住民同士のつながりをサポートする、
まちづくりの水先案内人。
団地再生計画の一つとして誕生し、ひばりが丘団地地域のエリアマネジメントに取り組む「一般社団法人まちにわ ひばりが丘」。その代表理事を務める岩穴口さんに、街づくりへの想いと今後の展望についてお聞きしました。
地域をつなぐエリアマネジメント組織
「まちにわ ひばりが丘」との出会い。
ひばりが丘の団地再生事業の取り組みの一環として、全国初の官民連携のエリアマネジメント組織「一般社団法人まちにわ ひばりが丘(以下まちにわ)」が設立されました。団地再生事業が完了した後も、継続して地域が育っていくように「まちにわ」が中心となって、住民や事業者と連携しながら、コミュニティ施設の運営や地域イベントの開催、情報発信などを行なっています。
新旧住宅地の中に、当初の2階建の集合住宅を改装してつくられた「ひばりテラス118」は、住民活動の拠点になっています。
私自身の「まちにわ」での活動は、地域と住民をつなぐ「まちにわ師」というボランティアチームの第1期メンバーとして参加したことがきっかけです。みなさん本業は別にあって、公務員からフリーランス、学校の先生と面白いほどバラバラで。私も、四谷にある東京のおもちゃ美術館に勤務していました。
「普段は楽しく、困った時は助け合える街」
を目指して。
「まちにわ」という名前には、「和える・混ざる」や「輪・リングなどつながる」、「まちを自分の庭のように」など、いくつかの意味を含ませています。
街づくりには地域の方々の力が必要になってきます。「まちにわ」の運営も、最終的には地域のみなさんが中心になっていけるような計画を立てながら進められてきました。
この街は、単に住むだけではなくて、「普段は楽しく、困った時に助け合える」街になってほしいと思って、いろんな活動をしています。
2020年からは地域住民を中心とした運営体制に移行しましたが、当時はコロナ禍も重なり手探りの中でのスタート。リアルにコミュニケーションを取るのも難しい中でしたが、住民発案の企画やオンラインの活用など、新しい取り組みにもチャレンジすることができました。
「エリアマネジメントセンターひばりテラス118」(2024年3月撮影)
それぞれのできる範囲で、
楽しく活動できる仕組み。
何かを「提供する」「受ける」という一方通行の関係ではなく、みんなで一緒につくっていける街づくりが理想です。
まちにわ師をはじめとした仕組みのおかげで、新しく住みはじめた方も定期的に活動したり、イベントに参加したりする一歩を踏み出せます。
外から見ると、とてもきっちり運営されているように見えますけど、いい意味でゆるい(笑)。定期ミーティングも毎回参加することが義務ではありません。本業と両立して、休みの日に空いている時間で活動できる気軽さ。ひばりが丘には、住民それぞれが自分の得意分野を持ち寄り、それぞれのできる範囲で楽しく活動できる仕組みがあります。
地域に息づく
「共(とも)育て」という考え方。
この地域には、子育てに関して「共(とも)育て」という言葉があります。それは子どもを育てるということは子どもも成長するし、その周辺にいる大人や地域も育っていくという考えがあって。
僕の場合は自分の子どもが通う保育園のお父さん会という、せっかくできた地縁を活かす場があったらいいなと思っていました。お父さんは特に会社には所属しているけど、地元での地縁が全くないって人が多いですから。
それと地域に大人の目が増えると、子どもにとってもいいと思います。それも登下校の見回りとかだけではなくて、大人も子どもも、もっと楽しめる接点が増えていくといいと思います。
「子育て支援」から
「子どもの成長支援」へ軸足。
2020年よりデベロッパーさんとUR都市機構さんが立ち上げた街づくりの運営基盤を住民主体へと移行しました。これから先は次の担い手を僕たちがどのように探していくかというのが課題。次の10年を考えると世代交代が重要です。例えば、住み替えや高齢化などで同じ時期にごっそり住人がいなくなると、街づくりがリセットされてしまう。そこで住民の流動性をどのようにしていくかという点も気にかけていかないといけないところです。
これからは子育て支援というより子どもの成長支援が一つの方向性かなと感じています。分譲住宅の若い世代の方は地縁のない方が多いのですが、その子ども達は次のひばりが丘をつくっていってもらうことになります。そのためにも私たち大人がいろいろ参加して、子ども達も安心して暮らしていける土壌をつくっていければと考えています。
「ひばりが丘フィールズけやき通り前の交差点」(2024年6月撮影)