税務

20200701vol. 33

不動産賃貸事業での利用可能なコロナ支援制度について

政府は延長されていた緊急事態宣言を5月25日で全面解除し、4月7日に始まった緊急事態宣言は、約1カ月半で終了することとなりました。緊急事態宣言期間中においては、様々な業界が外出・営業自粛の影響を受け、大変な状況となりましたが、宣言が解除された後においても、社会・経済には多大な影響が出ることが予想されます。

今回は、特に不動産賃貸事業に関連して、貸主(オーナー)・借主(テナント事業者・一般入居者)が利用することができるコロナ支援制度について、6月12日現在において発表されている主要なものを、簡単にご紹介したいと思います。

下記の表は、貸主・テナント事業者・一般入居者別に、利用できる主な支援制度をまとめたものです。

区 分 利用できる主な支援制度
貸主(オーナー) 010203040506
借主(テナント事業者) 0102040507080911
借主(一般の入居者) 040510

まず、オーナーが利用できる支援制度をご紹介し、その後、テナント事業者・一般入居者向けの制度について、併せてご紹介いたします。

優遇金利・実質無利子による融資(対象:貸主・テナント事業者)

直近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している場合、日本政策金融公庫による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が利用できる可能性があります。また、商工中金においても、同内容の危機対応融資があります。いずれも、一定の限度額までは、貸付当初から3年間、基準金利マイナス0.9%での貸付となります。

さらに、上記の優遇金利による融資を受け、売上がさらに減少した場合、当初3年間は実質無利子になります。小規模個人事業主の場合は、売上減少要件はありません。

セーフティネット保証・
危機関連保証制度(対象:貸主・テナント事業者)

直近3カ月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少する場合、セーフティネット5号保証を利用することができます。セーフティネット5号保証は指定された業種に限定されていましたが、5月1日以降、全ての業種で利用できることになりました(一部風俗営業を除く)。また、原則として最近1か月間の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれる場合、セーフティネット4号保証を利用することができます。いずれも、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で、借入債務を保証する制度となります。

また、原則として最近1カ月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、その後2カ月間を含む3カ月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる場合、上記セーフティネット保証とは別枠で、危機関連保証を受けることができます。

なお、これらの保証についても、一定の要件を満たす場合、実質無利子になる制度が設けられています。

テナントオーナーに対する助成金(対象:貸主)

自治体によっては、テナントオーナー向けの支援事業を行っているところもあります。東京都港区では、「テナントオーナー向けテナント賃料支援事業」として、コロナの影響により売上が減少しているテナントの賃料を減額している中小企業者に対して、最大3か月、減額した賃料の2分の1を助成しています。

税金・社会保険料の1年間納税猶予(対象:貸主・借主すべて)

所得税・法人税などの国税や固定資産税などの地方税について、昨年比1カ月以上売上がおおむね20%以上減少しており、一時に納付することが困難な場合、無担保、かつ、延滞税なしでの1年間の納税の猶予が認められます。

また、厚生年金保険料等の社会保険についても、同様の猶予制度が設けられています。

国民健康保険料等の減免(対象:貸主・借主すべて)

事業収入や不動産収入の減少額が前年比30%以上見込まれる等、一定の要件に該当する場合は、所得に応じて、国民健康保険料等の20%~100%減免を受けることができます。

令和3年度の固定資産税の減免(対象:貸主)

令和2年2月から10月までの任意の連続する3カ月間の事業収入が前年同期比30%以上50%未満減少した中小企業者については、令和3年度の事業用家屋・償却資産に対する固定資産税が2分の1の免除となり、50%以上減少した場合、全額が免除されます。

休業協力金(対象:テナント事業者)

各自治体によって実施される制度で、休止又は営業時間短縮の要請を受けた施設を運営する事業者は、当該休業等の要請に協力した場合、一定の協力金を受け取ることができます。自治体によって、金額や対象施設は異なります(東京都の場合、最大100万円)。

不動産賃貸業は休業要請の対象とならないため、この制度はテナント事業者向けのものとなります。

家賃支援給付金(対象:テナント事業者)

令和2年5月~12月において、いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少、もしくは、連続する3カ月の売上高が前年同期比で30%以上減少する中堅・中小事業者に対し、原則、月額賃料の3分の2を、6カ月分給付する制度です。給付上限額は法人が600万円、個人事業者は300万円となります。家賃支援給付金制度を利用することにより、店舗の賃料負担が軽減され、結果的にオーナーの負担軽減につなげることができます。

持続化給付金(対象:テナント事業者)

2020年1月から12月までの間で、1カ月の売上が前年同月比で50%以上減少した場合、法人は200万円、個人事業者は100万円を上限に、持続化給付金を受け取ることができます。ただし、個人の場合は、事業所得がある場合のみ対象となり、不動産所得については、現時点では対象外となっています。(その他不給付要件があります。)

住居確保給付金(対象:一般の入居者)

市区町村が窓口となって実施する制度で、離職等から2年以内の場合、もしくは休業等により収入が減少し、離職等と同程度の状況にある場合、原則として3カ月間、最長で9カ月間、家賃が補助されます。収入が減って払えなくなりそうな入居者がいた場合、オーナー側がこの制度の存在を伝え、多少なりともサポートする、という利用方法も可能です。

雇用調整助成金(対象:テナント事業者)

雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものです。コロナの影響によって特例が設けられ、助成率の拡大がなされ(最大で中小企業は10/10、大企業は3/4)、また、計画届の事後提出が認められるなど、手続の簡略化がなされました。特に大きな変更は、パート・アルバイト、新入社員も対象になった点です。従来の制度では、雇用保険に6カ月以上加入していることが必須要件となっていましたが、今回の特例措置で、雇用保険加入6カ月未満、もしくは未加入の人も対象となったため、新入社員や派遣社員、パート・アルバイトを休ませた場合も、助成金給付の対象となります。

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