ー 環境と住宅の関係性について ー
難波：いままでは、地球で消費されているエネルギーの大部分は、工場や物をつくる生産面に大きな割合を占められていたんですが、技術の発達により、だんだん効率も良くなってきました。一方で、生活する人たちの消費エネルギーの割合が大きくなって、その中でも住宅が大きな割合を占めてきたのではないのかと思います。そういう傾向が出てきたので、政府としても住宅の省エネというのが一つのテーマとして上がってきている。住宅の方も性能が上がっているので、昔のように生活すれば消費を抑えられるかもしれないけれど、やはり建物全体、地域全体でどうやって消費エネルギーを抑えていくのか、というテーマが浮かび上がってきますよね。快適さや生活レベルを下げて省エネを実現するという方向ももちろんあるけれど、基本的には、家のつくりと工夫によって実現すべき課題です。デベロッパーは大多数の住宅を販売しているわけですから、それは解決しなくてはいけない問題かなと思います。
南：デベロッパーは、自身で物をつくる職域ではないんですけど、建物ができあがるまでにものすごい人とエネルギーが使われています。実際に住み始めてからもランニングコストも含めて、常に生産よりも消費というものに関っている業態ですので、我々の中では、まず、その状態をしっかりと認識していくことが大切だと改めて思います。あとは地球環境に関して、我々自身も消費者の１人として感じていることなんですけども、理解は出来るけど遠い話のように感じる。先生がおっしゃっていたように、昔の生活レベルにダウンサイジングできるかというと、そうではないですし。どんどんハードや技術が発達したことで、忘れられている快適さというものをもう少し住宅の中に、アナログ的な良さを戻せるようなことが見つけられたらいいな、というふうには感じます。
難波：僕は、グッドデザイン賞の審査に参加させていただいているんですけど、グッドデザイン賞というのは住まいの底上げをするというのが目的で、突出した提案をしろというものではないんです。ここで、住まいを提供している人たちには4種類あって、デベロッパーが分譲マンション、戸建住宅はハウスメーカー、地域の大工さんや建築家、そして最近この中に賃貸マンションというのが入ってきた。そのなかで、分譲マンションのデベロッパーってすごく保守的なんです。もちろんいろいろな会社があるけれど、もう少し社会的な使命感を持ってくれたらなといつも感じています。その意味で、コスモスイニシアは他社よりもちょっと頑張っていて、それがあるから僕は（コスモスイニシアと）やっていけるのかなと思っています。
南：会社のアイデンティティーでもある「一生涯のおつきあい」という言葉は、住んでいただいて、将来的には別の方に移り住んでいただいて、住み続けられたときに初めて価値がでてくるものだと思います。あと、会社としては、消費材としての建物を何十年という単位で提供しているので、良いものも悪いものでも残ってしまう。経済活動ですので、もちろん継続的に、社会的にちょっとでも住まいの進化というものを目指しています。
難波：研究の一貫として、新しいことをやりたいんですけど、いままではライフスタイルとか、新しい材料とか、新奇な構造の開発とか、そういうテーマが多かった。それが、ここのところ、環境という条件が重要になってきたんです。住宅を設計して、プランもできて、形もできて、さあ暖房をどうするかとか、そういう順番が今までの設計の考え方だけど、環境をまず真っ先に、優先的に考えなくてはいけないという社会的な状況がでてきたように思います。研究者としては、今までにない新しい条件なので、環境を優先的に考えるとどういう住宅ができるか、逆に新しい建築が生まれる可能性が多いんじゃないかなという視点もあります。形をいじりまわすというよりは、全く新しい環境の条件から違った表現や空間ができるのかなという期待があります。新しい建築を生み出すために、環境というテーマを利用するという視点ですね。今回のコスモスイニシアさんとの共同研究もそういう視点で取り組めればなと思っていたんです。
建築家難波 和彦Namba Kazuhiko
1947年 大阪府生まれ
1969年 東京大学建築学科卒業
1974年 東京大学大学院博士課程修了
1977年 1級建築士事務所 界工作舎 設立
1996年 株式会社 難波和彦＋界工作舎代表取締役
2000年 大阪市立大学大学院 建築学専攻 教授
2003年 東京大学大学院 建築学専攻 教授（2010年退官）
作品に「箱の家シリーズ」など多数
コスモスイニシア
建築監理部
一級建築士事務所南 光浩Minami Mitsuhiro
1966年生まれ
早稲田大学理工学部建築学科卒業
マンション・戸建て住宅の商品開発・設計に携わる
