐震設計法の抜本的な見直しが行われました。地震に耐えることだけでなく、建物内の居住者の命を守ることが主眼に置かれたため、従来よりもさらに高い耐久性が求められたのです。
実際に1995年の「阪神淡路大震災」では、新耐震設計基準に基づいた建物は、旧基準の物件より被害が少なかったことが分かっています。国土交通省の「マンション建替え等の促進について」の調査によれば、2014年末時点でのマンションストック総数は約590万戸でした。
そのうち約106万戸は、1981年以前に建てられた旧耐震基準の物件であるとされています。つまり、2014年末時点で現存するマンションのうち、約18%は旧耐震基準で建てられた物件です。
旧耐震基準で建築されたマンションであっても基本的には住めますが、安心して暮らせる家を探すなら、新耐震基準に基づいている物件を検討しましょう。築年数の長い中古マンションの耐震基準に不安を感じる方は、専門家に相談するのがおすすめです。
・配管設備の寿命はどれくらいか
1970年代後半の研究によると、鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命は100年を超えると推定されています。適切に建てられたマンションであれば、築30年を経ても安心して居住が可能です。
一方で、マンション内部の配管設備の寿命は25年〜30年と言われています。マンションが築30年を超えていれば、配管設備が寿命を迎えるため修繕工事が必要です。配管設備の修繕工事が実施されたかや、メンテナンス予定の有無は、欠かさずチェックしましょう。
また、比較的古いマンションでは、配管をモルタルで埋め込んでいるケースがあります。この場合、配管設備を取り換えるために一度モルタルを砕いて剥がす大規模な工事が必要です。配管設備の寿命のチェックを怠ると、マンションを購入してもすぐに住めなくなる事態が起こる可能性があるため注意しましょう。
・今までの修繕履歴・今後の修繕計画は適切か
適切な修繕履歴・修繕計画の有無は、マンションの寿命を大きく左右する重要な要素です。「適切な修繕をしていない」「修繕計画が作成されていない」ということは、メンテナンスの不足により老朽化が進むため、早期に住めなくなるリスクがあります。
特に、1960年代から70年代に建てられたマンションの場合、修繕計画が作成されておらず、現在までメンテナンスがされていないケースは多くあります。老朽化によって住めなくなる状況を防ぐためには、購入前に修繕履歴・修繕計画をチェックすることが重要です。
また、マンションの修繕費用が積み立てられていないケースには注意が必要です。修繕にかかる費用は高額なため、工事が必要なタイミングで居住者から徴収するのは難しいでしょう。資金不足によってマンションの修繕が行えないと、老朽化が早まる原因となります。
・適切な管理がされているか
購入する中古マンションが築30年を超える場合、いつまで住めるのかを心配する方は多いでしょう。マンションの寿命は、材料や建築方法だけでなく、管理状況によっても大きく左右されます。
管理組合が正常に機能しており、日々のメンテナンスや定期的な修繕工事が実施されていれば、マンションの寿命は比較的長くなります。「廊下」「駐輪場「ゴミ捨て場」などの共用部の掃除や、メンテナンスが行き届いているかをチェックしましょう。また、配管設備の寿命や修繕履歴・修繕計画の有無を確認することが大切です。
逆に、適切に管理されていなければ、マンションの本来の寿命より短くなる可能性があります。「マンションの寿命を縮めるような管理をしていないか」という視点で確認することが重要です。
・将来的な売却は可能か
将来的にマンションの売却を考えているのならば、売りやすい物件かを購入前に確認する必要があります。将来的に売却しやすいマンションとは、以下の4つの条件をできるだけ多く満たしている物件です。
- 立地条件がよい
- 眺望・日当たりがよい
- 適切な管理が行われている
- 内装や間取りが時代に合っている
購入したマンションに永住する方や、売却時に値崩れによる損失をある程度許容できる場合は、自分の住みやすさを優先して良いでしょう。しかし、将来的に売却する予定があり、できるだけ値崩れを防ぎたい方は、4つのポイントを入念にチェックするのがおすすめです。
・リノベーション可能な範囲はどこまでか
マンションには共有部分と占有部分がありますが、リノベーション可能なのは専有部分のみです。共用部分は住戸の外側で、専有部分は住戸の内側の空間であり、天井との間の空間も含まれます。つまり、空間内にある給水・給湯管や電気配線も専有部分に位置づけられています。
ちなみに以下の箇所は共有部分に該当するので、変更が制限されることが一般的です。
- 玄関ドア
- 窓
- バルコニー
また、具体的に中古マンションで可能なリノベーションのよくある例は以下のとおりです。
- 設備交換
- 内装張替え
- 間取り変更
一方で、建物全体を支えるコンクリートの「耐力壁」が室内にある場合、撤去や移動ができません。その場合、間取り変更に制限が出ることがあるので注意が必要です。
6. まとめ|築30年超えの中古マンションはさまざまな面を考慮して選ぼう

築30年を超える中古マンションの件数は年々増加しており、物件を探す方々からの関心は高まっています。築30年超えの中古マンションにおける最大の魅力は、価格の安さです。
また、立地条件のよさや管理状況の把握しやすさなど、築年数が長い中古マンションならではのメリットは多くあります。ただし、耐震基準や修繕履歴の有無などで築浅の物件とは異なる側面が多く、購入する前には入念な確認が必要です。
築30年超えの中古マンションを購入する際は、あらゆる条件を確認したうえで慎重に選び、理想の住まいを手に入れましょう。コスモスイニシアでは、中古マンションだけではなく、新築やリノベーション物件を取り揃えています。
築30年超えの中古マンションの間取りや内装に不満がある場合は、リノベーションを行うことで理想の住まいの実現が可能です。物件価格を安く抑えたうえでリノベーションを行うことを考慮しつつ、住みやすい中古マンションを探してはいかがでしょうか。
※2025年9月時点での情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。







