「できなくて泣いた」から69億円貢献で社長賞へ。40代子育てママ、組織を強くするキャリア志向

「できなくて泣いた」から69億円貢献で社長賞へ。40代子育てママ、組織を強くするキャリア志向

不動産業界に“男性社会”のイメージを持つ人は少なくありません。けれども、コスモスイニシアの全従業員における女性割合は、なんと56%(2023年実績)。労働力と成果が比例していた時代からワークバランスは変化しました。
7年前には不動産取扱高で約69億円の取引に貢献し、社長賞を受賞したソリューション部担当部長の金丸晃子は、中学2年生と小学1年生の2人の子育てに奮闘する毎日を過ごしています。そんな彼女も「一時は『出産のせいで』と恨みつらみを募らせた」と、キャリアを阻む壁にもがいてきたのです。
「バリバリの営業職」の女性マネージャーが当事者意識から考える、女性社員が輝ける場作りのための秘策とは? 今を生きる女性社員たちからリアルな本音が見えてきました。

PROFILE

金丸 晃子/Akiko Kanamaru

名前

金丸 晃子/Akiko Kanamaru

部署

ソリューション事業部 ソリューション部

コスモスイニシア歴

25年

経歴

福岡県出身。2000年リクルートコスモス(当社)新卒入社。分譲マンション販売、業務を経て、2011年産休。復帰後はソリューション事業部に異動。秘書と計数管理を担当するが、数字とエクセルが壊滅的にできず8カ月で不動産健康診断部に異動。賃貸オーナー向けの御用聞きサービスの営業に従事。分譲マンション事業で培ったお客さま対応力をソリューション事業部で生かし、2017年不動産取り扱い高合計69億の取引のきっかけを作り社長賞を受賞。同年第2子出産。2019年ソリューション事業部に復帰。1級FP技能士。

「出産のせいで」途切れたキャリアと焦り

ソリューション事業部ソリューション部担当部長の金丸は、大学卒業後にコスモスイニシアに入社してから25年のベテラン社員です。さらに子どもを育てながら社長賞を受賞した経験も——そんなキャリアだけを聞くと、バリバリ働くスーパーウーマンを想像するかもしれません。
しかし、結婚や出産を機に、離職や営業職を離れていったかつての先輩がたと同じように、金丸もその壁にぶつかってきました。どうやったら自分らしいキャリアを積んでいけるのか……女性が働くことが一般的ないま、多くの人を悩ませるキャリア形成について金丸も悩んだといいます。

第一子出産後に異動になったんです。出産前は新築分譲事業でお客さまに直接お会いする仕事で好きだったのですが、育児休業から復帰した後はそれまでやったことのない内勤の仕事で。育児と両立しながら新たに学ぶことも多くて大変でした。年次はけっこう上だったのになにも役に立たなかったんです。焦る気持ちはあっても、子どもがすぐ熱を出して仕事に集中できなかったり……、仕事中に席で泣きながらパソコンを打っていました。

当時の金丸の頭に思い浮かんだのは「出産のせいで」という言葉。子どもはかわいいのに、そんなことを思う自分にも嫌気がさしたそうです。

社内結婚だった夫が仕事の飲み会に参加すると聞くと、自分だけ飲みに行ってずるい!って、その時は本当に心の余裕がなくて、ねたみそねみで当たり散らしてました。

時間の制限が新たなキャリアの転機に

本音を言えば、ずっとそれまでやってきた接客の仕事がしたかったんです。いや、接客の仕事しかできないと思っていました。

そんな金丸にとって内勤の仕事から営業への異動は転機、会社は金丸の適性を見出していたのかもしれません。

異動先は『コスモスイニシアのファンをつくること』をミッションにした新部署で、住宅分譲とは大きく変わり、賃貸経営をされる不動産オーナー向けのソリューションを提供する無料会員制のコンサルティングサービス「不動産健康診断サービス」の会員からのお問い合わせにお応えする業務でした。

具体的な商品を扱う部署とは違い、どこにも属さない中立な部署として、顧客のあらゆるニーズに応えるためには、不動産の幅広い知識や経験が要されました。

この部署では案件化すれば他部署の営業と並走するので、子育てしながら営業ができるから、自分らしいキャリアをつくれるかもしれないと思いました。
意識していたのは、時短勤務(9時~16時)のなかで、どうやったら営業として圧倒的な成果を出せるかということ。そのために、ひとつの取引の単価がより大きくなるよう事業規模の大きな対象者を集めたセミナーを実施したこともありました。

地道なことを粘り強くやり切った結果、1年で、合計69億円もの大型取引に貢献。社長賞の受賞につながりました。しかも、そのときは時間の読めない不妊治療の後。まさに妊娠していた時期での受賞だったのです。

若手が辞めていくのはあまりに悲しくて

ときに泣き、ときに家族に八つ当たりしながら(!)金丸が粘り強くキャリアを重ねていった一方で、周囲を見渡すと他の方法を選択していく人たちもいました。

若手が辞めてしまうことが続いたんですよね。それがあまりにも悲しくて。『いまの時代、転職は普通』ととらえる選択肢もあるとは思いましたけど、そういって流してすませていいのかどうかすごく悩みました。

金丸は自身が40代の女性社員であることを見つめ直し、この属性だからできることがあるのではと考え始めました。

それまで若手が挑戦しやすい環境を重視してきたことが、かえって壮年層の居心地を悪くしたり、遠慮を生んでいる可能性に気づいたんです。壮年がイキイキしていない会社は、きっと若手にとっても魅力的に映りませんよね。そこで、40代以上の女性総合職がどんなキャリア志向を持っているのかを発信し合える環境づくりが必要だと思いました。

こうして、金丸のなかで「40代以上の女性総合職向け部門横断育成プロジェクト」の構想が生まれ、人事課長に相談することにしました。
コスモスイニシアには創業当時から「男女平等が当たり前」の気質がある一方で、女性社員は多いものの、管理職における女性比率は会社として満足いくものではないという実態も。30代、40代とライフステージが変化していくにつれて、営業として活躍する女性比率が低くなることも課題でした。

もっと40代以上の女性社員のイキイキとした働き方を見せていって女性管理職が増えればいいですし。ライフステージが変わっても営業として活躍する女性が増えるかもしれませんよね。

もともとコスモスイニシアでは、2014年から「ジェンダーやライフステージにかかわらず安心してチャレンジできる組織の土台作り」として働き方改革を推進、2023年には次のステージとして「各従業員が年齢・性別・キャリアなどに関係なく自らの強みを発揮して活躍できる会社」を目指し、“コスモスイニシアらしい”ジェンダーフリーを考えるプロジェクトを発足しました。

私が考えていたことと、会社のプロジェクトで検討してきたことが合致して、2024年10月に新プロジェクトがスタートしました。それが〈さゆりキャリアカレッジ~season1 私が『つくる』私のキャリア~〉と題されたプロジェクトで、私もプロジェクトメンバーの一員になりました。

「さゆり」とは同社の取締役専務執行役員経営管理本部長である岡村さゆりさんのこと。女性役員として活躍する岡村さゆりさんを学長に、同プロジェクトでは、ロールモデル・キャリアモデルとなるさまざまな社内外ゲスト講師による講義やパネルディスカッション、参加者同士のワークなどが行われます。

本音で語られる場から、多様性の尊重へ

「第2回のさゆりキャリアカレッジ」では、EM職・営業職のリアルというテーマで3名の登壇者から自身のキャリアが語られ、金丸も登壇しました。

もともときちんと組まれていたエクセルの式を数字が合わないからって手打ちしてしまったことがあり、そのエクセルを作った人から『これ誰がやったの⁉︎』って怒られたりして。仕事をしていくうえで、向いていないこと、できないことはたくさんあります。

金丸を筆頭に、登壇者の面々がキャリアを語るエピソードの、「もうやめようかなと思う瞬間も……」「『金丸さんはキャリアを諦めているかと思った』と言われて、私は管理職向いてないと思った」「やさぐれちゃったんですよね」という赤裸々な言葉に、ときに会場がドッと沸き、ときにしんみりとした雰囲気になりました。
「スーパーウーマンだと思っていた先輩だけど、みんな悩みながら働いていることがわかって、なんだか安心しました」。セミナーの後のグループディスカッションで、ある女性社員がそんな声をもらしていました。
その場に漂っていた思いは「共感」。コスモスイニシアの女性社員のみならず、すべての働く女性がなにがしか心に響くストーリーが「さゆりキャリアカレッジ」にありました。

そういった悩みを誰かに話せる場や雰囲気が大事だと思っています。

登壇を終えた金丸に、女性活躍を推進するうえで重要だと思うことを尋ねてみると、「多様性の尊重」と「どのキャリアも認め合う環境づくり」を挙げてくれました。

私は実は、2回結婚しています。不妊治療を経て子育てもしているし、失敗もたくさんしている私だからこそ、同じような境遇の方に対して経験を活かした話ができるし、役に立てることがあります。営業職として自分の可能性をもっと広げていきたいし、働きながら、いろいろなライフステージの方が輝ける場も作りたいと思っています。どんなキャリアも認め合える、みんなでキラキラできる会社をこれからも目指していきます。

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