不動産市況

20181001vol. 27

異次元の金融緩和から「選別融資」の時代へ環境が変化

今春以降、不動産への融資に対する金融機関の姿勢が変化している。相続税の強化もあり、賃貸アパートが大量に建築されたが、空室の増加が顕著となったことで、日銀や金融庁が注意喚起を行なった。その後、スルガ銀行の不祥事が発覚したこともあり、金融機関が不動産融資に慎重になってきた。

「誰にでも、いくらでも融資する」時代から、「買い主や取引対象となる不動産の属性を吟味する」時代への転換期が訪れたと言える。

同時に、金利水準についても、日本銀行が最近になって金利の上昇を容認する方向に態度を変えたことで、住宅ローンの金利がジワリと上昇する気配が出てきた。

何れにせよ、不動産を取り巻く環境に変化が生まれたことは確かであり、不動産市場に対する影響が出てくることになる。ただし、現段階では、90年のバブル時やリーマンショック直後のような、全金融機関が一律・全面的、即時に融資姿勢を変える事態ではなく、緩やかに、そして貸出先を選別しながら融資をしていて見えにくい状況下にあると言えるが、これまでとは違う事に間違いはない。

日銀の「金融機関の貸出態度」のデータを見ても、不動産に対する融資の積極姿勢は既に天井を打ち、ピークアウトしている。リーマンショック以降からの金融緩和のトレンドが終わったものと考えられる。

不動産価格の調整期に入っていく

不動産の取引は、金融動向と密接な関係にあるのは、周知の事実である。大半の不動産取引は、融資によって決済されるからである。

金融機関による選別融資が進んでいけば、不動産を購入できる人が少なくなっていくことになり、これまでの「競って買い上げていく」現象は沈静化していくにつながり、不動産取引の件数自体は、減少傾向を辿ることになる。

ただ、現時点では、「個人の富裕層」や「企業」への融資姿勢は従来通りか、もしくはより積極的になっている様子が窺える。

また、見方を変えると、これから不動産を購入する人達にとっては、好都合の時代になると言える。購入できる人が少なくなることは、即ち、売り手市場から買い手市場へと移行していく可能性が高くなることを示唆している。

しかし、いつの時代でも希少性の高い一部の不動産の価格は、当分の間、高値での推移が予想される。その理由は、供給数が少なく、買いを希望する人は、依然として多いからである。

地域や地点による価格の格差拡大は強まる

先般、今年の路線価が発表されたが、3大都市圏や地方中枢都市の上昇は著しいものだった。特に、都心部の商業地価は、数年間に亘って大幅な上昇が続いている。

図表①は、主要な地点の最高路線価の坪単価の推移を示したものだが、東京の銀座では、バブル期の価格を超えている。デフレの時代が20年間も続いている中での現象であり、今回の異次元の金融緩和がもたらした結果と言える。このような現象は、札幌・仙台・広島・福岡の地方中枢都市の中心部でも生まれている。(図表②)

こうした地点に、大量の資金が集中的に流入したことが地価上昇の背景にあることは、疑う余地がない。そして、これらの地点に共通しているのは、地域の経済力や人口の増加であり、地域の経済力が弱く、人口の減少が続いているところでは見られない(図表③)。大量の資金は、魅力のある街に向かう性質を持っているということを物語っている。

さらに、近年では地域による価格格差だけでなく、地点による格差の拡大も、一段と進行している。図表④は、駅からの距離別に見た公示地価の変動率を示したものだが、1㎞未満の地点では、年々地価の上昇が強まっているのに比して、3㎞を超える徒歩圏外では下落傾向が続いていて、二極化が著しくなっている。

地方圏のクルマ社会では駅中心の社会ではないため、都会とは異なるが、買い物や通勤の利便性の良否による価格差の拡大は続いている。この傾向は、人口減少や高齢化社会の進行によって更に強まっていくことは避けられない。

企業の不動産への関心が、ますます高まっている

この数年間、不動産市場で存在感を強めているのは「高齢者」と並んで「企業」である。経済のグローバル化、ネット社会の定着、人口減少等、企業を取り巻く事業環境が激変したことで、企業規模の縮小と拡大、事業の転換を余儀なくされている。このため、経営資源としての不動産の重要さが強く認識されるようになってきている。

その注目点は、不動産の特性である安定した収益力にあり、最近では、鉄道、デパート、老舗のメーカー、更には建設会社など、業種を問わず不動産への関心を高めていて、売買や土地の有効活用を積極的に行っている。

人生100年時代、資産運用をする人も多い

超・長寿社会となったが、預貯金の利息は皆無、年金も将来に亘ってもらえるのか分からない等々、将来への不安を持つ人が増え、収入を少しでも増やしたいと考える人は少なくない。

最近では、株式、外貨預金、リートなど、運用先も多様化しているが、不動産投資意欲も衰えてはいない。

ただし、今後は不動産の質(希少性)が問われることになる。不動産の価値を見極める力が試される時代だと言える。

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