不動産市況

20191101vol. 31

超低金利下での優良不動産を求める動きは根強い

― 景気の不透明から、資産分散を急ぐ ―

米国と中国による貿易戦争の解決への道筋が見えないことで、世界経済は動揺し、株式市場も波乱含みの展開となっている。株価は乱高下し、中国だけでなく、ヨーロッパでも景気の減速感は強まっている。これまで好調が続いてきた米国でも、景気に陰りが見え始めている。

最近では、こうした動きから、世界同時不況の到来を懸念する声も出てきた。足元の日本経済を見ても、輸出額の前年同月比割れが何か月も続いており、景気減速が感じられるようになってきた(図表①)。

企業の業績は以前に比べて悪化しており、特に、中国や韓国との貿易は、縮小傾向が鮮明となってきた。経済の悪化がこのまま続くことになれば、いずれ、日本の不動産市況にも影響が及ぶことになる。特に、顧客の購買心理を削ぐことになりかねない。

令和の時代に入り、金融機関の不動産に対する融資姿勢が大きく変化しているところに景気の悪化が加わってくれば、不動産の需給状況にも変化をもたらすことは必至と言える。この数年間の「売り手市場」から「買い手市場」への転換期を迎えている。これまでの「誰もが、いくらでも」資金を借りられるという時代は終わった。

常態化した超低金利下で、不動産取得の意欲は衰えず

不動産に対する融資が厳しくなったことで、取引量は減少していくことになるが、その実態を見ると、

①金融機関から要求される自己資金の割合が上がった。
最近では、取引価格の2〜3割が普通で、5割という例も出ている。「貸しません」というメッセージだとも考えられる。

②全額融資は基本的には無くなった。
投資目的ではない住宅ローンについても、フルローン(全額融資)は皆無になった。従来までは、手数料も含めてのオーバーローンも少なくなったが、状況は一変してしまった。

③物件の担保評価が厳しくなった。
この数年間、不動産価格は大都市の中心部や高級住宅地などで高騰してきた。その結果、利回りは低下し、不動産の収益力が落ち、以前に比べて魅力が失われた。そのことを考慮して、金融機関は担保評価の見直しを急いでいる。

④買い主の「年収」「保有している資産」についても、従来の条件より厳しい見方をしている。融資のハードルを、より高くしている。
高額所得者や、多くの資産を保有している富裕層であっても、これまでの累積の融資額を上限と見て、それ以上の融資を拒否する例が多くなっている。

⑤その他、共同担保を要求されたり、融資期間を短くされたりする例も少なくない。
このように、様々な形で融資状況は厳しくなっているが、「超低金利」という条件は依然として続いており、不動産による収入を得たいという意欲は、決して低下していない。
預金していても利息は期待できないし、株価の先行きも見えにくく、リスクが大きいと感じる人は多い。最近では、収益はないが「金」を求める動きも強まっている。
融資状況が厳しくなっていることで、手元の資金に余裕がある人(企業)や金融機関からの資金調達ができる人(企業)は、立地条件の良いものを購入する姿勢を強めていて、「買い増し」をしている。

10月の消費増税前後の損得は?

日本でも、年間所得1億円以上の人や、多額の資産を保有する人が増加している(図表②)。一方、企業でも好業績を続けているところは、少なくない。
そうした人や企業は、自分で、あるいは本業で、十分に稼いでいることから、不動産で稼ぐというより、不動産で節税したいという動きが急速に強まっている。
この背景には、従来「保険」による節税をしていた人(企業)が、その手段を断たれたことで、結果的にその資産が不動産に向かうという現象を生んでいる。
そのため、高い利回りよりも、利回りは低くても質の高い、即ち「立地条件」に優れた中心部の不動産を求めている。
人口減少、高齢化社会、格差社会の出現、日本経済の先行き不安などから、利回りが低くても、質の高い不動産を希望する人が多くなるものと考えられる。

明暗を分け始めた、オフィスとホテル需要

3大都市圏や中枢都市のオフィスの需給関係は極めて良好で、現時点では、ビルオーナーは「我が世の春」を謳歌している(図表③)。一方、ホテルは供給過多で数的にはピークを打ち、事業としての厳しさが出てきている。最近では、「宿泊施設を売りたい」との水面下での要望も増加している。観光客が溢れているとの報道が目立つ京都であっても、空室の数が増え、室料は急速に弱含みとなっている(図表④)。

五輪を当て込んだり、インバウンドの増加への過大な期待をしたりしての大量供給の「つけ」が露見し始めており、今後、リスクを無視した事業展開の後始末を迫られる。
不動産投資に限らないが、「みんなで渡れば怖くない」という考え方から、「みんなでするものは、やらない」という考え方も大切にすると同時に、自分自身の価値基準を持って判断することが大事になっている。

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