不動産DXの“船頭役”は建築のプロ
PROFILE
名前
亀田 孝彦/Takahiko Kameda
部署
デジタル推進部門 デジタル推進部
コスモスイニシア歴
23年
経歴
青森県出身。高校時代は函館、大学/大学院時代を仙台で過ごし、就職を機に上京。 2002年リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。当時1年目は全員営業職についた後、学生時代に建築関係を学んだ者は2年目に1年間のゼネコン現場(当社開発物件)出向を経験。外装工事計画、測量機材(トランシット、レベル)を使った墨だしができるようになる。一級建築士、DXビジネス検定プロフェッショナルなどの資格を持つ。
社内でもほんとにいろいろなことを経験しています。『一級建築士の資格を持っていて、賃貸物件管理受託の営業を担当しているの?』と驚かれたこともありましたね。
デジタル推進部の部長であり、コスモスイニシアのIT、デジタル推進に関する業務全般のマネジメントを担当する亀田孝彦は、そう笑います。 多くの企業でいま、デジタル化を進めるなかで人材不足が大きな課題になっています。ただしその課題は、IT系人材はいないか……という頭で眺めているからかも? いまでこそデジタル推進部の部長である亀田ですが、入社当初は投資用不動産開発の建築を担当していました。そこからさらに、賃貸事業部の仕入れや、ビル運営全般に関わる部署へと異動。ユニークなキャリアをたどってきています。
賃貸ビルを持っているオーナーの方々とは、密接な付き合いをさせてもらいました。入社当初は建築担当で、とくに投資用不動産ファンドなどを相手にしていて建築関連法規の知識にはたけていました。一級建築士の資格があることもあってオーナーさまが持ってきた他社から提案を受けた図面を見ると……違法建築だった! なんてこともありましたね。
写真は亀田が担当した「コスモグラシア錦糸町アクヴェル」の特殊ロフト住戸のスケッチ&完成図。2008年にグッドデザイン賞を受賞しました。図面を読める“建築のプロ”であることは、オーナーの方々から信頼を得るきっかけになり、亀田のキャリアの強みになりました。
オーナーの方々と話していると、実は別に持っている事務所ビルに問題があって頭を悩ませていて……という新たな相談を受けることがよくありました。相談を受けるたびに、自社の事業で解決できる仕組みが作れないかなと考えていました。
一級建築士事務所での設計監理のキャリアを経て配属されたのが、新規事業を立ち上げるR&D部門新規事業企画課です。
それまで親密なお付き合いをさせていただいたからこそ、新規事業ではたくさんの課題に向き合い、そのソリューションとなる仕組みづくりを実現したい。課題を抱えて困り顔のオーナーの方々、そして社会も笑顔にしたいんです。
そう、コスモスイニシアの欠かせない仕事のひとつに、「未来を見据えること」があります。写真は亀田が一級建築士事務所所属時代に設計監理を担当した「グランフェリシア経堂赤堤」
大企業の創業家が代々使ってた屋敷の建て替えで、もともとあった立派な樹木や、庭石などを外構に使ったりした物件でした。実は近隣にお住いの方々はマンションを建てることに反対されている方もいらっしゃって。なんども説明会などを実施して、ご理解を得るように動いたりと大変な面もありました。それでも中庭などかなり手が込んだものができたので10年もたつと植栽も育ってさらに立派になるのではと思っています。
亀田が担当する取り組みの一つが、不動産関連スタートアップを対象としたグローバルな育成プログラム「Open Network Lab Resi-Tech(現在休止中)」。このプログラムは、株式会社デジタルガレージが運営する、不動産デベロッパーをはじめとする複数の事業会社が参画するオープンイノベーションの場です。
応募された300件以上の資料を精査し、業界課題に対してどのように新しい価値を提供できるかを検討しました。とくに業務効率化・変革や業界課題、社会課題の解決に焦点を当てました。
この育成プログラムのひとつの成功事例として、建物管理の効率化を挙げてくれました。
スタートアップと協業し、従来手作業で行っていた建物管理業務をデジタル化するツールを当社グループが運営するホテルに導入することができました。削減できるコストは年間1億円規模のインパクトとなる想定です。
コスモスイニシアはホテルの開発や運営も手掛けていますが、ここでもスタートアップと連携したDXを推進しています。
宿泊予約からチェックイン・チェックアウト、そして観光や交通手配までを総合的に提案し、予約したすべての旅行体験を一元管理できるプラットフォームシステムを開発しています。宿泊者のタビマエからタビアトまでの旅行体験を向上させることと、運営コスト削減の実現を目指しています。
当社は大手のデベロッパーと違ってそこまで大規模でなく、社内の協力を取り付けやすい環境があります。だからこそスタートアップとの協業がしやすい。大切なのは、ともに成長していけることです。
協業では自社だけでなくスタートアップ側にもメリットがあることを重視していると教えてくれました。休止中の「Open Network Lab Resi-Tech」に参加していたパートナーの一部と株式会社デジタルガレージとは継続的な情報交換会を行うなど、新たな協業の枠組みづくりを模索しています。
あたりまえを疑うことから始まる未来
DXを進める一方で、中長期的な資本業務提携や将来的な投資の仕組みが十分に整備されていないという課題もあります。そこで重視しているのが、現場が率直に意見を共有できる場所。定例会などを通じて課題解決に向けたコミュニケーションを深めているそうです。
いまのあたりまえを、うたがう。
亀田は自身に言い聞かせるようにそう語ってくれました。日々当然のように行っている業務も、本当にこれでいいのか、DXで効率化できる部分はないか、変革できる可能性はないか、と問いかけているそうです。 かつてオーナーに見せてもらった図案が違法建築だったことがあったように、問いかけ、掘り下げることで見えてくるものを逃さないために、亀田は現場からの声にも耳を貸し続けています。それは、DX促進には現状の当たり前を疑う意識改革が欠かせないことを感じているからかもしれません。
3人の子どもを育てています。仕事はプライベートにそこまで大きく影響はないかな。でも子どもたちにもテクノロジーに興味を持ってもらえたらうれしいです。
思わずこぼれた笑顔に、父親の一面が垣間見えました。
最後に、これからやりたいことは?
オープンイノベーションを推進するなかで、資本提携などのパートナーシップの形成を通じた協創価値を継続的に生み出す仕組みを構築していきたいです。 そのためにも現状に満足せず、常に楽しく前向きに、価値創造にこだわる。次のステップを考えて、未来を考えることが大切だと思っています。新たなテクノロジーやイノベーションの種にはアンテナを張りながら、デジタル技術の活用と人的ネットワークの構築を通じて不動産業界の新たな未来を切り開きたいです。