不動産市況

20210423vol. 36

長引くコロナ禍における「収益不動産」の現状と留意点

~ 不動産を取り巻く環境は、激変した ~

3月21日で首都圏の緊急事態宣言が解除されたが、中心市街地ではその後「まん延防止重点措置」が発令され、再びの緊急事態宣言の発令も言われ始めている。ワクチンの開発が進み、日本でも段階的に接種が行われ、コロナ禍収束への期待も高まってきてはいるが、コロナ変異株の広がりは想定以上で、不安が高まっている。

また、東京オリンピック・パラリンピックは、海外からの観客を入れずに開催することが3月20日に正式決定された。ホテルなどの宿泊業や飲食業に多大な影響が出ることは必至であり、日本経済の下押し要因となる。

一方、不動産市況に大きな影響を与える金融情勢については、米国国債の利回りが、一時的ではあるが、上昇に転じたことで、株式市場に動揺が見られたものの、現状の金利水準自体が超低位であることから、不動産市場への影響は、足元では出ていない。

コロナ感染拡大阻止が最優先事項となっていることから、当分の間、人の移動が制限され、結果として、お金の流れも悪くなることは避けられない。ただ、支出が抑制され、個人も企業も、偏りはあるものの、預貯金は空前の水準になっていて、「金余り」が指摘されている。

何れにせよ、長引くコロナ禍によって、従来までとは異なった経済実態が生まれ、不動産市場にも分野による明暗をもたらしている。今回は、収益不動産の分野に、どのような現象が生まれているのかを検証し、解説してみたい。

景気の二極化が、投資市場を活性化

コロナ感染拡大が、既に1年以上続き、ワクチンの接種が開始されたとはいえ、その効果が出てくるまでには時間がかかり、コロナ禍収束への見通しは未だ立っていない。

むしろ、コロナ禍による企業業績への影響は、政府からの支援策が細っていくこともあり、これからを注視すべきだとも言える。

図表①




図表②




2月に行った帝国データバンクの企業意識調査によると、「既にマイナスの影響がある」が30.2%、「今後、マイナスの影響がある」が33.2%となっていて、先行きの厳しさを想定している。

ただ、日本経済全体を見渡してみると、2020年3月期決算で業績を上方修正した企業は、製造業、小売業、各種のサービス業、情報・通信業などで数多くみられる。これらの企業にとって、コロナ禍が追い風となっている。

もちろん、逆風となって、倒産・廃業・休業を余儀なくされている事業会社が多いのも事実である。業績が事業分野や個別企業で二極化していると言える。このことは、先程の帝国データバンクの調査(図表①②)でも明らかになっている。

図表③




図表④




そして、実は、企業業績の2極分化が不動産に活況をもたらしている。

景気全体が悪化している時には資金の確保が必要となり、資産売却が増加するが、買い主がなかなか出現しないケースが多い。しかし、現在のコロナ禍では好業績の企業も多く、創業以来の最高益を更新した企業も珍しくない。図表③④で見ると、市場における各種の物件の在庫が、昨夏以降、減少傾向を示している。企業業績の二極化の進行は、売主が増えると同時に、買い主も増える、という構図を生んでいる。好業績企業の不動産投資意欲は、超低金利下もあって旺盛になっていて、高値圏での取引も少なくない。

不動産市場では、企業の存在感がますます高まっている。その結果、東京都心部の優良物件には引き合いが多く、品薄、価格の高止まり現象が続いている。

また、機関投資家も依然として、不動産への積極的な姿勢を持ち続けている。

事業環境の変化で、投資対象をシフト

図表⑤




図表⑥




コロナ禍による経済危機を回避するために、日銀は大規模な金融緩和に動き、巨額の財政出動を行なっている。また、外出自粛要請を推し進めた結果、個人も企業も出費が減少することになり、手元の現預金が急増している。その資金は不動産にも向かっていて、コロナ禍でも積極的な購入姿勢は衰えていない(図表⑤)。

ただ、その取得対象とする不動産の種別については、従前とは変えつつある。個人の場合には、投資金額に少なからず上限があることから、対象の多くがレジデンシャル(住居)系で変化は少ないが、機関投資家は、投資対象の選別、シフトを進めている。

図表⑥は、2015年から昨年までのJ-REITによるアセットタイプ別の取得割合の推移を示したものだが、新型コロナの感染拡大によって、不動産を取り巻く環境が激変し、物件の種別による収益力に格差が生まれたことで、投資対象を見直す動きが出てきた。コロナ禍前では、ホテルやオフィス、商業施設や物流施設の需要が拡大傾向にあったが、コロナ禍で人々の移動が制限されると同時に、「非接触」が求められ、生活と働き方の変革を余儀なくされた結果、賃貸オフィスや店舗の需要の減少傾向が強まり、空室の増加、テナント料の減額要請も増加している。また、インバウンド客をターゲットとして増え続けてきたホテル等の宿泊施設でも、収益力が激減したことは言うまでもない。

一方、ネットによる商品購入は、以前にも増して急増、物流施設は大量供給にもかかわらず、需要の急拡大で空室は実質ゼロに近くなっている。また、住居系は需給関係に変化はなく、安定した収益が見込まれることから、人気は高い。

何れにせよ、コロナ禍による需給関係の変化で、投資対象の見直しが始まっている。

今後の不動産投資の留意点について

コロナ禍によって、各種の不動産の需給関係が大きく変化したことは確かであり、アフターコロナ時代を見据えた投資基準を自身でしっかりと確立しておくことの重要性は、論を待たない。ここでは、今後の収益不動産についての留意点を挙げてみたい。

A)立地が第一と考えたい。更に、誰もが取得を希望する希少性があることが望ましい。そのためには、多少の利回りの低さは認める。

B)地域内での需給状況の実態を熟知すると同時に、今後の需給見通しを考える。現在の、国内のホテル大量供給による競争激化は他山の石として、失敗を繰り返さないようにしたい。

C)前項のBとも関連するが、「安定的な収益」が確保できるか、確認を怠らない。

D)換金しやすい規模の不動産であるかどうか、購入者側の融資面を含めて、考慮しておく必要がある。同時に、管理や運営が手軽で簡便であることも、負担を軽くすることになる。

最後に、不動産も量より質の時代にあることを、強く認識しておきたい。


不動産市況アナリスト 幸田昌則氏
ネットワーク88主宰。不動産業の事業戦略アドバイスのほか、資産家を対象とした講演を全国で多数行う。市況予測の確かさに定評がある。

TOPへ戻る