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コスモスイニシア初、テナントが居ながらにして実施する「免震レトロフィット構法」による
オフィスビル再生事業「津田沼駅前安田ビル免震改修プロジェクト(仮称)」に着手
平成20年12月9日
 (株)コスモスイニシア(本社:千代田区、社長:町田公志)では、当社としては初めて「耐震改修促進法」(※1)の認定を取得し、耐震性・安全性・経済性に優れ、建物を活用したまま免震改修を施す「免震レトロフィット構法」(※2)を採用したオフィスビル再生事業を、JR 総武線「津田沼」駅前のオフィスビルにて着手しております。

 不動産再生のコンサルティングサービスを手掛けるアセットマネジメント事業部コンバージョン事業推進部では、これまで、不動産の価値最大化と収益安定化を目指し、中古オフィスビル、中古マンション、法人寮・社宅などを対象に、数多くの不動産再生事業に取り組んで参りました。
 このたび、平成7 年に施行された「耐震改修促進法」の認定を受け、同事業推進部において取り組むオフィスビル再生事業として、JR 総武線「津田沼」駅前の『津田沼駅前安田ビル』(所在地:千葉県船橋市、竣工:昭和57 年6 月)の免震改修プロジェクトを実施して参ります。

 当プロジェクトの最大の特徴は、賃貸中(着工前(平成20 年3 月末時点)の賃貸稼働率:93%)のオフィスビルにおいて、「免震レトロフィット構法」を採用することで工事対象区域をワンフロアに留め、テナント全体への影響を最小限に抑えることで、多くのテナントが稼働したままの状態で免震改修工事を実現できることにあります。
 また、同構法は官公庁ビルや歴史的建造物など公共性の高い既存建物への採用事例が多く、今回のように民間の一般的なビルにおいての採用事例は多くありません。さらに、採用事例の多くが1 階部分を工事対象としているのに対し、当ビルにおいては、1・2 階部分に銀行店舗が入居している状況を踏まえ、中間階(3 階部分)を工事対象とした点も特徴としています。
 当プロジェクトの実現においては、テナント移転先の確保やスケジュール・工程管理など、長年にわたり当社が培ったディベロッパーとしてのノウハウに加え、三井住友建設(株)(本社:新宿区、社長:五十嵐久也)の持つ同構法の施工ノウハウ・技術により、実現できるものと考えております。

 旧耐震基準の中古オフィスビルは特に都市部で目立ち、好立地で稼動率が高いエリアほど、ビル稼働を止めて工事を行うことが困難であることから、耐震改修が進んでいないのが現状です。当社では、当プロジェトを皮切りに、不動産再生に対するコンサルティング力を活かしながら、今後も耐震改修を含めた中古オフィスビル再生事業に取り組んでいくことで、収益性の高い中古オフィスビルの供給を図っていく予定です。
 また、このような不動産再生事業を通して、中古オフィスビル流動化の促進、マーケットの活性化を図るとともに、スクラップ&ビルドではなく既存建物を再生、活用することで、事業における環境負荷の軽減を図ることも目指して参ります。

(参考)当プロジェクト実施の背景
平成7 年12 月の「耐震改修促進法」の施行以来、いわゆる「旧耐震」基準の中古オフィスビルについて、「新耐震」基準建物への早期耐震改修の必要性が叫ばれています。しかし、改修対象となる中古オフィスビルの実に35%(※3)に当たるビルが未だに耐震未改修であるという現状があります。 オフィスビルにおいて耐震改修が進まない理由の一つとして、契約テナントの立ち退き問題が挙げられますが、耐震改修のための投資コストや工期、工事箇所を必要最低限に抑えながら新耐震基準 で求める耐震性が確保できる当プロジェクトの実現により、中古オフィスビルの遵法化、新耐震基準への速やかな移行が可能となります。

(※1) 平成7 年1 月に発生した阪神淡路大震災を受けて同年12 月に施行
(※2) 柱を切断した部分に設置される積層ゴムと梁下に設置する粘性ダンパーの併用により、地震による揺れを軽減し、さらに粘性ダンパーで積層ゴムの変形を抑制することで、建物全体への高い耐震性能を確保することが可能となる免震構法
(※3) 財団法人日本不動産研究所が実施した「2006 年J-REIT オフィスビル調査」より

<「津田沼駅前安田ビル免震改修プロジェクト」3 階柱部分免震改修工事プロセス>
3 階柱部分免震改修工事プロセス 3Fフロア写真
<「免震レトロフィット構法」による免震改修工事のメリット>
■免震レトロフィット構法の4 つの特長
1. 改修工事領域が小さい
一般的な耐震改修工事は建物全体が工事フロアになりますが、中間階を使った免震レトロフィット構法では免震工事階を特定のフロアに集中できます。たとえば、10 階建てのビルの場合、工事フロアは2 階部分のみとし、他の階(1 階および3 階~10 階)は工事期間中も稼働可能です。これにより工期の短縮や、テナントに一時移転してもらうなどの負担が最低限に抑えられます。
2. 工事期間中も賃料収入が得られる
複層階にまたがる耐震改修工事では、テナント賃料の減少(キャッシュフローの悪化)が避けられません。免震レトロフィット構法による中間階免震改修工事の場合、免震装置設置階以外のフロア従来通り稼働させながら、工事が進められます。そのため、既存の賃料収入を大きく低下させることなく、効率よく改修工事が行えます。
3. 安心・安全に利用できる
耐震改修工事は、いわば建物を頑丈にして崩れないようにする工事です。一方、免震改修工事の場合は、地震に合わせて建物が揺れるので、建物内部の揺れが少なく済みます。そのため、什器、建物への被害が比較的少なく、安心・安全に利用できます。
4. 建て替えに比べて地球環境にやさしい
旧資産を生かすことにより、建て替えより少ない資源で耐震対応が可能ですので、地球環境にやさしい構法といえます。

●耐震改修工事と免震レトロフィット構法との比較
耐震改修工事と免震レトロフィット構法との比較

改修方法 梁、柱をブレース等により補強 免震階に 免震装置(積層ゴム&粘性ダンパー)を設置
工事実施フロア 全フロア 免震工事対象の1 フロア
PML 値
※地震による予想最大損失率
工事前 20% → 工事後15%弱 工事前 20% → 工事後 8%以下
改修工期 最短12 ヶ月
※テナントが居ながらにしての工事の場合
8 ヶ月
※テナントが居ながらにしての工事の場合

<津田沼駅前安田ビル 免震改修プロジェクト概要>
 昭和55 年に着工した建物。地下1 階、地上10 階建て。1~2 階に共通テナント(銀行店舗)があるため、3 階の事務所階を免震工事対象階として計画し、他のフロアの店舗は営業を継続して施工する。 積層ゴム系の免震装置と粘性ダンパーを組み合わせ、免震変形を30cm 程度に抑えている。建物が複雑な形状をしているため、耐震改修より免震改修のほうが耐震性能を高く引き出せる状態にあった。

■既存建物概要
建物名称 津田沼駅前安田ビルB ブロック 既存建物概要
所在地 千葉県船橋市前原西2-521
用途地域 商業地域
敷地面積 1407.1 ㎡(425.62 坪)
建築面積 1140.1 ㎡(344.88 坪)
容積対象面積 8374.8 ㎡(2533.36 坪)
法床面積 9538.1 ㎡(2885.26 坪)駐車場含む
賃室面積 5733.5 ㎡(1734.38 坪)
駐車場台数 64 台(32 台×タワーパーキング2 基)
竣工年 1982 年6 月(築25 年)
建物用途 事務所・店舗・駐車場
建ぺい率 100%
容積率 600%
構造・規模 SRC 造、およびRC 造
/地上10 階 地下1 階 塔屋1 階
設計 北新建設1 級建築士事務所
施工 北新建設・鉄建建設・戸田建設
 
■免震改修概要
免震構造形式 鉛プラグ入積層ゴム+積層ゴム+粘性ダンパー
クリアランス 水平方向±350mm,鉛直方向50mm
改修設計 (株)久米エンジニアリングシステム 他
改修施工 三井住友建設(株)

■旧耐震基準のビルは日本全国で35%(※)も残っている
 現在の耐震設計の考え方や基準は、昭和56 年6 月に改正・施行された建築基準法をベースとしており、建築業界では、現行法を「新耐震法」、昭和56 年の改正以前の法を「旧耐震法」と呼び、区別しています。また、各法の耐震性能基準に基づいて建てられた建物を、それぞれ「新耐震(基準建物)」、「旧耐震(基準建物)」などと呼んでいます。「新耐震」と「旧耐震」では、耐震性能に大きな差があり、たとえば平成7年に発生した阪神淡路大震災で倒壊・破損したのは、そのほとんどが「旧耐震」の建物でした。この経験を経て、同年12 月に「耐震改修促進法」が施行されました。
 同法は、現存する旧耐震基準の建物に対し、改修によって新耐震基準を満たすよう努力義務を課しました。ところが、法の施行から10 年経った平成18 年になっても、旧耐震基準の商業ビルは日本全国で35%も残っています。
※ 財団法人日本不動産研究所が実施した「2006 年J-REIT オフィスビル調査」より