不動産市況

20200701vol. 33

「新型コロナウイルス」が実体経済を直撃。 不動産市場は激変

新型コロナウイルスは全世界に感染が拡大し、死者数も数十万人に達し、世界経済に大きな影響を与えている。その大きさはリーマンショックを超えるとの試算も出ている。
外出自粛要請によって、人々の移動が規制されたことで、経済活動は停滞した。この間、鉄道、航空、旅行、ホテル業界などに留まらず、小売業界の経営状況も悪化した。アパレル業界の老舗メーカー、レナウンの破綻もあった。大企業、中小零細の規模を問わず、全産業に亘ってコロナショックの影響は深刻なものになっているが、5月末には緊急事態宣言が解除されて、新型コロナ感染拡大の阻止一辺倒から、経済活動の再開に向けた政策にも注力されることになった。

しかし、足元の実体経済の早期回復は難しく、むしろ悪化の過程にあるとの見解もある。事実、企業の倒産件数は急増している(図表①)。その結果、失業者数は増加、従業員給与の減少で急場をしのいだり、夏季ボーナスを減額したりする企業も珍しくない。

また、来春の新卒採用の中止、内定取り消しも見られ、経済の先行き不安が産業界に拡がっている。
今後、国内のウイルス感染者数がゼロになったとしても、経済のグローバル化が定着している実状を考えると、「人、物、金」の動きが世界レベルで活発にならないと、回復は難しいと思われる。一例を挙げると、ホテル業界は、これまでインバウンド客によって支えられてきたことは言うまでもない。自動車の輸出も欧米の需要回復が条件となる。また、日中は相互依存の上で経済活動を行なっていることから、中国との「物と人」の往来は必要不可欠であり、その扉が開かれるまでには、まだ時間がかかる。緊急事態宣言の解除で、即座に元の経済状況に戻ることは期待できないと覚悟しておきたい。
さて、混乱の続く中で、不動産市場の動きはどのようになっているのか、新型コロナウイルスの影響の度合いを、REIT(不動産投資信託)の投資口価格の推移から検証してみたい。
5つのグラフは、「ホテル特化型」「商業施設特化型」「物流施設特化型」「住宅特化型」「オフィス特化型」のそれぞれの価格推移を示したものである(図表②〜⑥)。

ホテル、商業施設は苦戦

下落が最も著しいのは「ホテル特化型」のREITであり、昨年までの水準が今年に入り、半分以下にまで下落している。訪日客が皆無となり、国内でも外出自粛によって旅行・出張がキャンセルされ、日本人客も不在の状態が続いたことを反映している。市場には、売りホテル・売り旅館などの宿泊施設が増加している。

「商業施設」についても、下落幅は大きくなったが、休業を止むなくされていて、飲食業、小売業にはテナント料を支払えなくなっているところが多く、オーナー、テナント双方が苦境に立たされていて、行政が一部を負担するという政治問題にもなった。外出自粛が解除されても、顧客が以前のように戻ってくるのか、危惧されている。

また、非接触型のビジネスモデルへの移行が進んでいくことで、店舗需要の縮小は避けられない。

「物流施設」は好調。「住宅」は堅調

外出自粛が徹底され、店舗も閉じられた結果、必然的にネットによる物品の購入が活発となり、その機能を支える物流施設は、需要が拡大している。この動きは、コロナ問題が収束したとしても、強まることは確実だが、今後も大量に建設され続けられると、需給は緩和されることになる。

次に、住宅については、どんな時でも人の住むところは必要で、現段階では堅調に推移している。ただ、今後、所得水準の切り下げなどが常態化すると、住宅特化型のREITの評価にも変化が生まれる可能性は否定できない。

「オフィス」は、見直される局面に

この数年間、企業、特に大企業の業績拡大が続き、オフィス需要は強く、賃料も上昇傾向にあったが、コロナショックによって実体経済は悪化、勤労スタイルもテレワークが推奨されるなど大きく変化している。今後も在宅ワークなどの傾向が強まることはあっても、後退するとは考えにくいことから、需給緩和へ転じるとのサインがグラフに出ているものと思われる。

このように、各種REITの価格変動はコロナショックの影響と今後についての市場の見方を反映していることは明らかである。

最後に、不動産市場の動きの中で注目しておきたいことは、売り物件数が急増していることであるが、不況期には常に見られる現象である。

不況時には現金が必要となり、不動産に限らず様々な資産の換金が行われる。「有事の時の現金」ということで、その最たるものの一つが不動産である。売り物件数の増加に伴い、価格の下落傾向が鮮明になっている。逆に、大不況期には、優良物件取得のチャンスとなる。「手持ちの現金」の出番だと言える。

今後の不動産に対する視点

国内での感染拡大については、第2波、第3波が想定されることや、安心できる生活環境が戻るためには、海外での収束も必要となることから、まだまだ自粛マインドが消えることはなく、早急な経済回復は難しい。

このことを反映して、不動産市場全体の規模は縮小傾向が続くことになるが、ポストコロナでは、格差社会が一段と進むことになる。

現に、余裕資金を持っている富裕層の人達にとっては、10年ぶりの投資機会となっている。最近では、好立地の高い利回り物件も市場に出てきている。不況の時こそ、安定的な収益を得られる優良物件を取得できるチャンスと言える。バブル期は売り、不況期は買い、という言葉を実行する時が、やっと来た。

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