「STYLE」とは、住まいを彩る「色」や「素材感」の心地よいまとまり。

【色部】 住まいの快適さや心地よさって、どんなことが影響すると思いますか?
【秋桜】 お部屋の広さとか、動線の使いやすさなどが思い浮かびますが。
【色部】 はい、もちろんそれらも大事です。でも、意外に大きな影響与えるのが、お部屋全体の雰囲気なんです。その雰囲気を形成する各部の色や素材感を、あるテーマや世界観のもとでまとめたものを、私たちは「STYLE」と呼んで研究を続けています。
【秋桜】 具体的には、どのようなことが「STYLE」の要素になるんですか?
【色部】 「STYLE」を構成する要素は、カラースキーム・家具・照明・小物があります。さらに、ホームデコレーションという、お客さまの好みや個性を反映できるサービスも組み合わせています。
【秋桜】 カラースキームというのは何ですか?
【色部】 「色彩計画」のことです。色には心理的、生理的、物理的な作用があります。そうした性質を利用しながら配色を行ない、目的やテーマに合ったまとまりのある雰囲気や印象を醸成します。
例えば、どんな家にも必ずあるクロスやフローリング、キッチン面材などをベースの色としてコーディネートします。「STYLE」は、感性に響くもので、住まう人が心地よく暮らすために、大事な要素。住まいの機能面だけではなく、「STYLE」も深く掘り下げることで、より新鮮で快適な、唯一無二の空間をつくりあげることができるはずです。

年単位の時間をかけ、時代の流れを読んで、一歩先の「STYLE」のご提案へ。

【秋桜】 「STYLE」は、どのようにして開発されるのでしょうか?
【色部】 よく誤解されるのですが、色や素材を選ぶことだけが私たちの仕事ではありません。それよりも、世の中の流れや、人々の気分や思考がこれからどうなっていくのか、そういうことに想像をめぐらせています。そうしないと、これから暮らしを始められる方に、新鮮で新しい住まいを提供することはできません。
ですから、私たちの仕事は、社会や市場の動向を調査・分析することから始まります。そこから、これからの時代にマッチした「STYLE」の方向性を模索します。
次に、この方向性にマッチする色調や素材感を考えて、実際の素材や建具などで検証を重ねます。場合によっては、モックアップ(実物大模型)をつくったり、塗装することもあります。
また、安全性やメンテナンス性の検証も欠かせません。その際は当社の品質管理部門も加わり、もしも品質に不安があれば検討をし直します。
こうしたプロセスを経て「STYLE」が生まれます。
【秋桜】 想像以上の作業ですね!どれだけの人と時間がかかるのかしら、、?
【色部】 「STYLE」開発の関係者は、建築・販売・商品企画担当などが集められ、市場の調査・検証には専門の協力会社の力も借ります。調査分析から「STYLE」が完成し、実際の住まいに反映されるまで1年ほど必要な大作業なんです。さらに、つねに一歩先を進み続けるために、3~4年ごとに更新しています。

【色部】 1つ目の「時代の一歩先を行く新鮮さや心が躍る提案」は、今まで見たことが無いようなもの、センスを感じさせるもの、ワクワクした気持ちにさせるものを追求することです。
だからといって、表面的なデザインだけに囚われず、快適さや、安全性やメンテナンスのことも考えた実用性の確保が大前提です。それが、2つ目の「単なる最先端・おしゃれさを求めるのではなく、あくまでも住まう快適さを追求」すること。暮らし始めた時だけではなく、暮らし続けても色あせることのないデザインの追求です。
3つ目の「最後にお客さま自身が手を加える“余白”を残す」というのは、「STYLE」というものは「お仕着せ」ではなく、住まう方の個性が加えられて完成するという考えを表しています。コスモスイニシア では「ホームデコレーション」というカスタマイズメニューをご用意しており、ここで住まう方の好みを加えることができるようになっています。
このようなことを心がけることで、調査から得られた時代性や目指すべき方向性をスタッフがしっかりと共有し、「一歩先の価値」を生み出すことにつながっています。

❶ 数十種類の色と質感を実際に並べて選ぶ「ベースクロス」の例

【色部】 住まいの中の大きな面積を占めるベースクロスは、空間の印象に大きく関わるため選定にも気を使います。作業のポイントは「色味」と「質感」です。色味について、例えば明るさが際立つような純白系ではなく、落ち着きやセンスを表現する場合は、意図的にほんのりとグレーが入ったような色味を用います。このような時には、グレーの加減が非常に重要になります。
さらに、こうして選ばれた色味を最も引き立ててくれる質感の素材が選ばれます。
かなり繊細な作業で、微妙に異なるサンプルをいくつも並べて検証します。

❷ 色や素材に加えて、形やディテールにも気を遣う「扉」の例

【色部】 「STYLE」の開発のなかでも、選定までの作業数が多いのが「扉」です。その理由は、扉には木やガラスといった複数の素材が使用されており、それぞれの色やデザインの組みわせを検証する必要があるためです。
【秋桜】 具体的にはどんな作業ですか?
【色部】 ちょっと長くなりますが、、。「木目の有無の検証」「色味の検証(明度彩度は?)」「扉自体のデザイン(ガラス部の大きさは?アクセントとなるモールディングの有無は?それぞれのサイズやバランスは?)」「ガラスの選定(すりガラスか透明か?格子の有無は?)」等々、、、
【秋桜】 そんなにあるんですか!?
【色部】 まだまだあるのですが(笑)扉自体のデザインだけでなく、床のフローリングやクロスとの相性も確認しなくてはなりません。さらに、実際に試作品を作り、部屋に設置した環境をシミュレーションして、照明の当たり具合による色の変化なども考慮するんですよ。
【秋桜】 ちょっと想像を超えています、、、!

❸ 理想の「STYLE」にこだわり、住まいの仕様も変更した例

【色部】 これは「STYLE」の開発とは少し違うかもしれませんが、「STYLE」の世界観を活かすために、住まいの仕様を変更するケースもあります。
【秋桜】 そこまで「STYLE」にこだわるんですか?
【色部】 心地よさの根本の一つが「STYLE」にあると思いますので、できる限りのことをやります。これは玄関のかまちの例です。基本はステンレスですが、「STYLE」によってはタイルに変更しています。おさまり具合のシミュレーションや安全性を確認するために、実物大のモックアップも作成するんですよ。

❹ 一つの素材にこだわって、「STYLE」全体を見直した例

【色部】 「STYLE」の開発過程において、時折起こることですが、ある部分の素材やデザインを活かすために、「STYLE」全体を見直すことがあります。
例えば、ベースクロスの選定において、少しグレーがかった特注のクロスが選ばれたことがありました。これが魅力的なクロスだったのですが、すでに決定していた建具や収納扉の色味ではどうしても「STYLE」が成立しなかったのです。そこで、他の色味を全て変更したことがあります。
【秋桜】 個々のデザインではなく、つねに全体を俯瞰した作業なんですね。

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