不動産市況

20231017vol. 46

不安定な中国経済、日本への影響はどうなるのか? 〜 限定的だが、存在感は残る 〜

 インフレの進行が懸念される日本だが、欧米各国も同様で、政策金利の引き上げが行われているが、中国では逆に、金利を引き下げる政策が採られている。昨今、盛んにニュース等でも取り上げられているが、日本の輸出先シェアが最大の中国経済が揺らいでいる。日米欧とは異なり、デフレが進行しているようにも見える。私は経済の専門家ではないが、90年代の日本の不動産バブルの崩壊と、その後の長期に亘るデフレ経済を想起させるものである。住宅・不動産のバブル崩壊を日本に学んだと言われていた中国が、現在、バブル崩壊で苦しんでいる。中国経済低迷の最大の要因は、不動産市況の悪化によるものと考えられる。中国における不動産バブルの崩壊は、まだ始まったばかりで、今後、政府が手を差し延べない限り、不動産事業者の破綻が相次ぐことが予想される。既に、不動産大手の中国恒大集団による米国での破産申請に続き、最大手の碧桂園が過去最大の赤字を計上した。更に、融創中国という大手の会社も、米国で連邦破産法の申請をした。その負債総額は今年6月末時点で約20兆円にも達していると報じられている。中国恒大集団や碧桂園の負債総額はその比ではなく、膨大な負債額で、再建への道程は遠いと言える。また、住宅だけでなく、オフィス市場でも需要が鈍化しつつあり、上海・北京などの経済の中心地で、入居率が低下し、テナント料は弱含みになっていると報じられている。今後、中国の不動産バブル崩壊が一段と深刻になっていくことは必至で、それに伴って金融機関の損失が膨らむ事態になることが容易に想定できる。金融システム全体にリスクが及び、中国経済、更に、アジア経済にも影響が出てくる可能性もある。今回、中国の不動産バブル崩壊を発火点にして、中国経済の長期に亘る低迷も想定されるが、日本への影響について記してみたい。●訪日する中国人の戻りは鈍い(図表①)

日本政府観光局によると、8月の訪日外国人全体の客数は約21万人となり、全体ではコロナ前の2019年同月の85%にまで回復したが、中国は約36%にとどまった。福島原発の処理水放出への反発の影響もあったと考えられるが、従来までの水準に戻るか懸念される。

しかし、日本の90年不動産バブル崩壊以降の経済状況を辿るようなことになれば、元に戻ることは期待しにくい。

ただ、中国国内の富裕層は多く、日本と同様な状況に陥るか否かは、わからない。

(図表①)

●日本の不動産市場における中国の存在感は

ここでは、それぞれの地域で、地元の不動産事業者から聞いた生の声を記してみたい。

①関西圏でも、収益物件の動きは好調で、高額な収益物件の3分の1は、中国系の投資家が購入している。(大阪)

②中国の不動産市況の低迷からか、中国資本の大阪・京都への投資が活況を呈している。(京都)

③京都の中心地点では、マンションの価格水準は高値で張り付いた状態を維持しており、億を超えると中国系の人が買い支えるために、落ちて来ない。(京都)

④東京でも、豊島区池袋では、駅徒歩5分以内の区分マンションの購入の問い合わせは、9割以上が中国人となっている。(東京)

⑤軽井沢も、中国人の購入希望者が少なくない。(軽井沢)

このような事例は、福岡市などでも聞かれるが、こうした背景には、収益を目的とした購入だけではなく、中国国内の政治情勢を考えての取得だとも推測される。

ただ、夏休み明け、京都市内の不動産会社からは、「9月に入ってからは中国人からの投資需要は急減した」「問い合わせがゼロになった」との話を聞いた。

これらを総合してみると、中国における不動産バブルの崩壊が顕在化し、それを契機に中国経済が低迷期に入ることが想定される。

バブル崩壊で、既に、個人・企業の債務が膨らんでおり、デフレ経済に陥る可能性は否定できないと考えている。

ただ、その影響がどのように及んでくるのかは、定かではない。今後の動きに注目をしてみたい。

●今年の基準地価から見た日本の不動産市場

さて、9月19日に国土交通省より今年の基準地価が発表され、全国平均は2年連続の上昇となったが、地域・地点による格差拡大、二極化が一段と進んでいる。

主たる動きを、以下に挙げてみた(図表②~⑤)。

(図表②)
(図表③)

(図表④)
(図表⑤)

❶コロナの収束、インバウンドの復活で、商業地価が上昇。

❷都心部など、一部の地域の上昇が平均値を押し上げた。地方圏では中核都市の上昇。

❸地方圏、郊外では下落傾向が続いている。

❹企業の工場建設、都市の再開発地域での上昇が目立った。

❺地方中核都市の中心部は、バブル価格に。

今年の基準地価は、既に過去のものであり、現在の市場での取引価格は既にピークアウトしている。

金融緩和・超低金利で、日本の地価上昇は、大都市圏では10年間続いてきた。近年では、マンション・建売住宅等のデベロッパー、ファンド、ハウスメーカーなどが大量に用地取得を行った。

この業界内の土地取得競争が、地価上昇に拍車をかけた。一部には、採算性を考慮しない高値買いも見られた。

その結果、図表⑥⑦に見られるように、売れ残りが急増して、現在では住宅・収益物件・土地などの価格調整局面に入っている。

(図表⑥)

(図表⑦)

不動産市況アナリスト 幸田昌則氏
ネットワーク88主宰。不動産業の事業戦略アドバイスのほか、資産家を対象とした講演を
全国で多数行う。市況予測の確かさに定評がある。

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