仲介手数料とは不動産会社への成功報酬|計算方法や支払い時期、その他の費用も解説

不動産売買には仲介手数料が必須? 仲介の仕組みと計算方法を理解しよう!-トップ

一戸建てやマンション、土地などの不動産を売買するとき、多くの場合、不動産会社に仲介を依頼します。その際に「仲介手数料」という費用が発生します。仲介手数料とは、売主と買主を仲介する不動産会社に対して支払われる成功報酬です。

もし、この手数料の仕組みをよく知らないまま話を進めると「思っていたより手元にお金が残らなかった……」と後悔する原因になるでしょう。そこでこの記事では、仲介手数料の支払いの必要性や仲介手数料の計算方法、不動産会社の選び方を解説していきます。家の売買に必要な費用をしっかりと理解して、不当な請求を避け、堅実な資金計画を立てられるようになりましょう。

[toc]

1. 仲介手数料とは不動産会社への成功報酬

不動産売買における「仲介手数料」とは、仲介を担当した不動産会社に対して支払う成功報酬のことです。一般的な不動産売買では、不動産会社(宅地建物取引業者)が、売主と買主の間に入って、話を取り次いだり契約条件をまとめたりします。これを「仲介」といいます。「仲介」を不動産会社に依頼し、売買契約が成立することによって仲介手数料の請求がされるのです。

「不動産会社へ仲介の依頼をしないで売買を行えば、仲介手数料は必要ないのでは?」と考える人も多いでしょう。しかし不動産会社へ依頼しなければ、不動産売買に伴う手間やリスクをすべて自分で引き受けることになります。買い手を探す手間と手続きのリスクに関して詳しく解説します。

・個人売買における「買い手を探す」手間

家を売るためには、まず買ってくれる人(買主)を探すことが必要です。親戚や友人への売却も不可能ではありませんが、そのなかから買主が見つかるかどうか定かではありません。その土地の不動産会社であれば「近隣へチラシを配る」「顧客へ宣伝する」などの手段で買主を探せますが、売主個人が同様の手段を取ることは難しいでしょう。

・専門知識がないことによる「手続き」のリスク

不動産売買は、単なるモノの売り買いとは異なり、法律や税務など多岐にわたる専門知識が求められます。特に「契約条件の交渉」や「法的に有効な契約書の作成」「物件の引き渡し」といった各段階では、ささいな見落としが後に大きなトラブルに発展する可能性もあります。

不動産会社は、これらの複雑な手続きを安全かつ円滑に進めるための専門家です。仲介手数料は、こうした専門的なサービスと取引完了までの安心を手に入れるため、いわば必要不可欠な費用といえるでしょう。

2. 仲介手数料の重要ルール|上限額・支払い時期・その他費用

不動産売買の仲介手数料には、法律で定められたルールがあります。この章では、売主が知っておくべき以下3つのルールについて解説します。

  • 仲介手数料の上限は法律で決められている
  • 支払うタイミングを明確にしておく
  • 仲介手数料以外の費用が発生する場合もある

一つずつ解説するので読み進めてみてください。

・仲介手数料の上限は法律で決められている

不動産会社への報酬である仲介手数料は宅地建物取引業法と国土交通省の告示によって、売買代金(税抜)の金額区分ごとに上限が定められています。具体的には、売買価格を以下の3つのパートに分解し、それぞれに異なる料率をかけて合計します。なお、以下の表は宅地建物取引業者が課税事業者である場合に適用される内容です。

一例として、3,000万円の物件を取引するケースを想定してシミュレーションしてみましょう。このときの仲介手数料の上限額は、以下の1)~3)の合計金額となります。

1)200万円以下の部分

200万円×5.5%=11万円

2)200万円超400万円以下の部分

200万円×4.4%=8.8万円

3)400万円を超える部分

2,600万円×3.3%=85.8万円

1)~3)の合計金額:105.6万円

上記の計算が正式な方法ですが、複雑で間違いが起きやすいのも事実です。そこで売買価格が400万円を超える場合、以下のような簡略的な計算式があります。

仲介手数料=(売買価格×3%+6万円)+消費税

3,000万円の物件であれば、以下の計算式になります。

3,000万円×3%+6万円=96万円+消費税=105.6万円

なお、上記の早見表あるいは速算式で算出した金額は、あくまで仲介手数料の「上限額」です。

※上記計算式の料率は、2025年8月現在の消費税率に則したものです。

 ・支払うタイミングを明確にしておく

仲介手数料は成功報酬なので、原則として「売買契約が成立したとき」に請求権が発生します。ただし「売買契約が成立した瞬間に仲介手数料全額を支払うべきか」というと、そうではありません。不動産業界では「2回に分けて支払う」のが一般的です。具体的には、以下のタイミングで支払うケースがほとんどです。

  • 1回目:売買契約が成立したとき → 仲介手数料の半額
  • 2回目:物件の引き渡しが完了したとき → 残りの半額

ただし、不動産会社によっては、引渡し時に一括で支払うケースもあります。たとえ半額でも高額になることが多いので、どのタイミングでどれだけの仲介手数料を支払うかは、不動産会社と話し合って、事前に決めておきましょう。不動産売買の流れについては、以下の記事を参考にしてください。

  【不動産売却ガイド】家を売るために必要な基礎知識と手順総まとめ 家を売るなら、できるだけ高く、早く、手間なく売りたいですよね。 そのためには、事前にある程度の基礎知識を勉強しておくことが重要です。 損をせずに賢く売却するために、まずは不動産売却の大まかな流れと、最低限の基礎知識を学んでいきましょう。 コスモスイニシアの暮らしメディア「kurashiba」

・仲介手数料以外の費用が発生する場合もある

不動産会社が仲介業務を行ううえで、広告作成や営業活動を行いますが、通常の営業活動において発生する費用を仲介する相手に請求できません。売買契約が成立した際に発生する仲介手数料に、広告費用や営業活動費は含まれています。ただし、以下3点を全て満たしている場合に限り、例外的に費用の請求が可能です。

  1. 依頼者(売主)の依頼によって発生した費用である
  2. 通常の仲介業務では発生しない費用である
  3. 実費である

たとえば、不動産会社に対して「新聞紙面に売りに出す不動産の全面広告を出してほしい」と依頼したとします。新聞紙面広告は高額であり、仲介手数料の範囲内で賄うことが相当でない場合があります。つまり、新聞広告掲載費用は「依頼者(売主)の依頼によって発生した費用」であり「通常の仲介業務では発生しない費用」なので、費用の全額を請求されても妥当だといえるでしょう。

一方で、同じ不動産会社に対して「売りに出す不動産について、建物の見取り図や条件などをまとめて、店頭に広告として掲示してほしい」と依頼したとします。依頼を受けた不動産会社は、建物の見取り図や条件などを記載してプリントアウトし、店頭に掲示します。

このケースでは、たとえ売主からの依頼であったとしても、費用を支払う必要はないと考えてよいでしょう。 なぜなら店頭への広告掲示は、不動産会社にとってごく当たり前の営業活動であり、その費用は仲介手数料に含まれているのが通常だからです。不当な請求を受けないためにも、3つの条件をよく理解しておきましょう。

3. 正しい不動産会社選びのための3つのポイント

不動産売買を気持ちよく行うためには、仲介手数料についての理解だけでなく、安心して取引できる不動産会社の選び方を知っておく必要があります。不動産会社を選ぶ際の重要なポイントは、以下の3つです。

  • 不動産会社の公開情報を確認する
  • 「仲介手数料の安さ」を基準に不動産会社を選ばない
  • 担当者の対応にも目を向ける

それぞれ詳しく解説します。

・不動産会社の公開情報を確認する

まず、不動産会社の情報を集めることから始めましょう。具体的には、以下のような情報が不動産会社の良し悪しを判断する材料になります。

  • 宅地建物取引業の免許の有無
  • 事務所の所在地
  • 過去の行政処分の有無
  • 他事業との兼業状況 など

不動産の売買や仲介を事業として行うには、必ず免許が必要です。免許番号は不動産会社のWebサイトや広告などに記載されているので、確実にチェックしておきましょう。免許番号からだけでも「不動産会社の免許権者」と「免許の更新回数」を確認することが可能です。

たとえば「国土交通大臣(03)第012345号」という免許番号を例に解説してみます。宅地建物取引業の免許は、以下のように2つ以上の都道府県に事務所を構えているかで、免許権者が変わります。

  • 国土交通大臣の免許:2つ以上の都道府県の区域内に事業所がある場合
  • 事務所所在地を管轄する都道府県知事の免許:1つの都道府県の区域内のみに事業所がある場合

したがって、この免許番号の不動産会社は、2つ以上の都道府県の区域内に事業所を持っていることがわかるでしょう。続いて「(03)」の部分からは、免許の更新回数を確認できます。宅地建物取引業の免許は、5年に1回の頻度で更新が必要です。

したがって、更新回数が3回ということは、少なくとも10年以上は不動産会社として営業していることがわかります。営業歴の長さは、信頼度や経験の豊富さの指標の一つと考えていいでしょう。ただし東京都知事(10)の宅建業者が、業務拡張で国土交通大臣免許に切り替えた場合は国土交通大臣(1)になるため、不動産業歴が長く経験が豊富であっても更新回数が少ないケースが存在します。

さらに、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、宅地建物取引業者の検索も可能です。この名簿には、以下のような情報が記載されています。

  • 免許の年月日
  • 代表者氏名
  • 事業所の所在地
  • 行政処分の履歴と状況 など

免許番号や宅地建物取引業者名簿から得られる情報だけで、不動産会社の良し悪しが完全に判断できるわけではありません。しかし、参考情報の一つになるので、集められる情報は確実に集めておきましょう。

・「仲介手数料の安さ」を基準に不動産会社を選ばない

この記事で説明してきた「仲介手数料」ですが、1,500万円の不動産を売買したなら仲介手数料の上限は55万円強と、なかなか高額です。そのため、仲介手数料が55万円の会社と20万円の会社とがあった場合、20万円の会社の方が魅力的に感じられるでしょう。ただし「仲介手数料が安いから」という理由だけで、不動産会社を選ぶことはおすすめしません。

仲介手数料半額、あるいは無料を売りにしている不動産会社も存在します。しかし、仲介手数料は「仲介する不動産会社の利益」です。これを安くするためには「利益」か「コスト」のいずれかを削る必要があり、以下のような対策を取る業者がいるでしょう。

  • 広告の露出機会をカットして販売コストを抑える
  • 成約時期を早めて人的コストを抑えるために、売却価格を下げる

仲介手数料が安くなったとしても、結果的に不動産が売れなかったり当初の売却予定価格よりも安く売ってしまったりすれば、最終的に得をしたとはいえません。また、仲介手数料の上限額を提示してきた不動産会社に対して、値引き交渉を検討する人も多いです。値引き交渉自体は問題ありませんし、不動産会社によっては、値引きに応じる場合もあります。

ただし、担当者も人間です。自分たちの利益である仲介手数料を値切られれば、利益の大きいほかの不動産に比べて、売却活動に消極的になる可能性があります。もちろん、仲介手数料が安かったり、値引きに応じたりしたからといって、売却活動で手を抜いている会社とは限りません。仲介手数料を安く設定している不動産会社には「なぜ安いのか」「他で帳尻を合わせることにはならないか」を確認してみても良いでしょう。また、仲介手数料の価格交渉をする場合は、相手を尊重して誠意ある対応を心がけましょう。

・担当者の対応にも目を向ける

不動産会社と契約を結ぶ前には、相談や査定時点で担当者とやり取りします。その際に、連絡のスムーズさや報告の丁寧さをチェックしておきましょう。契約前の段階で連絡に滞りがある会社は、法的に定められている報告義務も怠る可能性があるからです。不動産会社は、売買を行いたい個人と「媒介契約」と呼ばれる契約を結びます。媒介契約には、以下の3つがあります。

  • 一般媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約

専任媒介契約と専属専任媒介契約には「業務処理状況の報告義務」が定められており、定期的に、物件の売買仲介業務に関する経過報告が必要です。契約前からレスポンスが悪い会社は、この法的義務を怠る、あるいは軽んじる可能性があります。また、一般媒介契約の場合は、上記の報告義務がありません。

義務がなくても連絡がマメな会社であれば、適切な経過報告を行います。しかし、契約前から連絡が滞るような会社であれば、経過報告はあまり期待できず不安が残ります。不動産の売買活動は、時には半年ほどの長期にわたる作業となります。パートナーとなる不動産会社との連絡で不安が残り、余計なストレスを溜めなくてもいいように、契約前にやり取りのスムーズさはチェックしておきましょう。

4. まとめ

不動産売買の仲介手数料とは、不動産会社への成功報酬であり、高額な資産取引を失敗から守るための費用とも言えるでしょう。もちろん、金額が安いことに越したことはありません。しかし、その安さがサービスの質を犠牲にしたものであれば、売却に時間がかかったり不利な条件で契約してしまったりと、結果的に大きな損失につながる恐れがあります。目先の金額だけでなく、その対価としてどのようなサービスを受けられるのかをしっかりと見極め、納得できる不動産会社選びを行ってください。

2025/09/22時点での情報です。

※記事内で使用している写真、図等はイメージです。