「1を正確に伝える日本、1の可能性を広げるベトナム」若手駐在員の衝撃、曖昧さはチャンスかピンチか

「1を正確に伝える日本、1の可能性を広げるベトナム」若手駐在員の衝撃、曖昧さはチャンスかピンチか

日本の不動産マーケットが縮小するなか、アジアの新興国で活気づく住宅開発。とくにベトナムは平均年齢33歳という若さと、年7%の経済成長率を背景に大きな可能性を秘めています。
コスモスイニシアは現地企業とのパートナーシップにより、ホーチミン郊外で約2,000戸規模の分譲マンション開発に着手。日本で培った住まいづくりのノウハウを活かし、現地の人々の暮らしに寄り添う住空間の創造に挑んでいます。
2024年からホーチミンに駐在して現地でベトナム事業を推進する遠藤和也は「空港に降り立った瞬間から、この国の魅力に引き込まれました」と話します。静岡県三島市という地方都市で育った遠藤が見つめる、住まいの新しい形とは。その答えは、日本とは異なる視点で価値を広げていく、ベトナムならではの創造性の中にありました。

<コスモスイニシア ベトナム事業紹介ページ:https://vn.cigr.co.jp/

PROFILE

遠藤 和也 /Kazuya Endou

名前

遠藤 和也 /Kazuya Endou

部署

分譲事業部 海外事業推進部 ≪ホーチミン事務所≫

コスモスイニシア歴

9年

経歴

静岡県出身。2017年コスモスイニシア入社。入社から3年間、都市開発部において開発用地の仕入れを担当。海外事業に関わりたいと自ら希望して、当時進捗していたベトナム・ホーチミンの物件ソーシングに参加。その後、2020年4月から海外事業準備室に異動。22年にホーチミン事務所を立ち上げ、24年4月から駐在を開始、現在も地元パートナーとの事業展開などに奮闘中。学生時代にバックパッカー旅行の経験が多く、活気あるベトナムにも自然になじんでいる。

「人が集まる場所」に魅せられて

ホーチミン空港の到着ロビー。そこで遠藤の目に飛び込んできたのは、思いがけない光景でした。

海外の空港では見たことがない光景でした。到着する人1人に対して、5人くらいの家族や友人が出迎えに来ているんです。さらに面白いことに、まるでピクニックのようにみんなでシートを広げてお弁当を食べながら待っていて、空港がピクニック広場みたいな雰囲気だったんです。

三島出身の遠藤にとって、その光景は衝撃的でした。日本、とくに地方都市では、人口減少と高齢化が進みます。しかしベトナムの平均年齢は33歳。若い世代が多く、そこかしこに家族や友人が集まり活気に満ちています。

私は三島という地方都市の出身で、人口減少や高齢化を身近に感じながら育ちました。そんな環境からやって来て、この国の若さと活気を目の当たりにしたとき、これは大きな可能性があると直感しました。

コスモスイニシアのベトナム進出は、2020年に始動しました。日本での分譲住宅マーケット縮小を背景に、新たな市場を模索するなかで、人口ボーナス期と経済成長を続けるベトナムに着目。とくにホーチミンは、経済規模とマンションマーケットの大きさから同社の住まいづくりを活かせる可能性を秘めていました。

私たちの事業は人が多いほど、若い方が多いほどマーケットの可能性が広がります。その意味でホーチミンには大きな魅力がありました。

“曖昧さ”こそ新しい可能性?

事業開始と同時に予期せぬ事態が待ち受けていました。

2020年に事業を開始しましたが、その直後からコロナ禍により約2年間は実質的な活動ができない状況が続きました。

ようやく2022年になって案件のソーシング(開発用地の探索)が始まりましたが、そこで大きな壁に直面します。

日本では土地を取得して自社で開発するという事業形態が一般的ですが、ベトナムでは現地の事業会社への出資を通じた開発手法が主流で、より企業間の協業や財務面での検討が重要になります。まさに一からの学び直しでした。

もっとも大きな違いは、マーケットの未成熟さでした。

マンションという商品が市場に出てきてまだ10年というマーケットなので、多くのルールが曖昧かつ日々変更されるという状況で、結局なにがリスクなのか? という点が掴みづらい。一定の解があるわけではないので、そういった事象に直面するたびに問題を解きほぐしていくことを地道に対応し続ける日々です。

しかし、その「曖昧さ」こそが、新しい可能性を秘めているとも遠藤は考えました。現地の弁護士や不動産アドバイザリー会社との対話を重ね、少しずつ事業の形を作り上げていったのです。

実はベトナムでは、デベロッパーを信用できるかどうかが、お客さまの大きな関心事なんです。途中で会社が潰れてしまうケースもあるので。そういった意味では、日本で50年の実績がある当社が参画することで、安心感を持っていただけているのかなと感じています。
より深く現地を理解するためにベトナム語の勉強も始めました。一度は挫折しましたが、もう一度チャレンジしようと思っています。

地道な努力を続ける姿勢が、現地パートナーからの信頼にもつながっているようです。

ベトナム流の住まいのカタチ

取り組みが具体化したのが、ベトナムでの第1号案件となる「TT AVIO(ティーティーアビオ)」プロジェクト。ホーチミン中心部から約50分、ホーチミン市ディーアン地区に位置する約2,000戸規模の大規模開発です。土地の広さを活かした住空間づくりを通じて、新しい暮らしの価値提案を目指しています。

ベトナムの方々は、日本以上に家族や親族との時間を大切にされます。休日には大家族で集まって食事を楽しんだり、親族同士で助け合って子育てをされたり。そういった文化的背景もあり、2ヘクタールという広大な敷地を活かして、三世代の家族が安全に集い、時間を共有できる環境づくりを目指しています。子どもたちが伸び伸びと遊べる空間、ご家族でゆっくりと散歩を楽しめる遊歩道、家族や友人と集えるパーティースペースや屋上広場など、コミュニティの形成を重視して設計しています。
2024年11月の予約会では、このコンセプトが市場からも高く評価されました。第一期予約会の約400戸のうち、220戸が初日で予約申込。予約段階とはいえ、手応えは十分でした。

異国の地で本質を引き出す術を学ぶ

マンション開発がまだ10年ほどの歴史しかないベトナム。市場はまだ発展途上でルールが日々更新される状況が続きますが、遠藤はそのなかにこそチャンスがあると考えています。その思いを強くしたのが、起工式での出来事でした。

獅子舞が舞い、歌手が歌い、花火が打ち上がる。20台もの重機が一斉にクラクションを鳴らし、会場は祝祭のような熱気に包まれました。日本では考えられない演出に大切なヒントがあることに気づいたのです。

ベトナムの方々は、物事の本質的な価値を最大限に引き出す術を心得ているんです。たとえば、パンフレットやCGの表現一つを取っても、法律の範囲内で最大限魅力的に見せる工夫がある。日本では1を正確に伝えることに注力しがちですが、こちらでは1の持つ可能性を3にも4にも広げていく。その創造的な姿勢には、学ぶべきものが多くあります。

現地との交流は、休日も欠かしません。地域のサッカーサークルで汗を流し、多国籍のメンバーと交流を深めています。イギリス人、ドイツ人、そして現地のベトナム人など、さまざまな国籍のメンバーが集まるチームです。

言語の壁はありますが、スポーツを通じて互いの人となりが伝わってきます。誠実に向き合えば、言葉が完璧でなくても信頼関係は築けるんです。これはビジネスでも同じことだと実感しています。

いち事業責任者としての視点と、一人の生活者としての経験。その両方を持ち合わせることで、より良い住まいづくりのヒントが見えてくるのかもしれません。

この国には、人口ボーナス期にある住宅市場の可能性だけでなく、人々が集い、支え合う文化が根付いています。その魅力を最大限に活かした住まいづくりを、これからも追求していきたいですね。

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