売る時期は東京オリンピックの前?後?株価から見るマンション売却のタイミング

 

2020年に開催が決定している東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪)。国立競技場の建設問題や築地市場の移転問題など紆余曲折はあれど、バブル崩壊後20年以上にわたる景気低迷を打破するトリガーとしての役割が期待されています。事実、五輪を控えた景気改善ムードの中で、ここ数年東京を中心とした地価は上昇傾向にあります。保有するマンションをどのタイミングで売却しようかと迷っているかたも多いのではないでしょうか。今回は、東京オリンピック前後の中古マンション価格の推移を株価の動きから推測していきます。

 

目次

中古マンションの価格は株価と連動していた

過去4回のオリンピック前後の株価推移

オリンピック前の株価はおおむね上昇傾向

オリンピックもリーマン・ショックには勝てなかった

オリンピック後の1年も株価下落の可能性は薄い

結論!マンション売却時期は?

まとめ

 

中古マンションの価格は株価と連動していた

東京都が先ごろ発表した2017年の東京都内の基準地価(7月1日時点、全用途平均)は、前年比で3.0%上昇しました。5年連続の上昇で、上昇率は前年より0.5ポイント拡大しています。銀座や八重洲など、周辺で大型の再開発があった商業地での上昇が目立ちますが、住宅地も東京都で1.8%の伸びでした。都心周辺でマンション価格が高騰していることや、交通の利便性が向上したことなどから、都心からやや離れたエリアでも価格上昇がみられており、都内では荒川区南千住8丁目が6.3%ともっとも高い伸びを示しました。

一方、国税庁が今年3月に発表した1月1日時点での路線価は、全国約32万5千地点の標準宅地が平均で0.4%の上昇。32年連続で路線価日本一となった東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前は、1平方メートルあたりの価格が、バブル直後の1992年につけた3650万円を上回り、4032万円と過去最高を記録しました。

このように2020年の東京五輪を控えて、東京などでは地価が上昇局面にあるとみられます。地価が上がると、新築マンション価格が上昇するので、中古マンション価格も上昇します。こうした不動産市場の行方を占う手がかりとなるのが、地価の先行指標である日経平均株価です。

 

   (東日本不動産流通機構/東京証券取引所のデータを元に長嶋修事務所作成のグラフを引用)

日経平均株価は日本の株式市場の代表的な株価指標のひとつ。東京証券取引所第一部に上場する株式のうち、225銘柄を対象に算出しています。日経平均や日経225とも呼ばれます。これは2008年以降の日経平均株価と、都心3区での中古マンション単価を比較したグラフです。リーマン・ショックがあった2009年に株価が大きく落ち込むとマンション価格も下落しました。ただし、株価の下落がすぐにマンション価格に影響を及ぼすわけではなく、1年ほど遅れてマンション価格が下落する傾向があります。

その後、多少回復~横ばい傾向で推移した後、2011年の東日本大震災を経て2012年12月の自民党への政権交代を果たした後は、「アベノミクス」効果もあり、株価もマンション価格も右肩上がりで大きく上昇してきました。2015年の「チャイナショック」でいったん大きく下げたものの、米国での「トランプショック」以降は再び上昇気流を描いています。このように、日経平均株価とマンション価格は見事に連動しているのです。

 

過去4回のオリンピック前後の株価推移

こうした過去のデータを参考にすると、2020年の東京五輪まで株価が上昇すれば、マンション価格も同様に上昇すると考えられます。では、五輪前の株価を予測するために、過去4回のオリンピック前後での株価の動きを見ていきましょう。

(SBI証券 日本株投資戦略レポートより引用)

オリンピック前の株価はおおむね上昇傾向

2000年開催のシドニー五輪(オーストラリア)、2004年開催のアテネ五輪(ギリシャ)、2012年開催のロンドン五輪(イギリス)の3回とも、五輪前後は株価の上昇期にあったことがわかります。ただ、2008年開催の北京五輪(中国)だけは、そのちょうど前年の2007年後半が株価の頂点となっており、オリンピック開催に向けて急坂を転げ落ちるように株価が下落。ちょうど開催時期が「底」にあたっていたことがわかります。この時期の中国株式市場を左右したもの。それは「地政学リスク」です。

 

オリンピックもリーマン・ショックには勝てなかった

2000年代に入り、中国は飛躍的な経済成長を続けたことを背景に、2007年まで株式市場が未曾有の急上昇を続けていました。しかし、中国政府が「(当時の)株バブルとインフレ抑制のために利上げする」「株に新たな規制を設ける」との情報が交錯したことで、売りが殺到。2007年2月27日には、前日比-8.84%の大暴落が起きました。中国株の暴落に連鎖して米ニューヨーク、ヨーロッパの株式市場も大幅安となったことから「上海ショック」と呼ばれました。「上海のくしゃみで世界が風邪をひく」などといわれ、中国経済の成長ぶりを印象づけるできごとになりました。

この大暴落後、中国の株価はオリンピックに向けて再び上昇とはなりませんでした。それというのも、米国のウォール街から不穏な空気がただよってきていたからです。「サブプライム・ローン問題」という言葉に聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。早いものでもう10年ほどが経ちますが、2007年末から2009年頃にかけてアメリカで起きた、住宅購入用途向けサブプライム・ローンの不良債権化問題です。

2007年に入り、サブプライム・ローンへの投資を証券化して金融商品として取引を可能にした「サブプライム・モーゲージ」が暴落。サブプライム・モーゲージを保有していた金融機関や投資ファンド、政府系企業等などが多額の損失を被りました。こうして、2008年9月には名高い「リーマン・ショック」が起きます。
米国の大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズ・ホールディングスも多額の損失を被った金融機関のひとつ。同社の経営破綻は、世界経済を震撼させました。オリンピック前にもかかわらず、中国株が下落傾向にあったのは、こうした世界規模での経済危機が背景にあります。このように、世界規模で政治・経済に影響をおよぼす出来事や事件を「地政学的リスク」といいます。

「地政学(geopolitics)」とは、地理的な位置関係が国際関係に与える影響を研究する学問をいいます。地政学的リスクの代表的なものとして、戦争やテロ、国家財政破綻や世界的大手企業の倒産などがあります。上記で説明した「上海ショック」や「リーマン・ショック」のほか、記憶に新しいところでは、2010年に「ギリシャ危機」がありました。これは、ギリシャの財政破綻懸念を受けて、ギリシャ国債が暴落。それをきっかけとして、外国為替市場でユーロが下落したほか、世界各国の株価も下落した事件をいいます。このほか、現在進行形の戦争やテロによる地政学的リスクとしては、イスラエル対イスラム諸国の軍事衝突、イスラム過激派によるテロ行為、シリア内戦などがあります。北京五輪の開催時には、オリンピック景気も地政学的リスクには勝てませんでした。地政学的リスクは、世界の景気動向や株式市場の動きなどに左右されることなくいつでも発生する可能性があります。そのため、投資家にとっては「不確実性」の代表ともいえるものです。

 

オリンピック後の1年も株価下落の可能性は薄い

今回調査したデータでは、過去の五輪開催国では、開催から1年は株価が上昇する確率が75%と非常に高いということがわかりました。2000年のシドニー五輪では上昇こそ見られなかったものの、横ばいで推移しています。こうしたデータから、五輪開催前だけでなく、五輪開催後も1年程度は株価が上昇もしくは横ばいで推移すると考えられます。過去データにならえば、2020年をはさんであと3~4年程度は、日本の株式市場も東京五輪の恩恵を受けて上昇に向かうと考えられます。

 

結論!マンション売却時期は?

このように、「株価とマンション価格は連動する」という相関関係や、過去の五輪開催国での株式市場の動きを見ていくと、2020年の東京五輪開催から1年程度のちまで、ようするに現在~2021年くらいのあいだだと、高値でのマンション売却が期待できるということになります。ただし、ここで気を緩ませることなく注意しておきたいのは、先ほども述べた地政学的リスクの発生です。昨今頻発している北朝鮮によるミサイル発射も地政学的リスクのひとつとみなされます。

ここで奇妙なのは、大震災や北朝鮮によるミサイル発射など、日本に大ピンチが迫ったときほど、日本の株式市場や為替相場は円高・株安になることが多いということ。事実、8月下旬に北朝鮮がミサイル発射をした際には、地政学リスクの高まりから、東京市場は円高・株安に振れました。通常の発想なら、戦争になりそうな国の通貨は積極的に売られそうなものですが、日本円に関しては反対の動きを見せるのです。その理由のひとつとして、日本円が世界の通貨市場において比較的安全な資産として認識されていることがあります。

投資家は、リーマン・ショックのような地政学的リスクによる市場の暴落を嫌います。そのため、世界をゆるがすような大きな事件が起きそうな気配がすると、「安全資産」の買い占めに走るのです。
日本がピンチかどうかに関わらず、これまでの慣例に従って「とりあえずあらゆる通貨の中で比較的リスクが低そうな円を買っておこう」という投資家心理が働いたと考えられます。
一般的に、為替市場と株式市場は反比例して動くので、円が買われて円高になると、株式市場は下落します。今後北朝鮮による挑発行動がエスカレートする、中国や韓国を巻き込んで域内の緊張が高まるといった事態になると、地政学的リスクが起きて株式市場が下落する可能性が考えられます。すると、マンション価格も株価に連動して下がると予想されます。

北朝鮮のほか、中国政府の動きにも要注目です。昨今、中国の経済成長を背景に、中国人による日本の不動産購入が増えており、日本の不動産市場を押し上げている要因のひとつとみられていました。しかし、中国政府は昨年12月、外貨購入者に対して、「両替した外貨をオフショア不動産投資に使わない」旨の誓約書に署名するよう義務づけました。そのため、中国人による海外不動産購入が難しくなっており、日本の不動産価格に影響が出てくることが懸念されます。中国政府は共産党の一党支配のため、不動産市場にしろ株式市場にしろ、規制をするとなったら電光石火で実施されます。2007年には「上海のくしゃみで世界が風邪をひく」と言われましたが、中国が世界第2位の経済大国となった現在、中国経済がつまづいたら、世界経済は風邪どころか大やけどを負う可能性があります。

このように、マンション市場の動向を占うには、国内株式市場や円相場だけでなく、世界の外交問題や、経済、テロなどのニュースにも目を配る必要があるといえるでしょう。
一方、売却ではなく買替の場合はどうでしょうか。買替の場合も高値で売却したほうが望ましいことはたしかですが、その分住み替えるための新しい物件も値上がりしているということになります。

また、不動産を購入するなら金利の動向にも着目しておきたいもの。2016年1月下旬の日銀政策決定会合で、日本初となる「マイナス金利」が導入されてから1年半あまり 。日本は世界でも類をみない「超低金利」時代を迎えており、有利な条件で住宅ローンを組むことができます。
マイナス金利導入でも、金利低下による景気回復の兆しが思うように現れていないため、超低金利政策は長期化すると予想されています。しかし、今後オリンピックに向かって景気が回復に向かえば金利が引き上げられる可能性も否定できません。買替を検討するなら、物件価格と金利のバランスを踏まえた時期の検討が必要だといえるでしょう。

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まとめ

ここまで、「株価とマンション価格は連動する」という相関関係や、過去の五輪開催国での株式市場の動きをもとに、2020年の東京五輪までのマンション売却時期についてみてきました。グローバル化によって、世界各国の経済は連動性を強めており、日本のマンション価格にも大きな影響を与えていることが理解いただけたでしょうか。売却するならできるだけ高値で売りたいところですが、北朝鮮による挑発行動や米国トランプ大統領の政権運営など、地政学的リスクを引き起こす可能性がある不確定要素が増えている中では、リスク回避のために「ほどほど」のところで売却するという決断も必要になる可能性があります。いずれにしろ、売り時をきちんと見極めるためには、日ごろから株式市場や為替相場、世界の経済ニュース、外交問題などにしっかりと目を向けている必要があるといえます。

 

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・監修者:竹内英二
・肩書:不動産鑑定士・中小企業診断士
・プロフィール:
不動産鑑定士・中小企業診断士。1974年生まれ。大阪大学・大阪大学大学院卒業。日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定及び不動産開発業務に従事。得意分野は土地活用。2015年に株式会社グロープロフィットを設立し、不動産鑑定に従事している。また千葉駅徒歩3分の場所に、レンタルスペースである「ちばセミナールーム」も運営し、自ら不動産の有効活用を実践している。

2017/10/19時点での情報です。