税務

20190107vol. 28

不動産の売却について

モノは、安く買って高く売るのが理想です。しかし、一つとして同じモノがない不動産は、売り時の見極めは困難です。後で後悔しない様に、少なくとも相場の大局感,近隣の売買状況等は確認してから、売却したいものです。
売却した後は、利益が出た場合には税金が生じます。今回は、税金計算の面から見た売り時について、お話ししていきたいと思います。

売却損益

個人の不動産売却に際して、税金は、売却して得た入金額(売却収入)ではなく、売却益に対して課されます。売却益を求める算式は下記の通りです。売却収入-(取得費+譲渡費用)=売却益

売却収入の中から支払う税金は少しでも減らすために、取得費,譲渡費用はもらさず集計したいものです。

取得費
取得費は、購入時の売買契約書に記載されている購入金額に限りません。購入した時にかかった費用全てを指します。そのため、仲介手数料,測量費等も含めることが出来ます。その他、増改築した費用についても、含めることが可能です(定期的に発生する修繕費は除きます)。
その一方、建物は使用により経年劣化すると捉えますので、下記の算式に基づく減価償却費を加味した後の金額になります。建物取得価額-減価償却費×経過年数=建物取得費
減価償却費は、耐用年数に応じて毎年一定額の価値が減ると捉えて(期間定額法)計算するものです。投資用不動産の耐用年数は、居住用不動産よりも乱暴に扱われるとみなされるため、期間は2/3(償却率は1.5倍)になります。
譲渡費用
売却時に要した費用が譲渡費用です。売却に際して生じた仲介手数料,取壊費用等、売却のために掛かった費用全てを指します。
取得費にしても、譲渡費用にしても、各々、取得,売却に直接的に要した経費であれば含めてよいとされていますが、該当するか判断に迷うものが出てきた場合は、慎重に判断することが必要です。

税率

不動産賃貸を行っていて不動産収入を得ていた場合は、不動産所得になります。不動産所得は、給与収入を得ている人が課せられる給与所得等の他の所得と合算されて課税されますが、個人が不動産を売却した場合は他の所得とは分けられ、譲渡所得として下記の税率が課せられます。

区分 所有期間 税率
所得税 住民税
短期譲渡 5年以下 30.63% 9%
長期譲渡 5年超 15.315% 5%

短期の転売を抑制するため、保有期間に応じて税率が異なっており、5年を境に凡そ2倍になります。
尚、ここでの所有期間とは、売却した年の1月1日時点で判定しますので、判定の際は注意して下さい。

特定事業用資産の買換え特例

居住用不動産を売却した際は、住む場所に困らない様、軽減税率の適用,特別控除の適用,他の所得との損益通算並びに繰越等、多彩な軽減措置が用意されています。それに対し、投資用不動産の売却では、これらの恩恵は受けられません。ですから、投資用不動産の売却で利益が出そうであれば、同じ年の内に含み損を抱えている投資用不動産の売却を検討して下さい。損が出る場合も、翌年に繰り越すことができませんので、有効に活用して下さい。

その他、不動産を売り切りせず買い換える場合には、特定事業用資産の買換えを適用できる可能性があります。
この制度は、
(01) 事業用の不動産同士の買い換えであること
(02) 売却した年の1月1日時点で10年超保有していること
等の一定の要件の下、譲渡資産と買換資産とが特定の組合せに当てはまる場合に、譲渡益の最大80%の繰り延べを認めるものです。適用しても譲渡益が非課税となるわけではありませんが、買換え時の税負担を軽減し、不動産取引の活性化・有効利用の促進を図るため、設けられています。

適用するには、当該買換えが該当するかどうか、よく条件を確認して頂く必要があります。その上で、特例の適用により取得した資産の取得価額が小さくなり、今後の減価償却費が減りますので(課税所得が増えますので)、適用するか否かは、他の所得も含めた将来のシミュレーションを実施してから判断して下さい。

以上、不動産の売却には多額のお金が動きますので、有利に売却する方法がないか事前によく確認し、試算してから、売り時を見極めて頂ければと思います。

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