君の人生だから、君が決める“仲間探し”
PROFILE
名前
大川 樹実/Tatsumi Okawa
部署
総務人事部門 人事部
コスモスイニシア歴
12年
経歴
2013年3月早稲田大学商学部を卒業後、同年4月に株式会社コスモスイニシア入社。 流通事業部にて不動産流通事業の営業を担当した後、同年10月に人事部へ異動し、同社新卒採用活動を担う。 2017年から同人事部において人事全般の業務を担当。グループ会社である株式会社コスモスホテルマネジメントの人事部課長を兼任。2021年4月人事部人材開発課の課長就任。全社の採用と研修領域を管轄する傍ら人事制度や報酬設計などの人事戦略の根幹を担う役割を果たす。2023年・2024年ベストマネージャー賞を受賞。ビールとコーヒーをこよなく愛す。
勝手に面談が進み、気づいたら最終面接まで来ていました。
採用担当としても、面接官としても多くの学生と対峙してきた大川ですが、自身が就職活動をしていた当時は、コスモスイニシアの独特な採用スタイルに驚いた一人でした。
最初に『みんな、今日はなにしに来たの?』と聞かれたんです。その時はピンとこなかったんですけど、よく考えたら自分も明確な目的意識を持たずに企業説明会に行ってたんですよね。来てくださいと言われたら行って、黙ってても選考が進んでいく。いま思えば、考えることを放棄してたかもしれません。
入社後は「会社で一番になりたい」という思いをもって営業からキャリアがスタートした大川。野心が少しずつ結果につながり始めた矢先、入社半年にして人事部への異動を命じられます。そのとき頭に浮かんだのは、入社時に受けた「自分の人生」についての問いかけだったといいます。
『採用の仕事はやりたいと言って誰もが任せてもらえる仕事ではない』『なにかに秀でているとかこれから伸びるっていう人は、そういう人にしかわからない』。これは当時の上司の言葉です。『樹実は次のステップにいけ』と言われたことも覚えています。
人事という新たな役割を前にしたときの心境を振り返ります。
当時の自分は『よっしゃ、認められた!』って単純に喜んでました。でも、いまなら違う見方ができます。自分の人生に真剣に向き合えない人が、会社のことを真剣に考えられるわけないですよね。だから、いまは学生一人ひとりの人生に向き合いたいんです。
12年の人事経験を経て、大川は「仲間探し」という言葉の本質をより深く理解しています。
就職活動は企業が学生を選ぶっていう構図が一般的ですが、学生にとってはこれからの人生がかかった大きな選択なので、私たちは学生さん自身が自分の過去も未来も見つめて、自分で選んでほしいなって。これから一緒に頑張っていく仲間になるわけですから。
筋書きなし。10人の説明会と本音の対話
90分間、とくに決まった予定はないんです。
参加した学生たちの前で、大川はいつもこう切り出します。10名程度の少人数で、決まった台本も企業からの一方的な説明もない。これがコスモスイニシアの会社説明会の特徴です。その理由は——
学生それぞれに、会社選びで大切にしたいことや確認しておきたいポイントがあるはずです。私たちからの一律のインプットよりも、一人ひとりが聞きたいことをしっかり聞ける場にしたい。そんな思いで続けています。
予想外の展開に学生たちは最初戸惑いを見せますが、そこから興味深い変化が起きるといいます。
企業の人事担当が場を仕切ることが多いなかで、学生自身が『こういうふうに進めませんか』と提案してくれることもある。そういう主体性のある学生との出会いは、10年経った今でも鮮明に覚えています。
書類選考を基本的に行わない採用スタイルも、同社ならではの特徴です。その背景には、大川たちの確かな考えがありました。
就職活動の風潮もあって、初期の書類には形式的な情報ばかりが並びがち。でもその背景には学生一人ひとりの強みや個性が埋もれているかもしれません。
相互理解のために、多い学生では20回以上の面談を重ねることもあるといいます。就職活動のオンライン化が進む昨今でも、この姿勢は変わりません。
地方の学生ともしっかり向き合いたいので、私たちから会いに行きます。九州や北海道など、普段オンラインで接している学生さんのところに足を運んで、それだけ真剣に考えているんだということを、直接伝えたいんです。
手間のかかる採用活動のように見えますが、大川は迷いなく答えます。
万人にとって良い会社かどうかはわかりません。だからこそ、よいことも厳しいことも包み隠さず伝えたうえで、最後は学生自身に決断してもらう。これは私たちの譲れない姿勢なんです。
期待されることで人は育つ
中学・高校時代、アメリカンフットボール部で活躍し、雑誌への掲載やU-19日本代表にも選出された大川には、いまでも心に残る恩師の言葉があります。 その言葉の意味を、当時の経験とともに語ってくれました。
君たちはなぜ勝てた?——結果は意志の反映だ——
全国大会で優勝するというのは、本気でそれを目指して必死だった人たちのなかで、もっとも意志が強かった人なんです。もうちょっと言うと、言葉ほど行動がついてきていない状態は意志が弱いということです。日本一になりたいと思って部活をやっていた私が最後日本一になれなかったのは、結局はわれわれの意志が弱かったからだと。そう考えるように教えられました。
この体験は人事としての価値観の礎となりました。採用面接でも大川ならではの視点があります。
学生から『将来こうなっていきたい』『これを達成したい』という話を聞くとき、その意志の強さを確認したくなります。意志があるから行動するし、考える。その分、行動量や思考量も比例して多くなる。私たちが求めているのは、そんな強い志を持った仲間なんです。
一方で、社員の成長には別の重要な要素があると大川は考えています。
当社の特徴のひとつとして、何歳になっても人に期待する会社だということが挙げられます。経営層との人事制度の議論でも、それは常に共通認識として持たれています。従業員一人ひとりに対して諦めない、期待し続ける。それが私たちの文化です。
期待に応える形で成長してきた大川自身の人事異動の際の経験を、少し照れくさそうに振り返ります。
『君にはできないよ』とネガティブに見られるより、『君にやってほしい』『君ならできる』と言われるほうが、なにかできる気がしてきますし、やる気も湧いてきますよね。期待されると重荷に感じることもあります。でも、それが人を強くして成長させるんだと信じています。
これからの採用と、人事の挑戦
コロナ禍を経て採用活動の形も大きく変化するなか、新たな可能性も見えてきました。
以前は学生が会社に来て採用活動ができましたが、いまは自宅から就職活動をする学生が増えています。まだまだ知名度に伸びしろのある私たちの会社は、より深く知ってもらう機会を積極的に設けていかなければならない。だから私たちから動くようになりました。
その取り組みの一つが、最終面接前に開催される8名から10名程度の学生が参加するクローズドイベントです。
会社の歴史、これからの未来像、今抱えている課題、具体的な報酬のこともできるだけ包み隠さずお話しします。
大手企業とは異なるアプローチに確かな手応えを感じているようです。
ネームバリューのある企業ではないからこそ、できることがあるんです。1人の学生のためにオフィスツアーをしたり、現場の社員との対話の場を設けたり。学生の不安や疑問に、もっとていねいに向き合えると思っています。
12年間、採用から人事制度の企画、人材配置まで幅広く携わってきた大川には確信したことがあるといいます。
つい先日も、役員のみなさんと会社の未来についてのディスカッションに参加する機会がありました。そこであらためて感じたのは、当社の最大の強みは『人』だということ。もっとも大切にしている資源である人に携われる、人事という仕事にやりがいと責任を感じています。
人事の仕事では、画一的な答えのない判断を迫られることも少なくありません。それでも理想の組織像を追求し続ける理由を、大川はこう締めくくります。
本来は自分らしい学生さんも、大人になって就職すると変におとなしくなる現象があると思います。でも、うちは他の会社とは違う。おとなしい日々をやり過ごさなきゃいけないような人たちが、思い切り自分を出せる会社であり続けたい。そのために、私たちもこういう環境をつくることに全力を尽くしていきます。