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2014.7.1

建築家・永山祐子さんに聞く、これからの住まい方

「豊島横尾館」や「丘のある家」をはじめ、公共施設から住宅、
店舗など幅広い活躍を続ける建築家・永山祐子さん。
その永山さんに、コスモスイニシアの商品企画へのご意見とともに、
これからの住まい方についてお話を伺いました。
聞き手はコスモスイニシアで商品企画を担当する保川真由佳です。

デザイン情報誌AXIS(vol.170/2014年7月1日発行)に掲載された内容を
再編集したものです。

AXISオフィシャルサイトjiku
www.axisjiku.com

大切なのは時間と空間の共有

保川

コスモスイニシアのメインブランド「INITIA」では、住む人の時間の過ごし方に重点を置いた新しい住宅づくりに取り組んでいます。集合住宅では決まりきった間取り図が住まいの価値を決めてしまいがちですが、そうではなく、どれだけ居心地良く、もっと自分たちの感性に響くか。室内をフレキシブルにしたり、目障りな“でっぱり”をなくしたり、住む人の自由になる四角い空間を提案する「やさしいシカクプロジェクト」も始めています。

永山

住宅にまつわる大切な部分を抽出して、変えていこうとしていますね。マンション設計で気になっていた部分にもアタックしていて。特に収納を見直しているところがいいなと思いました。固定された収納は部屋のレイアウトを制限するので、家族が共有できるものを1カ所でまとめるような住み方は理にかなっていると、私も常々感じています。

保川

それはリサーチでも評価が高かった点です。“個”よりも“シェア”という考え方が強い今の若い世代に支持されたのかもしれません。

永山

INITIAの住宅を選ぶ世代には小さな子供を持つ若い家族も多いと思いますが、その世代は特に、区切らず大きく見渡せる部屋を求めているようです。家族が互いに目の届く範囲で過ごすことが重要になっている。私自身、幼い子供がふたりいる4世代同居なので、日々の生活ではいかに一緒にいられるか、ということを実感しています。例えば、毎日一緒にご飯を食べるというより、子供は先に夕食を済ませてしまうけれど、その後に帰宅した父親は子供が寝る支度をしている傍らで夕食をとりながら、そこにコミュニケーションが生まれるというような。つまり、行為・行動よりも、時間と空間を共有することが家族には大切なんです。その意味で、INITIAが掲げる「オープン」というコンセプトは、空間が時間のズレや生活のズレをつないでくれるものになりそうですね。これから重要になるキーワードだと思います。

永山祐子/1975年東京生まれ。昭和女子大学生活美学科卒業後、98~2002年青木淳建築計画事務所勤務。02年永山祐子建築設計設立。06年~12年京都精華大学、昭和女子大学、お茶の水女子大学、名古屋工業大学などで非常勤講師を務める。主な作品に「LOUIS VUITTON 京都大丸店」「丘のある家」「豊島横尾館」など。受賞多数。

 公式サイトはこちら

自分スタイルの世代へ

保川

永山さんに依頼する施主の方はいかがでしょうか。感性も変わってきていますか?

永山

住宅はファッションの延長にあるような気がします。日本人の特に若い世代はファッションへの美意識が高いですが、そのおしゃれな人たちが次第に家具やインテリアに興味を持ちはじめ、良い住空間を模索するようになってきています。選び抜いた家具を置くんだったら、カッコいい家がいい、と。先日完成した店舗兼住宅の施主はまさにそのタイプでした。世界中の名作家具やアート作品を所有していて、食器にもこだわりがある。でもそれを並べる空間がないからと全部倉庫にしまっていたんです。コレクションを使える生活空間が欲しいという要望でした。家が完成して家具が並べば当然、スッキリ感はなくなりますが、お気に入りの家具を並べた温かみのある生活感が出てきますよね。ゴチャゴチャしているというよりも、好きな物に囲まれて自由に住んでいる幸せが伝わってきます。
 そんな風に、置きたい家具や並べたい小物が決まっている、そういう楽しみを持っている世代が増えています。

永山祐子建築設計「勝田台のいえ」 Photo by Daici Ano

保川

きれいに収納してしまうのではなく、見せたいところは見せる。INITIAのコンセプト、「フィーリング」と「メリハリ」のある住まいにも共通する感覚ですね。INITIAの空間は、あらゆる感性を受け入れて、ものが多くても一体感があるような、「見せる楽しさ」を大切にしています。建築そのものは、あまり主張しないほうが良いのでしょうか?

永山

主張しないようにとは思っていませんが、シンプルな仕上げになることも多いのです。どんな家具を置いても、あるいはどんな家具でも受け止められるような住空間は大切でしょうね。選んだ物にはすべて、その人の個性が表れるはず。だから、そういった物をうまく展開できる場所だと自然にその人らしさが出てくると思います。

保川

そうですね。モデルルームのようにキレイに住むのではなくて、選び抜いた物に囲まれて楽しく暮らせる住空間を求める感覚が、最近の若い世代には共通しているようです。

永山祐子建築設計「勝田台のいえ」 Photo by Daici Ano