マンションの大規模修繕の必要性を解説|主な工事箇所や費用目安、流れも紹介

マンションを購入する際に忘れてはいけないのが「大規模修繕」です。大規模修繕はマンションの寿命を延ばし、資産価値を保つ役割を担っています。
本記事では、マンションの大規模修繕が必要な理由や、工事内容、工事費用、具体的な流れについて詳しく解説します。大規模修繕を控えている方や、これからマンション購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. マンションの大規模修繕とは?工事箇所や費用の目安も解説

マンションの大規模修繕とは、経年劣化によって機能が低下した建物の主要部分を、計画的かつ包括的に修繕・改修する工事です。日常的な小規模な修繕とは異なり、建物全体の機能回復と長寿命化を図るために、一定の周期で実施されます。ここでは、大規模修繕の必要性や主な工事箇所、修繕工事の費用目安について、詳しく解説します。
・マンション大規模修繕の必要性
マンションの大規模修繕は美観の維持に留まらず、建物の安全性と快適な居住環境を長期にわたって確保するために不可欠です。建物の外壁や屋根、ベランダは、雨風や紫外線に日々晒されており劣化は避けられません。劣化することで、ひび割れや雨漏り、タイルの剥離といった問題につながります。
これらを放置すると、建物全体の構造に悪影響を及ぼし、住民の安全を脅かすだけでなく、マンションの資産価値も低下させてしまいます。計画的な修繕は、マンションの寿命を延ばし、住民の暮らしを守るうえで重要な取り組みと言えるでしょう。
・主な工事箇所
マンションの大規模修繕は、日常的な補修や部分的な修理とは異なり、建物の躯体や主要な設備を含む大がかりな工事です。具体的には、以下のような幅広い工事が実施されます。
| 工事箇所 | 内容 |
|---|---|
| 外壁 (補修、塗装、シーリング) |
|
| 屋上・バルコニー防水 |
|
| 鉄部塗装 (廊下、階段、エントランス) |
|
| 給排水管、電気設備 (状況により更新) |
|
| その他 (付属施設、セキュリティ設備など) |
|
・マンションの大規模修繕にかかる費用目安
マンションの大規模修繕にかかる費用は、以下のような条件で大きく変わりますが、一般的には一戸あたり100万〜125万円程度が目安とされています。(国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(報告書)」)
- マンションの規模
- 築年数
- 劣化状況
- 採用する工法
- 工事箇所 など
マンション全体の費用としては、数千万円から億単位になることも珍しくありません。工事の主な内訳としては、以下のものがあげられます。
- 足場などの仮設工事費
- 外壁補修・塗装費
- 防水工事費
- 設計・監理費 など
これらの費用はあくまで目安であり、事前に専門家による詳細な劣化診断と複数業者からの見積もり比較により、適正価格を見極めることが重要です。また、昨今の建築費高騰による増額分も加味して検討することも大切です。
2. マンションの大規模修繕工事の期間と周期

マンションの大規模修繕工事は、準備から工事完了まで長い期間を要します。また、修繕を行う最適な周期は、建物の状態や立地によって異なります。マンション大規模修繕工事の期間と周期に関して、詳しく解説しますので参考にしてみてください。
・工事完了までにかかる期間
マンションの大規模修繕工事にかかる期間は、マンションの規模や構造、工事内容によって大きく変わります。国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(報告書)」によると、準備期間である「設計コンサルタント業務」期間について、初めて大規模修繕工事を実施するマンションでは1年半~2年程度を費やすことが記載されているので、純粋な工事期間を加えると長期的なプロジェクトであることが分かります。
実際に工事を行うには、以下のような工程が必要です。
- 事前の劣化診断
- 計画策定
- 業者選定
- 住民説明会 など
工事中は足場の設置や騒音、日照阻害など、住民の生活に少なからず影響が出るため、事前に綿密なスケジュールを組み、住民への十分な情報提供と配慮が不可欠です。
・大規模修繕工事の目安の周期
前述の国土交通省が公表している調査によると、マンションの大規模修繕工事の平均修繕周期は1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年、平均修繕周期の平均値では15.2年となっています。しかしこの周期はあくまで一般的な指針であり、以下のような条件により劣化の進行速度は変わります。
- マンションの立地環境(日当たり、風当たり、塩害の有無など)
- 建物の構造
- 使用されている材料の種類
- 日頃のメンテナンス状況
目安として、10〜15年程度で考えておきましょう。
3.【7ステップ】大規模修繕の基本的な流れ

マンションの大規模修繕は、多くの関係者が関わる複雑なプロジェクトです。工事が完了して引き渡すまでの具体的な流れは、以下のとおりです。
- 修繕委員会の立ち上げ
- 劣化状況の確認
- 工事内容の検討
- 設計・コンサルティング会社および施工会社の選定
- 総会での決議
- 工事着工
- 竣工・引渡し
それぞれ詳しく解説します。
・Step1:修繕委員会の立ち上げ
大規模修繕の第一歩として、理事会の下に「修繕委員会」を立ち上げて工事計画策定の体制作りを行います。理事会だけでは、専門的な工事内容の検討や膨大な作業に対応しきれない場合が多いです。
修繕委員会を立ち上げることで、劣化状況の調査や工事内容の検討、業者選定のサポートなどに対応できる体制を構築します。
理事会役員だけでなく、マンション住民のなかから関心のある方や建築・設備に関する専門知識を持つ方を募ることで、多様な視点から検討を進めることが可能です。これにより、より実情に合った計画策定が期待できます。
・Step2:劣化状況の確認
現在のマンションがどのような状態にあるのかを正確に把握することは、適切な修繕計画を立てるうえで重要です。そのため専門の業者に依頼し、建物の内外装や設備全般にわたる詳細な劣化診断を実施するのが一般的です。
目視や打診、場合によってはX線や赤外線カメラなどを用いた高度な調査も行われます。この診断結果にもとづき、修繕が必要な箇所や優先順位が明確になり、その後の工事計画の根拠となります。
また、住民から不具合情報やアンケート結果も収集し、総合的に判断することで、必要な修繕箇所を漏れなく特定することが可能です。
・Step3:工事内容の検討
劣化状況の診断結果と長期修繕計画をもとに、具体的な工事内容と予算、スケジュールを検討します。「どの範囲をどのような工法で修繕するのか」また、マンションの価値向上につながる改修(デザイン変更、省エネ化、バリアフリー化など)も同時に行うかについても議論します。
この段階で、費用対効果や住民のニーズ、将来的なメンテナンスコストなどを総合的に考慮し、現実的かつ最適な計画を練り上げるのが成功の鍵です。
・Step4:設計・コンサルティング会社および施工会社の選定
大規模修繕は専門性が高いため、設計事務所やコンサルティング会社といった第三者の専門家に協力を依頼することが一般的です。彼らは、大規模修繕工事において、以下のような多岐にわたる役割を担います。
- 劣化診断の実施
- 工事計画の立案支援
- 施工会社の選定サポート
- 工事監理 など
選定にあたっては実績や専門性に加えて「管理組合の立場に立って中立的なアドバイスをしてくれるか」「コミュニケーションが円滑にとれるか」なども確認します。複数の施工会社から相見積もりを取り、以下のような項目を確認・比較してみましょう。
- 提案内容
- 費用
- 実績
- 技術力
- アフターフォロー体制 など
価格だけでなく、施工実績や技術力、住民への配慮なども重要な選定基準となります。
・Step5:総会での決議
修繕内容や予算、選定した施工会社・コンサルタントの最終承認は、管理組合の最高意思決定機関である総会で行われます。総会資料は事前に全区分所有者に配付し、計画内容や費用、住民生活への影響などについて理解を深めてもらうための説明会も開催します。住民からの疑問や懸念に対し、誠実かつ丁寧に回答し、十分な理解と賛同を得ることが、工事を円滑に進めるうえで不可欠です。
特に、費用負担については住民の生活に直結するため、透明性のある情報開示と丁寧な説明が求められます。なお、建物の構造や効用に大きな変更を伴う場合などは、区分所有法に定められた特別決議(区分所有者数および議決権の各4分の3以上の賛成)が必要となります。
・Step6:工事着工
総会での承認を経て、工事着工となります。工事開始前には、住民向けに工事説明会を再度開催し、具体的なスケジュールや作業内容、期間中の注意事項などを改めて周知します。
工事中は騒音や振動、臭気の発生など、住民生活に影響が及ぶ可能性があります。施工会社へは、安全と環境への配慮、そして居住者に対する進捗状況の定期的な報告を求めましょう。
・Step7:工事完了・引渡し
全ての工事が完了したら、設計監理者、管理組合の代表者が立ち会い、完了検査を実施します。完了検査では、以下のような確認を行います。
- 請負契約通りに施工されているか
- 工事内容が適切に行われたか
- 不具合や手直しが必要な箇所はない など
検査で指摘が入れば是正工事を行い、全ての基準を満たしたうえで、施工会社から管理組合へ工事の引渡しがされる流れです。
4. マンションの大規模修繕工事に関してよくある質問

マンションの大規模修繕工事に関して、以下のような質問がよくあがります。
- 工事中は住民は通常通り生活できますか?
- 大規模修繕の補助金制度はありますか?
- 改修工事・小規模修繕工事・大規模修繕工事の違いは何ですか?
- 修繕積立金はなぜ必要なのですか?
それぞれ詳しく解説します。
・Q1. 工事中は住民は通常通り生活できますか?
はい、基本的に工事中も住民は通常通り生活できます。ただし、足場が組まれることで日照や眺望が一時的に制限されたり、作業に伴う騒音や振動が発生したりすることもあります。
また高圧洗浄や資材の搬入・搬出時には、大きな音が生じるケースが多いです。さらに、バルコニーや駐車場、駐輪場の使用が制限されたり、窓の開閉が一時的にできなくなる可能性もあります。
・Q2. 大規模修繕の補助金制度はありますか?
マンションの大規模修繕に対して、国や地方自治体によっては補助金制度が用意されている場合があります。以下のような、特定の目的を持つ改修工事が対象となることが多いです。
- 省エネ改修(LED照明化、高効率空調導入、断熱改修など)
- バリアフリー化(スロープ設置、手すり設置など)
- 耐震補強工事 など
これらの補助金制度は、自治体によって内容や条件、申請期間が異なります。計画の初期段階で情報収集を行い、活用できる制度がないか確認しましょう。
・Q3. 改修工事・小規模修繕工事・大規模修繕工事の違いは何ですか?
改修工事は、既存の建物の性能や価値を向上させることを目指す工事です。例えば、外壁デザインの変更やエントランスの刷新、省エネ設備の導入などがあげられます。修繕工事は、建物が持つ本来の性能や機能を回復・維持することを主な目的として、経年劣化によって低下した部分を元の状態に戻す、あるいはそれに準ずる状態にすることを指します。
小規模修繕と大規模修繕の大きな違いは、その範囲と目的です。小規模修繕は、突発的に発生した軽微な機能不全(共用部における設備の故障や軽度の破損など)に対して行われる、部分的な機能改善を目的とした工事を指します。
一方、大規模修繕は、マンション全体を対象とし、計画的に建物の機能回復と維持を図るものです。費用も期間も大規模になり、長期的な視点で、建物全体の資産価値の維持・向上を目指す計画的な工事になります。
・Q4. 修繕積立金はなぜ必要なのですか?
大規模修繕費用の財源となるのが、毎月徴収される「修繕積立金」です。将来の大規模修繕に備えて計画的に積み立てていくための資金であり、マンションの長期修繕計画にもとづいて金額が算出されます。
修繕積立金が適正に積み立てられているかは、大規模修繕を円滑に進めるうえで非常に重要です。積立金が不足している場合、工事内容の見直しや住民への追加徴収、金融機関からの借り入れなどが必要となります。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、1住戸当たりの修繕積立金額は月約1万~1万5000円、専有面積1㎡当たり182円が平均(修繕積立金は使用料・専用使用料からの充当額除く金額)とされています。適切な積立金は、マンションの健全な維持管理と資産価値の維持に不可欠です。
5. まとめ

マンションの大規模修繕は、建物を美しく保つだけでなく、住民の安全を守り、快適な生活環境を維持することにつながります。また、マンションの資産価値を長期にわたって保つために不可欠な取り組みです。
計画的な修繕を行うことで、予期せぬトラブルを防ぎ、将来的な費用負担を抑えることも可能です。大規模修繕は、管理組合や住民、専門業者など多くの関係者が協力し合い、計画的に進めることが成功の鍵となります。快適なマンション生活を送るためにも、物件購入前には大規模修繕について十分に理解しておきましょう。
※2025年12月時点の情報です。
※記事内で使用している写真、図等はイメージです。



