2018.02.13
不動産市況

金融緩和で、不動産価格の「格差拡大」が一段と進行した

最近、所得や資産の格差問題が日本でも話題になっているが、「格差」はあらゆる分野で生まれていて、現在は「格差の時代」と言っても過言ではない。個人の所得や資産の格差だけではなく、企業の業績、地域経済力の格差など、様々な格差が生まれ、その格差が拡大している。この格差拡大は、不動産市場でも著しく価格に反映されている。[br] 図表①は、都道府県所在地の最高路線価の指数の推移を示したものであるが、地域による格差は著しく、以前に比して下落しているところもあれば、一方では、数倍にも達しているところもある。とりわけ東京は、他地域よりも一段、抜きん出ているし、近年、経済力を増している名古屋も目立っている。[br] また、人口増加が著しい地方中枢都市も、外部からの資金流入もあって、この数年間、地価の上昇が続いている。しかし、地方圏では下落しているところも少なくない。格差は拡大し、二極化が進行している。

不動産市況アナリスト 幸田昌則氏 ネットワーク88主宰。不動産業の事業戦略アドバイスのほか、資産家を対象とした講演を全国で多数行う。市況予測の確かさに定評がある。

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上記コメントの図表1

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アベノミクス効果で大都市の価格は急上昇

安倍政権誕生後の各地の商業地価指数の推移を示した図表②を見ると、何れの地点の基準地価も上昇が著しい。この背景には、90年バブル期を超える大幅な金融緩和と、歴史的な超々低金利がある。この余剰資金が3大都市圏と、地方中枢都市の限られた一部の地点に集中して流入された結果、デフレ時代下にあっても著しい上昇を実現させることになった。[br][br] 特に、東京の都心部の商業地は、利便性に優れていることで、都市の再開発が活発に行われ、高騰が目立った。東京都心部の資産価値は、国内の他の都市とは比較にならず、ニューヨーク・ロンドン・パリなどの欧米の中心都市との比較が相応しいと考えられる。東京の経済力、人口を考えると、高齢化という問題はあっても、公共交通機関の集積度などの利便性を加味すると、今後もその資産価値が高く維持される可能性は高い。ただ、行き過ぎた価格上昇には、調整があることは指摘しておきたい。[br] アベノミクス政策の追い風を受けて地価が上昇したのは、大都市の高級住宅地も同様だが、地域の利便性の良否によって差異が見られる(図表③)。近年では、高級住宅地といえども、地下鉄などの公共交通機関が充実した徒歩5分以内の価値が一段と高まってきている。[br] ここまで指摘してきたように、大都市中心部の不動産の価値が急速に高まってきているが、一方では、逆に、資産価値が低下に転じている地域も少なくない。結論から言えば、日本では、東京都心部のような交通の利便性に優れた地域の不動産の価値は高いということになる。[br] さて、このような状況を考えると、今後、資産価値の高まるものと低下していくものとに、二極化していくことは確実であり、その対応策として「資産の組み替え」を考える時に来ている。立地による不動産の価値がこれから一段と拡大していく中で、より資産価値の高い都心部・中心部への組み替えによって、資産の目減りを避けるだけでなく、そこから生み出される収益が確保できるという点でも重要な視点だと言える。

    

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投資資産としての不動産の「優位性」が高まっている

理論上、マイナス金利は「貯蓄から証券・不動産」への投資を促進、加速させるが、最近の国内の動きを見ると、不動産への関心が高まっている。その背景には、日本の株式市場での株価乱高下で、短期資金はともかく、中長期レンジでの投資資金はついていけないことが推察される。マイナス金利の実施後、東証のREIT指数の上昇に弾みがついた。REIT(不動産投資信託)の投資対象の多くは国内不動産であり、そのために、収益が為替相場や中国などの海外景気の影響を受けにくく、安心感があるという評価が出ているものと考えられる。ただ、銘柄によっては割高感も出ているが、今の金融情勢が続けば、堅調に推移していくことが予想される。[br] 何れにせよ、マイナス金利の登場で、投資市場における不動産の資産価値が一段と高く評価される結果となっている。収益物件に対する需要は、多少の利回りの低下を気にしながらも、衰えるどころか、品不足を生む過熱した状況が続いている。

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政策が不動産の価格を下支え

これまでの異次元の量的金融緩和に加えて、2016年2月からのマイナス金利の実施は、不動産市場への更なる追い風となり、需要が高まった。そのため、売主の一部には強気の姿勢に転じ、売却希望価格を見直す例も出てきた。しかし、割高で収益性の低い不動産は、都心でも長く売れ残ったままという例も少なくない。いくら需要が強いからといって、価格には限界があるということである。しかし、マイナス金利が価格の下支え効果を持っていることには、間違いない。[br][br] 最後に、これまで長期に亘って不動産という実物資産を取得してきた投資家の中から、最近では、REITに代表される不動産の金融商品を購入する人が多くなっている。その理由として、「実物資産の保有は管理が煩わしい」という声も聞かれる。収益性も大事だが、各種の管理の煩わしさが無いことが魅力となっている。[br] また、資金面での購入のしやすさと、管理の煩わしさが無い不動産小口化商品についても、超低金利時代にあって、関心が高くなっている。商品によっては、実物不動産と同様に、大きなメリット・特徴である資産圧縮効果、減価償却などの税務メリットを享受できるものもある。[br] ただ、重要なことは、対象物件の「立地」にはこだわりたいものである。同時に、運営を行う企業が信頼できるか否かも十分に吟味しておきたい。

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