不動産市況

20220113vol. 39

2022年、転換期を迎える不動産市場 ― 予想される6つの動向と変化

(図表①)


昨年10月に全国で発令されていた緊急事態宣言の会場を受けて、経済活動の再開に向けた動きが始まった。街中での人出も多くなっている。しかし、新たにオミクロン株の出現もあり、予断は許されない状況にある。英米におけるオミクロン株による感染拡大は著しい。

2年近くに及ぶコロナ禍による社会・経済に与える影響は大きく、早期の回復は難しい状況にあるとの認識をして、2022年を迎えたい。コロナ禍は、それぞれの立場で追い風・逆風という二極化を促進し、その影響は一様ではない。

何れにせよ、コロナ禍の影響は人や企業の行動、そして住宅・不動産市場にも及んだことは確かである(図表①)。

しかし、追い風を受けてきた住宅・土地市場には、緩やかではあるが、変化の兆しが出てきた。

今回は、2022年に予想される変化について、解説してみる。

コロナ禍による「住宅特需」は減速へ

(図表②)


(図表③)


コロナ感染拡大阻止のため、国民は非接触を余儀なくされ、暮らし方や働き方が変わった。特に、働き方では「テレワーク」による仕事が普及、定着していくに連れ、それに対応した自宅の住み替え需要が、30歳から50歳までのサラリーマンで多く見られた。

同時に、在宅での仕事が増えたことで、「広さ」「もう一部屋」のニーズが高まった。そのため、狭い賃貸住宅から持ち家取得への動きが活発化して、「住宅特需」が生まれ、その結果、市場では品不足、価格の高騰という図式が続いてきた。しかし、2021年の夏以降、図表②に示されているように、市場在庫が増加傾向に転じている。

一方、住宅価格についても、新築・中古を問わず、マンションは値上がりが急であったが、高価格帯の在庫が増加している(図表③)。これまでは、全価格帯に亘って幅広く売れてきたが、価格や立地によっては、長期間、売れ残る物件も出ている。

土地需要は強く、当面、品不足は続く

(図表④)


土地については、住宅需要の急拡大で、注文住宅用地のほか、賃貸アパートや建売住宅・マンション等の事業用地も需給が逼迫し、完全な品不足となっていて(図表④)、高値圏での推移となっている。

ただ、個人の取得能力や事業採算の観点から、更なる価格上昇の可能性は低いが、高値圏での取引が、少なくとも、2022年の春までは続きそうである。

ただ、住宅ローン等の融資に変化が出てきたり、建築コストの大幅な上昇があったりすれば、住宅地の下押し要因となる。

土地の需要は、個人だけでなく企業活動にも及んでいて、工場・倉庫などの物流施設、データセンター、本社等、幅広い需要拡大が2022年も続くことは必至と思われる。

好業種を背景に、攻めの経営を目指す企業も多く、超低金利の今、事業に必要な建築物を増やそうとする動きが活発化していくことが見込まれることから、これらの事業用地の品薄感は、年が変わっても続くことになる。そのため、当面、地価は維持されるものと想定される。

新規のマンション・建売用地の供給は、低水準に

(図表⑤)


コロナ禍が長引き、外出自粛が続いたことで、大都市圏では住宅への関心が強まり、住宅は飛ぶように売れたと言っても過言ではない。更に、旅行や飲食などの機会が奪われたことで、富裕層の余裕資金は一段と増え、その資金は高額なタワーマンションやリゾートマンションなどを対象に、節税を目的とした投資が行われてきた。今年もこの動きは、超低金利下でもあり、続くことになる。

しかし、実需としての購入は弱まる年になることが予想される。その理由は、新築マンションの販売価格が高騰し過ぎて、一般人には手の届かない水準に達していることに加えて、2021年の夏以降は、金融機関の融資姿勢に警戒感が出ており、審査が厳しくなっていることから、市場全体の取引量は低水準となることは確実となる。

更に、前述したように、マンションや戸建て住宅の事業用地の供給が少ないため、デベロッパーの用地取得は難しく、新規住宅の販売戸数が低水準となることは不可避と言える。

この状態は、2022年以降も続くことになる(図表⑤)。

価格と賃料の調整が始まる

地価については、大都市中心部の商業地価の調整が鮮明となる。その理由としては、この数年間、地価の高騰が著しく、一部では経済的合理性を考えていない取引が行われたこと。更に、オフィス・店舗のテナント退去や賃料の引き下げなどで、ビルの収益力が落ち込んでいることから、商業地の価値が低下していることが背景にある。2022年以降、当分の間、その価格は元に戻らないことが想定される。

更に、ビルの空室率は、東京都心部では新規のビル供給が続くことや、全国ベースではテナントの退去後の空室が供給に回ることから、需給の緩和が、当面、続くことは必至と言える。

需給状況の緩和は、当然の帰結として賃料の低下を招くことになる。

不動産投資や節税需要の強さは続く

この動きの背景には、所得と資産の「格差」がコロナ禍で進行していることと、超低金利政策の存在がある。即ち、余った資金の一部が、収益と節税効果を享受できる不動産に向かっている結果である。今日の格差社会と超低金利という状況の変化は、2022年も続くことが想定されることから、投資・節税を目的とした取引が衰えることはない。ただ、買主の要望に適した不動産は少なく、取引件数の大幅な伸びは期待できない。

建築資材などの品不足、価格高騰は必至で、住宅産業界の「利益確保」が困難に

(図表⑥)


コロナ禍によって、世界的に住宅特需が発生したことで、ウッドショックが起きた(図表⑥)。それを契機に、木材の不足だけでなく、半導体不足などの影響もあって、住設機器の入手が困難となり、建物の完成が遅延、利益が低下する等の事態が目立ってきた。この状態は、2022年前半での解決は、期待できそうにない。事業継続に向けた、新しい視点での経営が求められることになる。新築アパートの購入検討にさいしても、竣工時期のズレを計算する慎重さが必要となる。

 

以上、あらたな年を迎えても、まだまだ、コロナを気にしての生活が続くことになるが、2022年の不動産市場は、これまでとは違った事業環境となる。

 

不動産市況アナリスト 幸田昌則氏
ネットワーク88主宰。不動産業の事業戦略アドバイスのほか、資産家を対象とした講演を全国で多数行う。市況予測の確かさに定評がある。

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