家を買うのはいつがよい? 購入を決断する前にチェックしたい4つのこと
家を買うことは、多くの人にとって夢のひとつです。
しかし、人生でもっとも大きな買い物だけに不安要素が多く、「本当に今買ってもよいのか?」「将来のライフプランを考えた上で、気をつけるべきポイントがわからない」など、なかなか決断することができない人もいるのではないでしょうか?
「一生に一度の買い物」とも言われている住まいの購入。正しい知識を身につけ、納得のいく理想の住まいを手に入れたいものです。
この記事では、住まいの購入を考えている方に向けて、購入のタイミング、理想の住まいの選び方、購入前に気を付けたい点を確認していきます。
住まいの購入をご検討の方は、じっくり目を通してみてくださいね。
初めて家を買う前に確認したいこと
まずは、初めて家を買った人の平均年齢・家族構成、平均年収、予算はどのくらいなのか、グラフを用いて解説していきます。
平成30年度住宅市場動向調査報告書(国土交通省)より作成
国土交通省による「平成30年度住宅市場動向調査報告書」では、注文住宅、分譲戸建住宅、分譲マンション、中古戸建住宅、中古マンション、どの住宅の種類を見ても、「今回が初めて」という回答が多く、7~8割程度を占めていることがわかります。
では、住宅取得者のほとんどを占める、「初めて住宅を購入する人」の平均年齢や年収、家族構成はどのようになっているのでしょうか。また、どのくらいの購入資金額が必要だったのかも気になるところです。
以下の項で、ひとつずつ解説していきましょう。
なお、この記事内グラフでの「一次取得者」とは、初めて住宅を取得した世帯を意味しています。
平均年齢・家族構成は?
以下のグラフからは、初めて住宅を取得した世帯の平均年齢が分かります。
「平成30年度住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)より作成
一次取得者の世帯主の平均年齢を見ると、住宅の種類を問わず30代が最も多く、次いで40代が続きます。
次のグラフは、平均初婚年齢と第1子~第3子までの母の平均出産年齢の推移を表しています。
「平成25年版厚生労働白書 -若者の意識を探る-」(厚生労働省)より作成
厚生労働省「平成25年版厚生労働白書 -若者の意識を探る-」によると、2012年の平均初婚年齢は、男性が30.8歳、女性は29.2歳。第1子出生時の母の平均年齢は30.3歳です。
また、こちらのグラフは、1世帯辺りの平均居住人数と高齢者の有無を示しています。
「平成30年度住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)より作成
1世帯あたりの平均居住人数は、注文住宅、分譲(戸建て・マンション)、中古戸建において3人が多く、中古マンションでは2人が多いことが分かります。
また、高齢者が住んでいない世帯は、8割程度を占めていることが読み取れます。
以上、4つのグラフを照らし合わせてみると、結婚や出産といった家族構成やライフスタイルの変化をきっかけに、30代で住宅購入を決断する人が多いことが読み取れます。
平均年収は?
家を買うにあたって、どうしても気になるのは金銭面ですよね。
以下のグラフは、初めて住宅を取得した世帯の平均年収を示しています。
「平成30年度住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)より作成
グラフを見ると、分譲マンション一次取得者の平均世帯年収は840万円と突出していますが、概ね660~780万円であることが分かります。
「ある程度の収入がないと家を買うことはできない」「もっと年収が増えたら家の購入を検討したい」と考えている方もいるでしょう。実際、分譲マンションにおいては、年収600万~800万がもっとも多く、全体でも600万以上が多数を占めますが、注文住宅(全国)、分譲戸建・マンション、中古戸建・マンションにおいては、世帯収入のボリュームゾーンが400~600万円であり、実際にはどの世帯年収層でも住まいの購入は実現可能であることがこのグラフから読み取れるでしょう。
購入資金は?
次に、購入資金、自己資金、借入金がどれくらいなのかを見ていきましょう。
以下のグラフは、実際に初めて住宅を取得した世帯の平均的な購入資金、自己資金、借入額を表しています。
「平成30年度住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)より作成
新築・中古によって、当然のことながら購入資金に大きく差があります。
平均すると、新築の場合は、3,900~4,500万円程度。中古の場合は、2,600万円程度です。
一方で自己資金は購入資金ほどの差が見られず、6~7割程度を借入金で賄っていることが見て取れます。
自己資金とは、住宅購入の際に事前に用意しておく現金のことです。通常、頭金や諸費用(融資手数料や登記費用など)を支払う際に使われ、一般的には物件購入価格の2割以上必要だと言われています。
借入金とは、住宅ローンのことを指します。住宅の購入資金として、金融機関から借りる融資のことです。
借入金が多いほど最終的な金利の支払いが増えてしまうため、多くの自己資金を用意してから住まいを購入していることが読み取れます。
家を買うタイミング、本当に今で大丈夫?
家を買うタイミングは、各世帯それぞれであり、正解はありません。結婚したとき、子どもが産まれたときなど、どのようなタイミングでの購入が自分たちには最適なのか、気になるところですよね。
また、購入のタイミングを見極める上で注意すべき点、考えておくべき点とはどのようなものがあるのでしょうか。
結婚したとき
結婚後すぐの購入を考える場合、安定した家計の状況が把握できず、そのために住宅購入資金に充てられる金額が読めません。結婚後の生活費が明確に分からなければ、どの程度の価格なら余裕をもって購入できるのかを判断できないためです。
結婚を期に住まいの購入を考えるのであれば、十分な貯蓄をしたうえで、結婚後の生活費をできるだけ把握しておく必要があります。
また、現在の生活だけではなく、出産や育児で休職や退職といった共働きができなくなるなど、ライフスタイルが変化していくことも考慮にいれておく必要もあります。長期的なライフプランをできる限り具体的にイメージしておきましょう。
子どもが産まれたとき
家を買うタイミングで最も多いと言われているのが、子どもが産まれたときです。
子どもが生まれたタイミングで家を買う場合、「子育てのしやすい家かどうか?」が重要になります。
子どもの成長に合わせて、幼稚園・保育園や小学校はどこに通わせるかを考えた上で、周辺環境は安全か?公園はあるか?なども調べておきましょう。
もし、妊娠中に住宅購入や引越しをするのであれば、女性の体にとって負担となってしまうことも考慮に入れておくべきでしょう。
子どもが入園、入学するとき
購入のタイミングで2番目に多いと言われているのが、子どもが幼稚園・保育園に入園するとき、あるいは小学校への入学するときです。特に子どもが小学校に通い始めてからの購入は、転校が生じて子どもにつらい思いをさせてしまうこともあるため、子どもの入園・入学時期も考慮しておきたいところです。
また、結婚したときや子どもが産まれたときに家を買った世帯と比較すると、住宅ローンの支払い開始が遅くなってしまうことを覚えておきましょう。
30代で子どもを持った場合、子どもが幼稚園・保育園に入園する頃には世帯主が40代になっていることも考えられます。
40代は長期の住宅ローンを組むことができる最後のチャンスです。世帯主の年齢が高くなると、住宅ローンの借入金額が少なくなってしまう場合があり、さらに十分な貯蓄が必要になることも覚えておかなければなりません。
定年退職し、子どもが親元を離れるとき
近年増加しているのが、定年退職後に夫婦2人になってから家を買うパターンです。
今まで貯めたお金と退職金を合わせて一括払いで家を買い、バリアフリー設計など老後に安心かつ快適な住まいで生活をするのです。
定年退職後に住宅を購入する場合は、老後資金のバランスに注意しなければなりません。終の棲家(ついのすみか)はあるけれど、老後の生活資金がなく、余裕のない生活が続いてしまうのは現実的ではありません。
年金がいくらくらい貰えて、月々でどのくらいの支出があるのかをしっかり計算し、計画的な老後を過ごしたいところです。
憧れのマイホーム! 購入するならどっち?
住まいの購入を決めても、「マンションか一戸建てか」「新築か中古か」という点は、悩ましいところですよね。一概にどちらがよいとは言い切れませんし、それぞれにメリット・デメリットがあり、住む人の価値観によってどちらが向いているのかは異なります。
この章では、「マンションと一戸建て」「新築と中古」の特徴をそれぞれ解説していきます。
自分たちが生活を始めるには、どのような住まいが最適なのでしょうか?考えながら見ていきましょう。
マンションと一戸建て、購入するならどっち?
まずは、マンションと一戸建て、自分たちが生活をしていく住まいとしてどちらが向いているのか、考えていきましょう。
- 金銭面をチェック!
まず一番に気になるのは、お金の問題ですよね。
マンションでも一戸建てでも、家を買う場合には、さまざまな費用がかかります。
金銭面について比較するべき要素は、以下の5項目です。
- 不動産の「購入資金」
- 管理費などの「維持費」
- 月々の「駐車場料金」
- 固定資産税などの「税金」
以下の表にまとめています。
なお、管理費だけを見れば、一戸建てを購入する場合は月々固定の支出が少なくなるため、4つの要素からマンションと一戸建てを比較すると、維持管理費や駐車場料金の必要なマンションの方が高額と言えます。
ここで注意したいのは、一戸建てを維持管理するためには手間暇がかかるということです。
マンションであれば、定期点検、メンテナンス、修繕計画などは管理会社が行ってくれるでしょう。
しかし一戸建てでは、維持管理をすべて自分で行わなければなりません。さらに、将来的なメンテナンスや修繕を考えると、それなりに費用がかさむことが予想され計画的な貯蓄をしておく必要もあります。修繕を行うタイミングは自己判断になりますが、修繕費用を含めて比較をすると、修繕にかかる費用は同等もしくは一戸建ての方が高くついてしまう傾向にあります。
費用と手間暇、そして何を優先させるのか考え、「マンションにするか?一戸建てにするか?」をよく考えてみましょう。
- 生活面の比較をチェック
次に、実際に住んだ際の生活面を比較してみましょう。
快適に住むことができるかどうかは、住まいを選択する上で重要なポイントです。
何を優先したいかを考えつつ、マンションと一戸建てを比較していきましょう。
生活面で比較している要素は、以下の6項目です。
- 間取りの自由度
- 立地条件
- セキュリティ
- プライバシー
- ペット
- バリアフリー
以下の表にまとめています。
マンションは利便性の高さが、一戸建ては自由度の高さがそれぞれの魅力と言えるでしょう。
マンションは、駅や商業施設へのアクセスがよいだけでなく、複数のセキュリティ構造や、老後も快適に過ごせるバリアフリー環境は、生活面での利便性をさらに高める役割となっています。
一方で一戸建ては、世帯人数やライフスタイルの変化にも比較的柔軟に対応することができます。注文住宅であれば、自由度の高い間取りを設計することができ、建物と建物が隣接していないため、音や振動も伝わりづらいのです。隣人に気を遣いながら生活をするということもないでしょう。ペット飼育の自由度も魅力的ですね。
生活面でのこだわりは、世帯によってさまざまです。何を優先したいのかを考えた上で、しっかり選んでいきましょう。
新築と中古、それぞれのメリット・デメリットは?
次に、新築と中古を比較していきましょう。
新築か中古かも、家を買うときに迷うところですよね。単純に「新しいか、それとも古いのか」だけではなく、家の機能や設備などにさまざまな違いがあります。
ひとつひとつ見ていきましょう。
- 生活面をチェック!
まずは、生活面の特徴を比較していきましょう。
比較している要素は、以下の4項目です。
- 新しさ
- 空間づくりの自由度
- セキュリティ
- 耐震性
以下の表で確認していきましょう。
新築の最大のメリットは、「誰も使っていない真っさらな家に住むことができる」という点です。こちらの比較表だけを見ていると、中古はどうしても新築に劣ってしまうように感じられます。しかし、居室内の新しさや空間づくりの自由度はリフォーム・リノベーションを行えば、新築同等までに高めることができます。
耐震性にも注目しておきましょう。
建物の耐震性を左右する耐震基準とは、建物が地震に耐え得る能力を定めたもので、旧耐震基準と新耐震基準とでは内容が大きく異なります。1981年6月以前に建築確認を受けた建物は、新耐震基準を満たしていない可能性があるため、耐震性能を確認する必要があります。
もし、不安を感じるのなら管理会社に確認をしたり、建築家や耐震診断士などの専門家に見てもらったりするとよいでしょう。
- 金銭面をチェック!
次に気になる金銭面の特徴を比較していきましょう。
今回比較する要素は、以下の9項目になります。
- 購入時の「物件価格」
- 住宅そのものにかかる「消費税」
- 不動産会社に支払う「仲介手数料」
- 中古のみにかかる「リフォーム・リノベーション費」
- 購入時にかかる「修繕積立基金」
- 「固定資産税の軽減」
- 「登録免許税の軽減」
- 「不動産取得税の軽減」
- 「瑕疵担保責任」の有効期間
以下の表で確認していきましょう。
※注1. 長期優良住宅・認定低炭素住宅の新築等に係る登録免許税の税率は、令和4年3月31日までの措置として、0.1%(戸建ての長期優良住宅の移転登記については0.2%)に軽減。
※注2. 買取再販住宅の取得に係る登録免許税の税率は、令和4年3月31日までの措置として、0.1%に軽減。
※注3. 令和4年3月31日までに取得する認定長期優良住宅では、この控除額が1,300万円に増額。
新築物件と中古物件を比較する場合、多くの方が「中古物件は、新築物件よりも低価格で購入することができる」と考えでしょう。
確かに、中古の物件価格は比較的安価です。
しかし、中古物件にのみかかる費用、新築物件ならではの税制優遇措置などもあり、諸費用やかかる税金などを含めて総合的に考えると、物件によってはあまり差がない場合もあります。
税制や諸費用など資金に関する疑問点は、不動産会社の担当者に質問をし、不明瞭な出費がないことを十分に確認してから購入に踏み切るべきでしょう。
※2020年3月時点の情報です。
- 選ぶ際の特徴をチェック!
「新築にするのか中古にするのか」そのどちらかを選ぶ際、どのような点に注目するべきなのか、確認していきましょう。
ここでは、以下の5項目を比較していきます。
- エリア
- 周辺環境
- コミュニティ
- 面積
- 間取り
以下の表にまとめています。
表から分かるように、選ぶ際の特徴は一長一短です。どちらが優れているかは言い切れず、選択の基準は、個々人の価値観や何を優先するのかによって左右されます。
例えば、「なるべく最寄駅や商業施設からのアクセスがよい家を買いたい」と考えているとするならば、中古物件を中心に探すとスムーズに見つけることが出来るでしょう。
なぜなら、駅前などの便利な場所には既存の建物が建っており、これらを壊して新築物件を建設することが現実的ではないからです。中古物件も視野に入れるのであれば住宅購入の検討範囲が広がり、立地条件のよい家を買うことができる可能性もグッと高まります。
自分たちが家を買う際にどこに価値を置くのか、何を優先するのかによって、選択の基準は異なってきます。どこが譲れないところで、どれなら妥協できるのかを考えて住まいを選んでいきましょう。
購入するときに気を付けたい点って?
最後に、家を買うときに気を付けたい点について解説していきます。
以下の3点に注意し、住まいの購入を決断していきたいですね。
- 将来の生活を考えた住まいの選択をしよう
- 住まいの衝動買いはNG!
- 自己資金は余裕をもって準備しよう
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
将来の生活を考えた住まいの選択をしよう
いまの家族構成やライフスタイルであれば、いま検討している住まいで快適に生活することはできるでしょう。しかし、子どもが産まれたときや成長したとき、また定年退職後などはどうでしょうか。将来のライフプランを考えて家を買うことは、とても重要です。
例えば、老後を考えて1階で生活ができる間取りにする、バリアフリーを考えて段差をなくす、などは大切なことです。
また、いずれ子どもが親元を離れ、夫婦2人だけで住む可能性が高い場合は、部屋を持て余してしまうことも念頭に置くべきでしょう。
住まいの衝動買いはNG!
「掘り出し物」と呼ばれる条件のよい住宅を即決したり、「人気の物件なのですぐに売れてしまいますよ」という言葉に後押しされて衝動買いをしたりしてしまうのは避けたいですね。
一見すると価格の割に条件のよい物件であったとしても、何かしらの欠点があるかもしれません。
購入を考えている家のメリットだけではなく、デメリットもしっかり把握したうえで決断しないと、しばらく経ったあとに、後悔することも考えられます。
目に見えるところだけではなく、どのような構造なのか、日当たりや家事動線などに問題はないかもチェックしたいですね。
また、周辺環境や最寄り駅・商業施設までのアクセスなど、どのような生活をしていくのかをイメージすることが大切です。平日と休日、昼と夜で周囲の環境に変化はないのかも確認しておきたい点ですね。
人の量や交通量も、曜日と時間帯で変動します。平日の日中は人通りも多く賑やかな通りでも、休日や夜になると「街灯がなく、真っ暗だった」「人通りが少なくて一人では歩けそうにない」など、ガラッと雰囲気が変わってしまうこともあります。少し面倒かもしれませんが、購入を考えている住宅の周辺を、平日・休日、また時間帯を変えて歩いてみるようにしてみましょう。
「一生に一度の買い物」と言われている、住まいの購入。家族や不動産会社としっかり相談をし、メリット・デメリットを冷静に吟味したうえで、購入の決断をしましょう。
自己資金は余裕をもって準備しよう
自己資金はできるだけ多く準備しておいた方が、住まいの購入がスムーズに進んでいくのは当然です。
現在は、頭金が0円でも家を買うことは可能です。低金利効果で以前よりも比較的少ない自己資金で家を買う人も増えています。しかし、少ない資金で住まいの購入に踏み切るのは、将来的に相応の努力が必要だということを忘れてはいけません。
「このタイミングで家を建てたい」などの目標がある場合は、それまでにできるだけ多くの自己資金を準備しておきましょう。
まとめ|不動産会社のアドバイスを受けつつ、理想のマイホームを!
家を買うタイミング、理想の住まいの選び方、購入する前に気を付けたい点などを確認してきました。
タイミングや住まいの選び方に正解はありません。いま現在の家族構成やライフスタイルだけではなく、将来的にどのような生活をすることになるのかをイメージしつつ、どんな家に住みたいのかを考えることが大切です。
一度にたくさんのことを考え、吟味しながら住宅の購入を決断するのはなかなか難しいものです。不動産会社の担当者からのアドバイスを受けつつ、理想の住まいを手に入れましょう
税理士法人タクトコンサルティング監修