ここに住むようになってから、一日の終わり方を、意識するようになった。“くらし”を、あとまわしにしない。
ふぅ。
今日は、向き合うことの多い一日だった。
判断も、責任も、
軽くはない。
仕事は終わったはずなのに、
頭のどこかでは、まだ続いている。
帰り道のあいだ、
まだ、誰かの役割に戻らなくていい時間が流れている。
名前で呼ばれ、
役割の顔で応える時間が、
少しずつ、ほどけていく。

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エントランスを抜ける。
空気が、さっきまでと少し違う。
不思議だ。
廊下を進むにつれ、
肩に乗っていたものが、
ひとつずつ、下りていく。
切り替えようとしなくても、
いつの間にか、切り替わっている。
部屋の灯りが、ひとつ、
またひとつ消えていく。
ソファに腰を下ろすと、
今日が、やっと静かになった気がした。
バルコニーに出て、
冷やしておいた一本を開ける。
夜の匂いがした、
静かな月が、こちらを見ていた。

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月を見上げるなんて、
前は、なかったことだ。
何となくすごしていた日常が、
“くらしている”
実感に変わった気がする。
心地よさって
自分で、つかんで、
選んでいくものなんだ。
そう、ここなら、
今日という一日を、
ちゃんと終われそうだと思った。

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01
今日が、ちゃんと終わる。
Dadʼs Story


