目指す“ESG”は「イゴコチ・スーパー・グッド」がちょうどいい?コスモスイニシアの不動産ESGプロジェクト【前編】

目指す“ESG”は「イゴコチ・スーパー・グッド」がちょうどいい?コスモスイニシアの不動産ESGプロジェクト【前編】

企業の長期的な成長のために、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する「ESG経営」に積極的に取り組む企業が増えるなか、コスモスイニシアでも2024年3月期から当期純利益の2%程度を投資予算枠とし、「次世代を担う若者や子どもの健やかな成長に貢献する」取り組み「Next Generation Challenge(NGC)」に継続的に取り組んでいます。 ESGには、「よく分からない」「利益につながるの?」という意見もつきもの。2025年4月に発足したサステナビリティ推進室(ESG プロジェクトとサステナビリティ推進準備室を統合)の前身である「ESGプロジェクト」では、全社のESGへの取り組み の推進と各部署の取り組み支援を行ってきました。その一環として、2025年2月に株式会社トリニティ・深澤秀彦さんによる社内セミナーを実施。先進的企業におけるESGへの取り組み事例から、ビジネスとESGの連携について知る機会となりました。

PROFILE

深澤 秀彦/Hidehiko Fukazawa

名前

深澤 秀彦/Hidehiko Fukazawa

経歴

トリニティ株式会社取締役
大手自動車会社傘下のデザインマネジメント・コンサルティング会社を経てトリニティに参画。グローバルでのデザインリサーチ、デザイン戦略立案、コンセプト/デザイン開発、デザイン経営の導入支援等、さまざまなプロジェクトを担当。テーマや課題に応じ、多種多様なエキスパートとチームを編成、プロジェクトを指揮している。

PROFILE

井上 恭男/Yasuo Inoue

名前

井上 恭男/Yasuo Inoue

部署

建築本部 建築一部 兼 経営管理本部 サスティナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

18年

経歴

東京都出身。戸建注文住宅の設計職を経て2007年に中途入社。戸建分譲事業を中心に携わる。2023年10月からESGプロジェクトに参画し、現在サスティナビリティ推進室にて社内啓蒙チームを率いる。

PROFILE

木本 麻衣子/Maiko Kimoto

名前

木本 麻衣子/Maiko Kimoto

部署

企画開発本部 統括部 兼 経営管理本部 サステナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

5年

経歴

大阪府出身。2021年に新卒入社。入社から3年間は、賃貸事業部にてサブリース事業に従事し、オーナーさまの窓口業務を経験。2024年に企画開発本部に異動し、仕入れ部門の計数管理を担当。入社2年目からESG推進プロジェクトに参加し、社内向けの情報発信・イベント開催にも携わる。

PROFILE

向井 優里子/Yuriko Mukai

名前

向井 優里子/Yuriko Mukai

部署

賃貸事業部 住宅運営一部 兼 経営管理本部 サステナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

12年

経歴

東京都出身。不動産売買営業職、司法書士事務所勤務を経て2014年に中途入社。賃貸住宅の申込受付業務、統括部門にて計数管理業務を担当後2024年に現在の部署に所属。宅地建物取引士、簿記2級などの資格を保有。2度の産育休を取得後復職。

PROFILE

向山 直登/Naoto Mukoyama

名前

向山 直登/Naoto Mukoyama

部署

建築本部 建築一部 兼 経営管理本部 サステナビリティ推進室

コスモスイニシア歴

8年

経歴

静岡県出身。2018年に新卒入社。入社から商品企画課で設計監理や商品企画に携わる。2020年から2024年度までトリニティ深澤様と協業し商品開発プロジェクトを継続実施。2024年からサステナビリティ推進室兼務となり、全社のESG経営方針の推進にも携わる。

従業員のESGリテラシーを
上げるために

スタートは、ESGってよくわからないけど、できることをやってみようというところからでした。

木本

社内で使用しているコミュニケーションツールMicrosoft Teams(以下、Teams)内に、ESGプロジェクトで「【公式】ESGちゃんねる(現:サステナ!ちゃんねる)」を開設しました。ESGに関わるトピックスを発信し、発信側の満足だけで終わらないようにアンケート調査を定期的に行って、常に従業員との意識合わせを行っています。 1年前と比べると、解答率が2倍になりました。これまでESGに取り組んだことがあるかという問いに、具体的に回答できる人もどんどん増えています。

井上

ESGメンバーをはじめ、社内啓蒙を応援してくれる方が増えてきました。

井上、木本が言うように、社内の気運は右肩上がりではあるものの、Teamsを「読んでいる」と回答したのは、アンケート回答者の45%にとどまっているという現状もありました。

木本

ESGへの理解を深めつつあっても、会社の取り組みや自分の業務とESGが結びついていることを実感できていない従業員が過半数です。

向井

そういった現状を受け、ESGプロジェクトでは、なるべく従業員の興味がありそうな身近なテーマで情報を発信したり、イベントを開催したりしてきました。例えば、2024年11月の従業員向け50周年イベントではペットボトルキャップ回収、2025年2月にはそなエリア東京での防災体験学習を企画、実施しました。

木本

ESGに興味関心がない従業員を、いかに巻き込むかがポイントなのかなと思います。

そこで行われたのが、トリニティ株式会社・取締役である深澤秀彦さんを登壇者に迎えたセミナーでした。同社は、「社会やビジネスにおける課題を発見し、未来をデザインすること」を掲げ、大手のメーカーや製造業をメインクライアントにデザインコンサルティング業を行っています。

井上

トリニティさんには、もとは建築本部でデザイン関連でのコンサル業務をお願いしていました。その一環であるESGに関する調査報告を部署内だけに留めておくのはもったいないので、全従業員に向けての講義をお願いしたというわけです。

さあ、不動産ではなにができる?

世界を見据えている企業の多くは、すでに事業戦略の中心にESGを位置づけています。扱う商材は違っても、事例を知ることで不動産・建設業界におけるESGのヒントになる、という考えのもと、セミナーではグローバルにESG事業を展開している企業の例をご紹介いただきました。

トリニティ
深澤さん

他社事例を紹介するというセミナー趣旨は、コスモスイニシアさんからのリクエストで、なかでもESGの観点で積極的な取り組みを行う企業をピックアップしました。こういったセミナーの相談はここ数年とても増えてきていて、興味深く取り組ませていただきました。

紹介されたのは、「Nestle」「P&G」「Johnson & Johnson」「BMW」「Nike」「LEGO」「IKEA」「Coca-Cola Japan」「Dyson」といった、一度はその名を聞いたことがある、生活に身近な9企業の取り組み。

トリニティ
深澤さん

これらの事例からダイレクトに取り込めることは少ないと思いますが、ブランディング、製品開発、サプライチェーンにおいては参考になる要素があると思います。

井上

自社プロダクトと親和性のある事例もありました。こうやってアンテナを張ることがアイデアをキャッチすることにつながるので、全従業員のアンテナが立っている状態を目指して、コスモスイニシアらしいESG活動を推進していきたいです。

特に反響があったのは、代替可能な素材がなく廃止できないというコンタクトレンズにおいてリサイクル・プログラムを導入した「Johnson & Johnson」の事例や、飲み終わったら絞ってつぶせるペットボトルを導入した「Coca-Cola Japan」の事例でした。

井上

オンラインでも参加できるようにしたため、業務の合間に100人ぐらいが参加してくれました。まずは「ESGに触れる」という目的は達成できたのかなと思っています。

不動産・建設業界との結びつきが深い事例もいくつか紹介されました。オランダ・アムステルダム、ドイツ・ハンブルグ、アメリカ・ポートランドのエリア開発の事例や、「the Commons」「狭山台団地」「アフォーダブルハウジング」「Factory OS」「Wayhome」などの住宅開発の事例です。

トリニティ
深澤さん

重要なのは、どう事業に生かすか。今回のセミナーが学びで終わらず、事業化のヒントや道筋を見つけるきっかけになるといいなと思います。

井上

新しいアイデアを学び、それがさらなる新しいアイデアを生むということがあると思います。「気づき」のタッチポイントは、これからも増やしていけたらいいですね。

「自分ごと」軸でESGを考えてみる

当セミナーで従業員の関心が最も高かったのが、「アフォーダブルハウジング」のトピック。近年、世界のいたる国や都市で行われている取り組みで、低〜中所得者層に向けた「手ごろな価格で居住できる住宅」を供給するというものです。

井上

このアフォーダブルハウジングに対して、「社会課題には有効でも、事業として成り立つのだろうか?」「ファミリーで住まうという住宅の常識自体が変わりつつあるのではないか」など、当社で取り組めそうかという視点での熱量の高い意見が飛び交いました。

「ESGは事業化しようとするとハードルが上がる」という課題に対し、社内のESG関連事業に幅広く携わっている向山はこう語ります。

向山

世の中にはいろんな事業、商品がありますが、極論は「居心地のよさを提供する」ことが最重要で、シンプルにユーザーが「居心地がいい」と感じられる商品が、企業への評価につながる。ESG事業においてもその軸をぶらさず、追求することが正解なのかなと思ったり…… “IGOKOCHI・SUPER・GOOD”で、ESGみたいな。それぐらいでいいかもしれないですね。笑

この一言で、ESG事業の本筋がわかりやすく浮き彫りに。社内啓蒙や社外セミナーによって、少しずつですが着実に前進している、コスモスイニシアのESG。【後編】では「不動産×ESG」を深掘りします。

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