切迫早産の可能性で緊急入院。
2週間のワンオペ育児!
PROFILE
名前
木下 修文/Osafumi Kinoshita
部署
執行役員 経営管理本部総務人事部門 部門長
コスモスイニシア歴
23年
経歴
東京都出身。2002年入社。新築営業を経て、2003年から人事部へ。新卒採用を担当後、人事制度整備などバックオフィス系の業務に従事。2008年からは財務部・経営企画部等へも異動し、2013年市場・商品戦略部新規事業企画課課長、2019年レジデンシャル本部統括部部長等を経て、2023年から現職。
話は育児休業取得前の第3子誕生前から始まります。奥さまが切迫早産の可能性があり、ある金曜日に緊急入院に。その日以降2週間、病室を一切出られない状態になったそうです。
そんなことを予期していないから、当然準備をしていませんでしたし、仕事の調整もできていませんでした。まずは、毎週朝8時から始まる役員会議をどうやって切り抜けるかが大変でした。子どもは小学生と保育園児。小学校は8時過ぎないと門が開いていませんし、保育園は朝8時30分からです。 5時に起きて子どもたちにご飯を食べさせ、着替えさせて、7時には近所に住んでいる妻の実家に上の子を連れて行き、「8時になったら学校に行くんだぞ」と伝えて、そこから登校してもらい、下の子は、「妻が入院したので」と、保育園に無理を言って7時10分から預かってもらいました。晴れて7時15分ぐらいには1人になるので、そこからダッシュで会社に行って、8時からの会議に間に合わせるというのを、毎週月曜日にやっていました。
そんな木下にさらなる困難が! 日常的な学校・保育園通いだけではなく奥さまが入院中に、上の子がインフルエンザを発症しました。感染の可能性があるため、親には預けられません。そして、発熱など体調がすぐれない時は機嫌も悪く、終日抱っこの日々でした。子どもの欠席連絡、学校や保育園の先生とのやり取り、スマホのアプリでどうやるのか?や、習い事の送迎など、次々に難易度の高い要求が押し寄せてきました。
この2週間、普段仕事で味わうことのないレベルの苦労をすることになりました。 多くの方がご存じの通り、育児はただでさえ大変なところで、想定外のハプニングがたくさん押し寄せる。これらにきちんと対応しつつ、仕事までしている人って、凄すぎる。子育て最高責任者(子育てCEO)にリスペクトと、改めて、実感しました。
無事第3子誕生後もしばらくは、「妻が育休ということは思いっきり働ける!」と思っていたそうですが、2か月くらいたった後、「あれ?もしかして、僕も育休対象者では?」と気づいたのだとか。 そこで、人事を司る自分自身が、育児休業を取得することで、育児をしながらでも活躍・成長できる会社にしていくことを体現し、社内に良い影響を与えていけるのではと思い、当初は「1週間程度」の育児休業の取得を検討することになりました。
「育児休業を取りたい」と言われた上司と部下それぞれの反応は?
上司である専務執行役員の岡村は、「どうぞどうぞ(笑)」という気持ちでした。
「いっそ業務に一番影響がある時期に取ってください」と言いました。期間に関しては、「あなたが5日しか取らないんだとしたら、会社に『男性育休を5日取るべき』っていう示しになるよ。人事の担当役員として、会社にちゃんと姿勢を示すための行動規範を打ち出す方針だとしたら、従業員に取ってほしいぐらいの期間取らないと、逆の効果が出るよ。とアドバイスし、ストレスになるのも良くないので、途中で会社に来たかったら来てもいいけど、いない間は“任せっきり”にするとか、メリハリをつけたほうがいいという話をしたと思います。
部下である人事課長の和田は、「いいぞいいぞ!!人事部長として、『育児休業はこうとるべし』のお手本のようなとり方をしてもらいたい」と応援しました。
マッチョ人間の代表のような修文さんが、仕事から離れることは本当にできるんだろうか?そちらの方が不安で(笑)上の立場の人が育休をとることにより、他の方も取りやすくなるんじゃないか、当たり前の文化が作れるんじゃないか、という期待もありました。
人材開発課課長の大川は、率直「ゲゲゲゲゲゲ!」と、最初は不安に思いました。
しかし、自分に置き換えると、僕はSTEP休暇※3とか、1か月近く休みを取る権利はあるにも関わらず、5日くらいしか使ったことないんですね。なんで権利があるのに使わないかというと、僕自身が、一緒に働くみなさんを、仕事を預ける人として、頼りきれなかった部分があったのではと思います。逆に言うと、修文さんは、部のメンバーや我々を、ある意味信頼してくれたんだなと、考えが変わりました。
※3 STEP休暇とは、勤続3年ごとに5〜28日の長期休暇を取得できる当社独自の制度です。自己啓発や心身のリフレッシュを目的とし、通常の有給休暇に加えて取得できます。
みなさんの激励とアドバイスにより、1か月以上取ることを決め、休みを取る3か月前から、自身の関与度の高い業務の調整を進め、調整の難しい業務については休暇期間中であってもこの日とこの日だけは仕事する日というのを2日決めて、最終的に、全社に「育休を取ります!」と告知して、33日間の育児休業に入りました。
育休中は大変!しかし、豊かな時間でした
育休中は、本当に大変だったと語る木下。
子どもが3人いるので、1人が病気すると、みんな順番に罹っていくんです。 下の子の6か月検診で病院に連れて行った頃、上の子と真ん中の子にはインフルエンザの予防接種(子どもは2回打ちます)を順次受けさせていました。そんな中、真ん中の子から手足口病に。その後下の子も発症して、上の子も発熱してと、10日間で10回も病院に行くことになりました。 しかも、それぞれ適した病院を予約したり、問診票をWebで書いたり、具合が悪いと予防接種がダメと言われたりすることを、機嫌の悪い子たちを抱っこしながら進めることがとても大変でした。
一方で、豊かな時間だったとも。
GIB(社員旅行)で、沖縄に息子と初の二人旅に行きました。四日間もお母さんいなくて大丈夫かなと思っていたら、「全然俺大丈夫だよ。」みたいなことを言っていて、成長を感じました。 また、少し落ち着く時間があると、誰かから依頼された仕事じゃなくて、自分としてじっくり考えたいと思っていたこと(会社をこう持っていきたいなどの思いや、自分のキャリアをどう作るとか、人事の仕組み制度の設計など)を、日常でやりたいけど時間が取れずにいたので、いろいろと取り組んで、まとめていました。
執行役員が育休中の現場、実際はどうだったのか?
そして、気づいたこととは
一方、上司がいない間、現場はどうだったのでしょうか。いつもと違う環境が自身の成長につながる、ということがみなの共通の実感でした。
修文さんから「どうしますか?どうしたいですか?」と聞かれる機会が増えたように思いました。自分自身が目線を上げて仕事をするとか、普段は使わない頭を使うとか、成長の機会なのかなぁなんて思えた期間でした。
今振り返ると、今まで彼がやっていた日常の仕事の多くが、下に移管できるということだと理解するんですよね。そう考えると、彼は全く新しい時間を使って別なことを考えられるような世界にいけるってことになるので、組織として階段を上った感じがします。自分が次のステージの仕事をしていくって、大事ですね。
和田は、復帰後の木下に大きな変化を感じたそうです。
時間的制約がありながら働くことの大変さも実感されているようで、奥さまと連携し、家事育児にかける時間が増えたな、と実感しています。 加えて、意識して私たち部下を頼ってくれるようになり、一定の仕事を任せているように感じています。
ダイバーシティに関する合同研修で講演。参加企業の反応は?
ジェンダーフリーPJでは、多様性を認め合う文化醸成のために、他のダイバーシティ活動に熱心な企業との研修を積極的におこなっています。
▼研修事例
https://www.cigr.co.jp/cosmostyle/careercollege/
さる7月に、5社22名でアンコンシャスバイアス研修を実施しました。
各社がプログラムを持ち合う中、コスモスイニシアからは、木下と人事課課長の和田がリレー形式で、取得当事者の体験談と現場の反応を語りました。
木下の講演について、研修参加者から次のような感想が挙がりました。
役職者の育休が職場にとってプラスの効果になる、という内容が非常にポジティブで全世界に広めたい事例だと思いました。 上司がいない状況が部下を成長させる結果となった、と仰っていたのが印象的で、育休取得に関してはネガティブな意見も聞きますが、こういったポジティブな効果をもっと共有していけたら、組織全体の成長に繋がるのではと思いました。
「うちの会社の役員が育休をとるなんて何年後の未来かわからない」といって周りの会社の方がすごく驚いていたことが印象的でした。
育休のリアルをご本人から直接お伺いできたことが何よりも有意義でした。懇親会では木下様の過去の労働環境等も伺うこともでき、そのご経験を踏まえての現在がある点も大変興味深かったです。また、各従業員の人生観を尊重されている点がコスモスイニシア様の魅力の一つであると改めて感じました。
和田の講演については、研修参加者から次のような声が挙がりました。
1か月であれば、役員不在でも切り抜けられた(?)実体験は、組織体がしっかりしている表れであり、自分が居なければ回らない、という幻想を捨ててもらうのにとても良い内容であった。当社役員や部長たちにも共有したい。
単に、上司がいなくて大変、とか、事前の環境整理の大変さ、ということではなく、「いつもと違う環境が自分の成長につながる」という発信が素晴らしいなと思いました。育休でなくても、上司がいないことはありうると思いますし、権限移譲ならぬ代行して初めて、上位業務の視座を身に着けることができるのかな、と気づくことができました。結果、双方win-winだ、ということを自社に持ち帰ってどう共有するか、と思っています。
育休を取られたご本人の周りの方々の感想を聞く機会が無かったので、面白かったです。「一番忙しいときに育休を取って欲しい」というとても心強いアドバイスをくださる上司や、応援してくださる周囲の方々がいらっしゃる環境に、素直に羨ましいなと思いました!
こちらも改めて、当社らしさが表れた講演内容になりました。
育児休業を取って、本当に良かった
育児休業を取得することで、家族との関係性の変化や、充実した時間の獲得ができました。妻からは、育休復帰した後も「できれば毎日20時までに帰ってきてほしい」って言われるようになりました。確かに20時って食事を食べさせたり、お風呂入れたり、寝かしつけをしたりと、めちゃくちゃ忙しい時間帯なんですよね。 そういう一連の夜の忙しい時間を一緒に過ごしてもらいたいなぁと。 もしかして、今までちょっと我慢や遠慮をさせていたかもしれないなあと反省し、話し合いを良くするようになりました。 育児を分担したらこんなにスムーズで、楽だってことがお互い理解できたので、20時になるべく帰宅する志は持ちましたし、家事が楽になる仕組みやなんとなく妻に暗黙の了解でやってもらっていたことを分担しました。 また、私自身の仕事に対するスタンスや意欲にも、より良い影響があったと感じています。ずっと高いテンション・意識で働いてきたつもりですが、やはりしばらく離れることで気が付くことが多々ありました。
取得したからこそわかること。男性育休のニーズはさまざま。一概に制度を押し付けるのは乱暴。
男性育休ニーズに影響の大きな4要素を以下ととらえ、それに寄り添った人事施策を検討したいと木下は考えています。
●男性育休ニーズに影響する4つの大きな要素
・子どもの人数
・親との関係性
・子育てや仕事に対する考え方
・仕事の状況
2人目以降の出産の場合は上の子の育児と出産を同時に対応せねばならず、男性育休のニーズは高まりますし、 もちろん1人目であっても母体が弱まっている出産直後はニーズが高いと思います。 親が遠くに住んでいたり、頼りにくい場合は、男親が子育てにどう関わるべきか?や、子育てと仕事のバランスや優先順位についてどう考えるか?などは、それぞれの考え方があり、正解・不正解はないですよね。 また、お互いの仕事の状況によってニーズは変わると思います。例えば奥さんが今は仕事に全力投入したい!という時であれば、男性がより長く育休を取ることも選択肢になりますよね。
執行役員の育休を経て、改めて、取り組みたいことを尋ねると、「当社全体において、男性であっても育児をしながら活躍・成長していける会社作りを推進したい」との意欲を示しました。
育児に限らず、それぞれの従業員が人生において大事にしていること・したいことを、妥協しない・させない会社であることは「コスモスイニシアの素敵な『らしさ』の1つ」だと考えています。 自分が従業員のためにと、長時間働いていることは、見方によっては逆に効果もあるのかもしれないと育休を経て気づきました。 誰かの業務時間が短いことについて、「損だ・得だ」という見方をするのではなく、そうしたことが気にならないような環境づくりが大切だと思います。限られた時間の中でも、多様な人材が力を発揮し、チーム全体としてこれまで以上のパフォーマンスをあげられるような仕組みや工夫が必要な施策だと思います。 今回の育休は、私と家族にとって、とても良い時間となりましたし、会社としても、男女問わず、育児や家事・介護・学びなど、個々の人生において重要なことと仕事を高いレベルで両立できる会社でありたいと、決意を新たにする、貴重な機会になりました。
木下の育休取得後、それまでは、他の男性従業員の育休取得期間が数日ばかりだったのが、1か月以上取得する人が増え、また、STEP休暇を取得する人も増えたという。人事担当役員の木下の挑戦はこれからも続いていきます。