不動産市況

20190801vol. 30

住宅・不動産、全体の市況が転換期に入ってきた

令和に元号が変わるということで、今春頃は日本経済に明るさを期待する向きもあったが、土日を含めれば史上初めてと言われた5月の10連休後の景況は、むしろ後退している感が否めない。また、日韓関係も気がかりである。その最大の要因は、米中の貿易摩擦であることは論を待たないが、最近の米国と中国の政治・経済の「駆け引き」の状況を見ると、泥沼化の様相を呈しており、早急に好転することは期待できそうにない。今後、日本経済は後退局面に入り、その後には反転するというシナリオではなく、当分の間、「鍋底」型で推移していくことを前提にして、不動産市場を注視していくことが望ましい。更に、日本経済の動向にもまして不動産市況を左右するのは、「金融情勢」であることは言うまでもない。

スルガ銀行の不祥事発覚以降も、次々と不動産向けの不正融資の実態が明るみに出て、金融庁の不動産取引を見る目は厳しさを増している(図表①)。その結果、賃貸アパートへの融資は急減している。更に、個人の住宅ローンに対しても審査が厳しくなっていて、件数・金額とも低下傾向が鮮明になってきている。その結果、市場の停滞感が強まっている。特に、不動産業者間の取引量は減少が著しくなっていて、今後、資金回収を急ぐ動きが目立ってくるものと考えられる。

「事業用不動産」の売却の増加が顕著に

1年ほど前までは、多くの金融機関が「誰にでも、いくらでも融資する」という姿勢であった。「サラーマン投資家」という単語がテレビ・雑誌で踊り、関連する書籍も、多数、出版された。また、この10年を振り返ると、リーマンショック直後には、事業用売り物件が、資金の回収を急ぐために市場へ大量に放出されたものだが、5年ほどで売り物件は急減し、その後は優良物件の取得競争が激化した結果、物件の価格が釣り上がり、在庫不足となった(図表②)。超低金利と異次元の金融緩和のパワーを、まざまざと見せつけられた。

しかし、昨年の秋頃から変化が見られ、最近では売り物が増加傾向に転じている。相続税が強化されたことで、地主等の土地資産家を中心として、節税目的で大量の賃貸アパートが建設された。同時に、その収益性に目を付けて、若いサラリーマン等が賃貸アパートの経営に乗り出していった。しかし、市場の需給バランスを考慮しなかった人も多く、空室の増加、家賃の低下で計画通りの経営ができず、損切りして手放したり、破綻したりする例も出ている。

また、こうした事業採算の悪化だけではなく、高齢のオーナーでは、「保有するのが煩わしい」「子供が賃貸アパートを持ちたくない」など、様々な理由により、全国各地で売り物が増加している。ただ、先般、北海道各地の方々と情報交換した際には、1千万〜2千万円前後のアパートは人気で品不足だという。全額自己資金で購入、銀行預金よりも収益が良い、ということに加えて、新規の供給がほとんどなく、需給面でのバランスが取れており、収支が安定しているとのことであった。もっとも、高額な賃貸マンションの取引は少ないということであった。

金融が引き締まったとはいえ、超低金利下でもあり、投資対象としての不動産への関心は依然として高い。ただ、見誤ってはいけないのは、需要があるのは「中心部・駅近」であり、地域での「ブランド力のある地点」に限られつつある。

図表③は、駅からの距離別に見た中古マンションの成約坪単価であるが、駅近とバス便とでは、天地の開きがある。地域によっては5倍にもなっている。今後、人口減少、少人数世帯の増加、高齢者の増加、大都市への人口流入を考えた時、この傾向は一段と強まることは必至と言える。

10月の消費増税前後の損得は?

市場の動きを細かに観察しているが、ここまでのところ、住宅・不動産の購入希望者が消費増税を強く意識して動いているケースは、無くはないが、大きな「うねり」は感じられない。販売側の「消費増税前にご購入を」とのセールストークの熱心さに比べて、購入者側は、自分のペースで物件を選んでいる。

図表④で示されているように、消費税の税率アップは過去2回経験しているが、今回は冷静に見ている人が多い。消費税の存在を無視する訳ではないが、不動産の購入で最も重視するのは、通勤・通学・買い物などの利便性と価格であり、このバランスが取れているものが見つかれば、その時に買う、という姿勢の人が多くなっていると思われる。「立地」による二極化は一段と強まり、資産価値の高くなるもの、無くなるものとに峻別されていくことになる。

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