「社会的評価を伝えられた!」が一番の喜び
PROFILE
名前
武木田 航志/Koshi Takekida
部署
建築本部 西日本建築部
コスモスイニシア歴
6年
経歴
兵庫県出身。2020年に新卒入社。入社時から現在まで、建築担当業務に携わる。ものづくり好き、建築好きを生かして、分譲マンションやホテル、新規事業の立案などを担当する。田舎をこよなく愛し、勝手に「脱・都会」を掲げ、勝手に遠方から通っている。
まずは、ホッとした気持ち。私だけの物件ではなく、さまざまな方の尽力あっての物でした。正解がないなかで、積み上げたことが、社会的な評価として形になったこと、当社と仕事をして良かったと少しでも思っていただけることが何よりの喜びでした。
グッドデザイン賞受賞の喜びを話す武木田は、グッドデザイン賞の受賞という目標に向かって全体的な指揮をとるポジションで、『イニシア芦屋レジデンス』の商品企画~現場進捗に携わりました。
建物を建てるには、デザイン・設計・施工……と、各フェーズで専門的な技術が必要となります。私は各領域のプロのみなさまと連携を取り、進捗を滞りなく進める役割です。
事例にないデザイン、初めてのサービス、進捗するほど設計会社・施工会社・デザイナーさまとの打ち合わせが増える日々。
毎日なんじゃないかというぐらい現場に行き、「金額が合わない」、「スケジュールが間に合わない」に対して、「こうしたらできるのでは」と現場の方と知恵を絞り、大小さまざまな課題を解決していく繰り返しでした。
武木田の大きな役割は、「コストとスケジュールを守り、安心安全な商品をお客さまに届ける」こと。建物が完成するまで、予測のできない毎日でした。
新しいことを実現するためにはたくさんの課題があり、増える課題と戦う日々でした。正直わからないことが多いなかで、選択を迫られて悩むときもありましたが、社内外のみなさまに教えていただき、情報を集め、選択に自信が持てるまで、いろいろな可能性を探り丁寧に検討を重ねました。
『イニシア芦屋レジデンス』にシェアの概念を取り入れるというのは、デザイナーさまからの発案でした。
コミュニティの価値、住まいや地域への愛着、ものと空間を共有することによる持続可能な暮らしの実現を目指し、共同住宅におけるシェアの概念を掘り下げました。また、「シェアの概念」が浸透するように、合言葉のように「シェア」と言っていたことで、施工会社のみなさまはじめ、関係者と同じ目的を共有しながら進めることができました。
物件のコンセプトに対して関係者の意識合わせをするのも、武木田の仕事。大きな目的だけでなく、細かい部分での意識合わせを欠かさなかったからこそ、今回のビジョンであったシェアの概念が評価され、グッドデザイン賞受賞にいたりました。
モノだけじゃない。住むも安全も「シェア」
芦屋という高級住宅街に、いかにシェアの概念をリンクさせるか企画段階でじっくりと議論しました。
共有するというのは、カジュアルな行動でもあります。それを、関西随一の高級住宅街に住む方々の感覚にフィットさせるにはどうすればいいのか。ご入居者さまが求めるシェアを考えることが重要でした。
マンションのシェアスペースは、実際にはあまり使われないことも多いんです。でも居心地がよければ人が集まる。それには、デザインのよさと工夫が必要でした。
そこで『イニシア芦屋レジデンス』では、「シェアリング・パス」という新しい発想を採用。マンションのアプローチからエレベーターホールに行くまでのオープンな動線のなかに、シェアの発想を散りばめます。
〈ワークスペース・ラウンジ〉は集合住宅だからあるロビー空間を存分に使うプランニングを行った空間のシェア、〈シンク・ランドリー〉は機能のシェア、〈ブックシェルフ・シェアシェルフ〉は物のシェアなど、さまざまな「シェア」を配置しました。
シェアの空間や物を介して、同じマンションに住む人同士のつながりを生み出せればと思いました。だから、あえてシェアスペースをオープンな空間にしました
シェアアイテムは、『使用頻度は高くなく所有するほどではないが、あると便利なもの』という観点で、ご入居者さまがほんとうに使いたいものにフォーカス。選定した商品の説明や利用シーンをまとめた冊子を作成し、使ってもらうことを真剣に考えました。
たとえばキャンプ用品。芦屋の周辺地域は海川があって、アウトドアにもってこいなので、ファミリーでのキャンプシーンを想定したり、地域性をふまえてセレクトしました。 また、シェアサイクルも設置して、自転車にのって家族で近場に出かけやすくしました。マンションの駐輪場の設置数は行政にもよりますが、1住戸あたり2台程度。家族3人だと、1台分の自転車が置けず、一緒に出かけることができません。そこにニーズがあるのでは? と想像をふくらませました。
シェアで気になるのが、管理やメンテナンスの課題。そこは、みんなが気持ちよく使えるようにという発想で解決しました。
普通だったら、物を借りたら貸出ノートに書くのがわかりやすい方法ですが、芦屋の物件ではスマートじゃなさすぎる。そこで、スタイリッシュなプレートを作りました。
「BOX」側のプレートから借りたアイテムの番号札を選んで、「ROOM」側のプレートにある自分の部屋番号のフックに引っ掛けるという、単純な仕組み。シンプルかつ、スマートに、心地よく使うことができます。
オンラインなどのシステムを導入することも考えたのですが、ランニング費用がかかると入居者さまの負担になってしまうので、アナログなやり方ではあるけれど、かっこいいデザインを損なわないよう考えました。また、一目でどの部屋の人が何を借りているかがわかれば、○○さんまたキャンプ行ってるのかな? あのアイテムどうでしたか? みたいな会話のフックになることも想像しました。物を通して人の温もりがなんとなく伝わるといいですよね。
マンションの隣人がどんな人なのかを知らない、という希薄さがある昨今、近隣との行き過ぎないコミュニケーションが、暮らしやすさにつながります。
エントランスから動線上に続く「シェアリング・パス」の終点には、緑の空間をシェアする奥庭があって、井戸を掘りました。地酒の有名なエリアの近くということもあり、六甲山で磨かれた綺麗な水が流れているのではないか? と思い調査し掘ってもらいました。
この井戸は芦屋市の災害時協力井戸として登録されています。
水が出たときはほんとうにうれしくて。子どもたちが庭で手押しポンプの井戸で遊んでいる風景があるマンションなんて聞いたことがないし、素敵だなと当時の上司と想像を膨らませたことを思い返していました。
数ミリ単位でも、納得いくまで考える
マンション外壁にあしらわれた淡路瓦は挑戦的で、好きなんです。
マンションを訪れた人や、地域に住む人たちが目にする外壁には、地産材であり日本三大瓦のひとつでもある淡路瓦のブロックで作られたスクリーンを採用。実は、瓦ってそもそも外装材に使えるの?というところから始まりました。
当時の支社長、上司とデザイナーさまと共に淡路島に行き、実際に瓦が作られる工場を見学して、意匠性や耐久性、作られ方などを教えていただきました。やったことがないことは調べ、やる意味を考え、実行する。当社らしさが詰まった部分だなと思います。
1個ずつ積んでいく作業は、ほんとうに大変だったと言います。
この物件の象徴的な部分でもあるので、妥協は許されません。淡路瓦という素材が持つ個体差を積みながら一つひとつ現場で確認して、ずれているところは全部手で押して直し、微調整を重ねていただきました。全部積み上がってライトアップされた瞬間は、全員から歓声が上がりました。
各領域のプロのみなさまと細かな連携を取りつつ、課題には都度しなやかな対応をすることで、「チームとしてのチカラ」を発揮する。「イニシア芦屋レジデンス」の建設においては、そんな局面が随所にあったそうです。
『イニシア芦屋レジデンス』は線路沿いに建っているので、通勤時に建物を見るんです。その度に奮闘した日々を思い出します。まだ更地だったときにデザイナーさま、設計者さまに「この物件でグッドデザイン賞を取りたいんです!」と話したこと、着工後、上司に「グッドデザイン賞、狙えます!」と話したことが実現でき、物件に関わったみなさまにちょっとでも恩返しができたのかなと思います。
極論すれば、土地とお金があって、図面を書く設計士さんがいて、作ってくださる施工者さんがいれば、建物は建ちます。
そこに私たちがいる意味は、お客さまに一番良い商品を届けること、当社が一歩先の価値を創り出すこと、関係者のみなさまの記憶に残る仕事にすることだと思っています。そのために大きな目標を掲げ、妥協せずに何かにつながると信じて細かい積み上げをしています。
コスモスイニシアの行動指針の一つ、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
この言葉の通り、芦屋で得た沢山の機会を支えに、これからも全員がうれしいプロジェクトの推進と、自身の思い出になるような仕事をしたいです。