不動産市況

20200302vol. 32

不動産市場は「リスクとチャンス」が同居する年に

2020年は、年初から政治・経済共に波乱を予想させる動きで始まった。米中貿易戦争に加えて、米国とイランの関係悪化で、株価が乱高下を繰り返した。

更には、新型肺炎の拡がりが、中国だけでなく、日本をはじめとする東南アジア諸国を飛び越え、世界中に深刻な影響を与えている。感染への不安は、健康面への影響だけではなく、多くの産業に甚大な被害をもたらしている。こうした不安定な状況が続くことを前提とした対応が求められる年だと言える。

さて、今年の不動産市場は、金融機関の不動産に対する融資姿勢が鍵を握ることに変わりはないが、景気の悪化による影響も考えられる。これまでの好況から、景気の減速が続いていくと、購買心理が変化していくことが十分に想定される。

一方で、不況期になると、様々な理由で不動産の売却数が増加していくことは、過去の歴史から見ても明らかであり、市場に在庫が積み上がり、価格調整に拍車がかかってくることになる。

今年は、これまでの「売り手市場」から「買い手市場」へと変化する年の始まりとなることは必至であり、買い主にとってはチャンスとなる。既に、昨秋以降、売りホテル、売れ残ったマンションの値下げ処分も増えてきている。ただし、希少価値のあるものについては、依然として高値水準での取引となっていて、一律ではない。

市場では、「売れない不動産」と「売れる不動産」が明確になっていて、二極化が一段と進行している。売れないリスクも高まっている。

「富裕層」への課税強化が鮮明になっている

政府与党は、海外の不動産への投資を通じた節税をできないようにする方針だ。海外の不動産への投資は富裕層に多い節税策で、他の納税者との間で公平ではない仕組みだと判断したとしている。この節税は米国などで高額な不動産を購入し、家賃収入を上回る減価償却費などで赤字を発生させ、日本での所得を圧縮する方法である。しかし、近年、多くの富裕層で拡大していることから、海外不動産投資による節税を認めない方針だという。

格差社会が進行していく中で、富裕層は増加傾向が続いている。税収の伸びが見込めないとの判断もあり、資産課税の強化は更に強まることが予想される(図表①)。従来までの節税対策にもメスが入ることは、確実と言える。

頻発する「災害」リスクを考えた不動産投資の時代になった

昨秋、公表された基準地価で、全国で最大の下げ幅を記録した商業地・住宅地は、岡山県倉敷市の真備町川辺地区だった。一昨年夏の西日本豪雨で河川が氾濫し、浸水した地区であり、その後は人口も急減した。

最近、大規模な自然災害の発生が珍しくなくなっている。何時、何処で起きても驚かなくなってしまった。住居を選ぶ際の災害リスクには、十分な配慮が必要な時代になったことを認識しておきたい。

住居の損壊・消滅は、資産をロスするだけでなく、時には人生そのものを失くすことになる(図表②)。
不動産投資の際にも、地域・地点の過去の地歴等にも注意を払いたい。首都圏でも、武蔵小杉の例は記憶に新しく、同じような失敗をしたくないものである。
投資の際には、利回りや節税効果に偏重した判断だけでは不十分であり、幅広い視点で将来を見据えた決断をして欲しい。

店舗需要は転換期に。ネット社会になり、無店舗化の動きに拍車がかかっている

この数年、3大都市圏と地方中核都市のオフィスの需給関係は良好で、空室率も低い。そのため、募集賃料も上昇が続いている。賃貸オフィス市況は「我が世の春」と言っても過言ではない。

一方、店舗の需要には大きな変化が生まれている。先ず、デパートやスーパーマーケットでは、閉鎖する例が多くなっている。そごうや西武百貨店では次々と閉鎖を発表、最盛期の約3分の1にまで減少している。また、女性ブランドの「23区」等を展開してきたオンワードホールディングスは、国内外の約2割に相当する約600店舗を閉鎖することを決めた。今後はインターネットによる販売に転換していく方針だという。

同様の動きは金融機関でも拡大している。店舗の削減でコストを下げ、利益の改善を図るというもので、AIを駆使して効率化を目指す動きも広がっている。

何れにせよ、インターネットによる通販が更に普及していく時代となり、店舗による従来型の小売業は転換を迫られている(図表③)。

更に、昨秋以降、小売業や飲食業の中には、人手不足に加えて業績の悪化もあって、数十店舗単位で店を閉鎖する例が見られるようになっている。

今年、お金をかけたいと思うものは何か?

昨年11月に、ある民間の研究所が「2020年の生活気分」についての調査結果を発表した。対象は全国の20~69歳の男女3900人に聞いたものだが、景気については「悪くなる」という声が多く40%を超えていて、「今年は厳しい」との見方をしている。

また、今年「お金をかけたい」ものについては、1位が旅行、僅差で「貯金」となっている。貯金に次いで前年比で大幅に増加しているのは「老後の暮らしの準備」であり、「株式などへの投資」も多くなっている。人生100年時代を強く意識している姿である。

興味深いものとしては、「普段の食事」や「外食」への出費を減らすというもので、2020年の変化に備えて「食べる」より「貯める」を重視する現実的な考え方だと言える(図表④)。

最後に、今年はアベノミクス効果が失くなり、不動産の市況は数年ぶりの転換期(価格調整期)となる可能性が高いと考えらえる。

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