目指す“ESG”は「イゴコチ・スーパー・グッド」がちょうどいい?コスモスイニシアの不動産ESGプロジェクト【後編】

目指す“ESG”は「イゴコチ・スーパー・グッド」がちょうどいい?コスモスイニシアの不動産ESGプロジェクト【後編】

ESGプロジェクトの活動や社内公募制度「Next Generation Challenge(NGC)」を通じて、コスモスイニシアでは、少しずつですが着実に社会課題を解決する方向へと、事業のベクトルが向かっています。それでもまだ繰り返し浮上するのが「ESGをどのように事業とリンクさせるのか」という、大きな課題でした。
2025年2月に株式会社トリニティ・深澤秀彦さんを講師に招き実施した社内セミナーは、先進的企業におけるESG活動の取り組み事例から、ビジネスとESGの連携について知る機会となりました。 当セミナーで得た知見をもとに、「コスモスイニシアのESG」を考えてみたところ、「ユーザーの居心地のよさを追求することでいいのでは」という、ひとつのシンプルな答えが見えてきました。ここから進むべき「不動産×ESG」のカタチとは?
▼「ESGプロジェクト」【前編】「コスモスイニシアのESG」はじまりのストーリーはこちら

PROFILE

深澤 秀彦/Hidehiko Fukazawa

名前

深澤 秀彦/Hidehiko Fukazawa

経歴

トリニティ株式会社取締役
大手自動車会社傘下のデザインマネジメント・コンサルティング会社を経てトリニティに参画。グローバルでのデザインリサーチ、デザイン戦略立案、コンセプト/デザイン開発、デザイン経営の導入支援等、さまざまなプロジェクトを担当。テーマや課題に応じ、多種多様なエキスパートとチームを編成、プロジェクトを指揮している。

PROFILE

井上 恭男/Yasuo Inoue

名前

井上 恭男/Yasuo Inoue

部署

建築本部 建築一部 兼 経営管理本部 サスティナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

18年

経歴

東京都出身。戸建注文住宅の設計職を経て2007年に中途入社。戸建分譲事業を中心に携わる。2023年10月からESGプロジェクトに参画し、現在サスティナビリティ推進室にて社内啓蒙チームを率いる。

PROFILE

木本 麻衣子/Maiko Kimoto

名前

木本 麻衣子/Maiko Kimoto

部署

企画開発本部 統括部 兼 経営管理本部 サステナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

5年

経歴

大阪府出身。2021年に新卒入社。入社から3年間は、賃貸事業部にてサブリース事業に従事し、オーナーさまの窓口業務を経験。2024年に企画開発本部に異動し、仕入れ部門の計数管理を担当。入社2年目からESG推進プロジェクトに参加し、社内向けの情報発信・イベント開催にも携わる。

PROFILE

向井 優里子/Yuriko Mukai

名前

向井 優里子/Yuriko Mukai

部署

賃貸事業部 住宅運営一部 兼 経営管理本部 サステナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

12年

経歴

東京都出身。不動産売買営業職、司法書士事務所勤務を経て2014年に中途入社。賃貸住宅の申込受付業務、統括部門にて計数管理業務を担当後2024年に現在の部署に所属。宅地建物取引士、簿記2級などの資格を保有。2度の産育休を取得後復職。

PROFILE

向山 直登/Naoto Mukoyama

名前

向山 直登/Naoto Mukoyama

部署

建築本部 建築一部 兼 経営管理本部 サステナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

8年

経歴

静岡県出身。2018年に新卒入社。入社から商品企画課で設計監理や商品企画に携わる。2020年から2024年度までトリニティ深澤様と協業し商品開発プロジェクトを継続実施。2024年からサステナビリティ推進室兼務となり、全社のESG経営方針の推進にも携わる。

「価値転換」で見る不動産のESG

トリニティ深澤さんのセミナーで反響のあった事例は、消費者に馴染みのある商材を扱うものが多く、その1つが、飲み終わったあとに簡単に平たくできるペットボトルを導入した「Coca-Cola Japan」の「い・ろ・は・す」における事例でした。2009年に発売され、数多くのミネラルウォーターがあるなかで、日本のマーケットにおいてトップを走っているそうです。

トリニティ
深澤さん

容器がつぶせることで資源回収・洗浄などのリサイクル工程がより効率的になりつつ、持ち運びもしやすいという消費者のニーズにも添っている。だからユーザー評価も高いんでしょうね。

生活の身近にあるミネラルウォーターのペットボトルは、消費者がすぐ手に取って、その変化を実感しやすいものです。

トリニティ
深澤さん

それにくらべて車のように、商材が大きくなればなるほど消費者は実感しづらくなります。これは、不動産にもいえることです。

そこで深澤さんが提唱するのが「リファービッシュ」という考え方。初期不良品や中古品がある商品をメーカーなどが修理・整備して再販売するものです。

トリニティ
深澤さん

その発想を住宅にどのように落とし込むかを考えることが、ESGを事業化する糸口になるのではないでしょうか。

たとえば、築年数が経って資産価値が落ちてしまったような住宅でも、リノベーションによって、その価値を上げることができます。

井上

新築の建物も一度住んだら、その瞬間に中古扱いになり、価値が目減りすることがあります。でもそれって、本質的な価値とは違う話。そう考えると商品価格の考え方も変わってきますよね。

スマホをアップデートするように、「住宅」というハードに対してソフトをアップデートするという発想も、アイデア次第で実現できるかもしれません。

向井

私が所属する賃貸事業部は、主にサブリースでの賃貸受託を行っています。築20〜30年経っているものが主流なのですが、室内のスペックを上げてバリューアップ。リファービッシュとは少し違うのかもしれませんが、考え方はつながっていますよね。

トリニティ
深澤さん

あとは、廃棄物に新しい価値を与えるアップサイクルの考え方も、住宅に取り入れられそうです。リサイクルできる素材に「戻す」ことも重要ですが、デザインを加えることで用途の違うものに「生まれ変わらせる」ことだってESGです。

▼当社のアップサイクル事例のご紹介
「地元・山形の先輩後輩」偶然の出会いから始まったグッドデザイン賞獲得「廃棄される古材を大切に」

「逗子ビーチクリーンでアップサイクル 」の本意。デベロッパーが描く、リノベマンションと次世代をつなぐ投資ビジョン

Aという地点では価値がないものでも、Bという地点に置き直せば、価値が生まれることがあります。そういったアイデアのヒントをつかむには、普段からESGにつながる事例にアンテナを張っておくことが大切だと、メンバーは語ります。

トリニティ
深澤さん

ハードやソフトをアップデートするのに近いリノベーションとは違う視点で、建物の価値転換を考えるのが、アップサイクルです。昔の建物をホテルにするという先駆事例のような、そういったアプローチも考えられますよね。

アフォーダブルにZEH-M。
市場動向もキャッチアップ

古い建物の価値を底上げするいくつかのパターンを考えることで、不動産におけるESGと事業のつながりが見えてくるような気もします。とはいえ最近では資材や人件費の高騰で自治体の建設工事が頓挫し、再開発計画が見直されるというニュースも散見します。

向山

再開発で儲けが出るような利益構造になっている以上、どうにもならないこともありますが……「床をつくって売れた、よし!」という成功体験じゃないところに、いち民間企業の人間としてアイデアを絞り出すことが、新しい事業展開につながるのだと思います。入居率を上げたり賃料を上げたりすることだけで利益を生むのは、いままでの話。それこそアフォーダブルハウジングの観点や、不動産事業者の視座を変えていくことが必要でしょうね。

トリニティ
深澤さん

経年劣化という、価値が目減りするという概念自体が変わるもしれません。というか、変えなければいけない。そのなかで、どうやって事業の採算を取るかが大切です。

向山

サステナビリティ推進室では、ZEH-M(ゼロエネルギーマンション)を何%つくるといった話も上がっています。ESG視点でも具体策が1つでも出てくれば、だいぶ社内の動きとして変わってくると思います。中期経営計画2026をメドに、今年もトライアンドエラーですね。

向井

アフォーダブルハウジングについての知見も含めたうえで、今後は上長も巻き込んで具体的な事業展開に落とし込んでいけたらと思っています。

試行錯誤する輪を広げていきたい

木本

私は2022年からESGプロジェクトに携わって、4年目くらいです。ずっと課題に感じているのは「本当に本気でやるのかESG」ということ。経営層はESG推進と言っているけれど、日々の業務ではその言葉を聞いたことがない、という声も聞こえてきたりして……会社としてESG経営というものをどこまで本気で取り組むのか、どのようにして周囲の人を巻き込もうか、とモヤモヤすることもありました。

通常業務が忙しい傍らでESG推進に向き合うのは、ときには大変なこともあります。メンバーはどのように士気を高めているのでしょうか。

木本

当社には「Next GOOD」というMissionがあり、“お客さまのため”、“一歩先の新しい価値”を真剣に考え、新たな取り組みに対してみんなで試行錯誤しながら挑戦する風土があります。だからこそ、もっと経営層からESG推進の意思表示をしてもらい、興味関心をもって取り組む輪がどんどん広がるのを期待しています。そのために、私たちもギアをもう一段上げて活動していきたいです。

いままさに軌道に乗せるために、各方面のESGプロジェクトを推進している段階です。

向井

たとえば、『ジセダイラボ』(『次世代』が抱える課題を従業員と一緒に学び・考えるラボのような取り組み)の活動のように、コスモスイニシアのESGの取り組みは、経営陣からのトップダウンではなく従業員からのボトムアップで企画・推進しているものも多いんです。 すぐに事業化されないアイデアは採用されにくいかもしれないですが、各方向からアイデアを出し続けていくことが重要だということがわかってきました。

それにはやはり、「アイデア」を拡散させる力が必要です。

トリニティ
深澤さん

グロスで見るのかスピードで見るのか、採算をどう見るか。こういう採算の取り方ならいいね、となったときにESGの文脈で成立していたら、すばらしい。こういうのって運動で終わってしまいがちなので、そこまで持っていけるといいですよね。

井上

アイデアに対していいねと共感できる人がまわりにいれば、そのパワーは強くなるので、それに気付ける会社、その土壌がある会社になるようにしていけたらと思っています。

向山

ジセダイラボや社内公募を通じて、遊びのように試行錯誤しながらESGへの率直な意見を常に交わし、アイデアの芽が少し成長してきたら、リリースに向けて頑張る。“遊び”の箱は時代の流れで変わるので、柔軟に展開していけるようにしたいですね。

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