不動産市況

20190117vol. 28

金融情勢が変化し、不動産の「質」が問われる時代に

長らく続いている大幅な金融緩和と超低金利政策に加えて、2015年1月から実施された相続税強化政策への対策需要もあり、日本の住宅・不動産の需要が喚起され、拡大に拍車がかかり、大活況を呈してきた。

特に、相続税の強化が国会で決まってからは、不動産がもつ節税効果と収益性が評価され、賃貸住宅(収益不動産)の需要が拡大し、不動産の購入や建築の意欲は頂点に達した。特に、賃貸住宅への関心が高まり、この数年間、アパートの建築ラッシュが続いている。それ以前は、人口減少や空き家の増加もあり、貸家着工数は減少傾向にあったが、様子は一変した。加えて、「人生100年時代」と連呼されるようになり、将来不安・年金不安から、資産作りの一環としての不動産投資も積極的に行なわれた。

その結果、全国各地で空室が増加し、家賃は弱含みの状態になった。日本全体では人口が減少する中で、人口増加が続いている東京圏でも、空室数は依然として高水準となっているし(図表①)、結果として平均家賃は下落傾向となっている。

ただ、賃貸市場の実態を見ると、二極化現象が一段と進行している。例えば、駅近の利便性に優れたところでは常に満室で、家賃も高く維持され、時には、退去後には以前より高い家賃を設定しても即時に成約する例は少なくない。一方では、家賃を下げても成約しないまま、長期に亘って空いたままという例も多い。

安定した収益を得る条件

賃貸市場は、今後、オフィス・店舗・物流施設・住宅の種別を問わず、中長期的には供給過多となることが想定される。一時的に不足することはあっても、人口が減少する地域では、いずれ供給が需要を上回ることになる。需給が緩和されていくと、「二極化」現象が生まれ、格差は一段と拡大していくことになる。即ち、家賃収入が確実に得られる不動産と、そうでない不安定なものとに区分けされていくことが不可避となる。結果として、市場における物件ごとの競争力が、今後、厳しく問われることになる。競争力がなければ、期待した家賃収入は得られなくなる。

競争力のある魅力的な物件の条件

図表②は、国土交通省の「住宅市場動向調査」による「民間賃貸住宅の選択理由」の上位3つを示したものであるが、世相を反映して、トップは「適切な家賃」設定となっている。次いで「立地」となっている。持ち家とは異なり、賃貸住宅を選択する時、通勤や買い物などの利便性を優先する傾向は、近年、一段と強まっている。

図表③は、3大都市圏における通勤時間を「住み替え前」と「住み替え後」にどのように変わったかを示したものだが、民間賃貸住宅では、通勤時間が大幅に短縮されていて、駅近や中心市街地へ近いことへの欲求が高まっていることがよくわかる。

また、見逃してはならないのは、住宅の「デザイン、広さ、設備」の良否も競争力に影響を与えるということである。立地・家賃に加えて、年々、これらの条件が重視されるようになってきた。この良否については、リフォームなどで利用価値を高める投資を惜しんではならない。

「立地」が劣る競争力のない不動産への対応

賃貸住宅に限らず、オフィス・店舗などで最も優先される条件は「立地」であり、価値の有無はこれによって決まると言ってもよい。

図表④は、三大都市圏における地価の、駅からの距離別の変動率を示したものだが、年々、格差が拡大している。同じ最寄駅であっても、そこからの距離によって、資産価値に差がつくようになっているのが、実態である。加えて、全国平均よりも、大都市圏の方が、「近いところはより高く」の傾向が強くなっている。

所有する不動産の立地が劣ると判断したら、売却して立地の良いものへと資産の「組み替え」をしていくことも必要である。立地条件の悪い不動産を多く所有するよりも、立地に優れたところのみを所有する時代となった。量よりも質を重視したい。

「購入できる人」が減れば、チャンスは増える

2018年の春先まで、金融機関の多くは、不動産購入希望者に対して「誰にでも、いくらでも融資する」という姿勢であったが、現在では様変わりし、不動産投資に警戒心を強めている。その結果、「買える人」が急減していて、物件を取得するための競争は少なくなっている。

一方、高齢化社会の進行、中小企業の事業承継問題などで、今後、市場には優良な不動産が放出されてくる可能性は高い。投資のチャンスも多くなるが、大切なことは、自らの「目利きの力」を日頃から鍛えておくことである。そして、そのためにも、もさることながら、プロ 専門家のノウハウや情報網を大いに利用し判断材料として活かすことである。 したい。また、高い利回りよりも、安定した収益力と「換金性」が高いこと、つまり「売却しやすいこと」も視点として、持っておきたい。

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