2020.04.03
インタビュー 一歩先の価値創造 事業用地の仕入れ 他社コラボ
空きビルの”束の間”を有効活用 「終わりがあるからこその価値」がある/株式会社NOD 溝端友輔さんインタビュー
渋谷区神泉町にある解体予定の空きマンション。
「ツカノマノフードコート」は、その1階で2019年10月から2020年2月までの4か月間だけ開業していた、RELABELという仕組みを活用して生まれた期間限定のフードコートです。
- 神泉駅から徒歩3分の場所に佇んでいた空きマンション。
この1階部分にツカノマノフードコートは誕生し、多くの来場者が足を運んだ。(※現在は解体されています)
今回お話を伺う株式会社NOD(ノッド)の溝端さんは、そのプロジェクトの主催者のお一人。
当社とコラボレーションしていただいた今回のプロジェクトの背景から、元々手掛けられていた空きビル活用の事業の可能性まで、お話を伺いました。
- 写真右:溝端友輔(みぞばた・ゆうすけ)/2019年株式会社NODを創業
建築マネジメント事業や不動産マッチングのRELABELの運営に携わる
写真左:副島弘輝(そえじま・ひろき)/2018年コスモスイニシア入社
入社時から企画開発本部に配属。日々仕入れの仕事にまい進中
“固定した店を持たずに飲食店をやりたい”というニーズに応える
──今回のツカノマノフードコートはどのような経緯で実現したのでしょうか
溝端さん(以下敬称略):背景からお話しますと、私は株式会社NODという会社で、数カ月から数年間、空きビルのスペースを有効活用するRELABELという事業を行っているんです。
主にスタートアップやベンチャー、新規事業を行いたい中堅企業と空間とのマッチングを行っています。
元々企業で店舗内装の設計を手掛けている中で、「本当はこういう面白い空間を創りたいが、収益性やコストの関係で難しい」といった相談をされることが多かったんです。
いわゆる解体が決まっていたりするような空きビルを期間限定で有効活用する形ならば、収益性よりもご自身のやりたいことの実現に重点を置ける、そういった悩みを解決できるのではと考えて支援の意味も込めて事業を始めました。
──なるほど。その事業から派生して今回のプロジェクトのお話が持ち上がった?
溝端:はい。そんな活動をしている中で、今回このプロジェクトのメンバーの一人であるフードディレクターから相談されたのが、「今若い世代を中心に増えている“固定した店を持たずに飲食店をやりたい”というニーズに対して、新たなメニューの開発・お披露目や交流が生まれるような空間を低リスクで提供できないか?」というアイデアでした。
ちょうどそのタイミングで副島さんからこの物件を紹介いただいたので、じゃあ期間限定でやりましょうと。
──タイミングが重なって実現したんですね。反響もすごかったですか?
副島:そういえば今日ちょうどめざましテレビに出てましたよね!
溝端:そうなんです。もうちょうど店閉めてしまったんですけど(笑)。(※取材は2月中旬)
──他にも日経など多くのメディアで取り上げられていますが、その要因はなんでしょうか?
溝端:理由として考えられるのは、解体予定のビルの活用自体への社会的関心が一つかなと。
また、アーティストさんへの空間開放はよくある事例だと思うのですが、飲食のクリエイターさんに提供するというのは珍しいので、興味をもっていただいたのではと思います。
──4か月間というのも珍しいですよね
溝端:そうですね。これまで同世代からの出店相談で多かったのが、店を持たずに期間限定で力試しをしてみたいというものでした。
とはいえポップアップストアで1か月では短いので、数か月~2年ほどというのが要望として多かったんです。今回の4か月という期間のプロジェクトは、今の時代にあった運営の形が提供できたのかなと思います。
飲食自体3~5年後なんてトレンドがどうなっているか想像がつかない世界なので、だいたい皆さん1年後には収益が出る事業計画を立てられるケースが多いんです。
収益以上にどんな価値を提供できるか
──多くのデベロッパーさんとコラボしていらっしゃると思うのですが、当社と組んでみて感じられた色ってありますか?
溝端:いやー本当にいい会社さんです(笑)!
副島:またまた…(笑)。
溝端:実際、数ある不動産会社さんの中でも色んな事業領域で開発をされているので、多様な空間・コンテンツを持っていらっしゃる。
今回も飲食・レジデンス・アトリエとすでにさまざまなコラボをさせていただきましたが、今後も一緒にやらせていただいて長期的に見て高い価値を生み出せる可能性をすごく感じています。
また、我々の思いに共感していただけたこともよかった。
副島:それで言うと、例えば当社が提供しているレンタルオフィス『MID POINT』は、一部の階層を共用部にして、テナントさん同士の交流からコミュニティや事業でのコラボレーションなどが生まれるようにデザインしていたりします。
収益はもちろんですが、それ以上にテナントさんにどんな価値が提供できるかを考えている。思想は似ているのだろうなと思っています。
終わりがあるからこその価値への挑戦
──今後の展望を伺ってもよろしいでしょうか
溝端:ツカノマノフードコートは売上にKPIを置かない飲食事業モデルをやりたいと強く思っています。
例えば40代50代がメイン客層の横丁があったとして、ツカノマノフードコートが期間限定で入ることで20代の集客を喚起して、周辺のお店へこれまで来なかった客層の来店の増加に繋げたりと、そんな価値提供ができたらと考えています。
──今回も多くの方が来場されたそうですね
溝端:約2000人の方に来ていただきました。初日だけで200人近く来ていただいたんじゃないかな。
副島:すごいですよね。解体予定のマンションですからね。
溝端:いつもその光景を見ると泣きそうになってしまうんですよね…(笑)。
僕は「終わりがあるからこその価値」ってあると思っています。
それは感情的な”エモさ”みたいな側面もありますが、今すぐ行かないと例えば半年後にはそこに存在しなかったりするわけで、イベントやPRの会社さんなどにもとても需要があるんです。
普通に一週間で1000万予算がついたりするので、通常の賃貸に出す場合の何倍もの金額で貸し出すことが出来る。そこに人が集まることで生まれるものがある。多くの可能性を秘めているんですよ。
──街を歩けば使われていないビルがたくさんありますよね
溝端:そうなんです。ただ、もったいないと思いつつも、使われていないのは使われていないなりの理由があって。空きビルはクリアしなければいけないさまざまな課題がある物件が多いんです。
そこに挑戦しようと、最近は弁護士の方に相談して、解体中のビルをきちんと合法的に利用するにはどうすればいいか?耐震基準を満たしていないビルをどうしたらリスクなく活用できるか?などを模索中です。
それらの課題を完全にクリアできるようなモデルを考え、実現できる物件を探し出して今後も多くの面白いプロジェクトを生み出していきたいです。
プロジェクトの背景に止まらず、空きビルの有効活用事業にかける思いや、事業自体の可能性までお話いただいた今回のインタビュー。
取材は2月に幕を下ろしたツカノマノフードコートの店内にて実施されましたが、そこにはラスト一週間に来店したお客さまのメッセージが所狭しと描かれており、このプロジェクトが生み出したたくさんの笑顔を感じることが出来ました。
溝端さん、お忙しい中ありがとうございました!
編集・取材
人事
柏木遥
2015年入社。中途採用・研修育成担当を経て、現在人材・組織開発領域を担当。