税務

20210127vol. 35

令和3年度 税制改正大網を読む

 昨年12月10日「令和3年度税制改正大綱」が公表されました。安倍内閣から菅内閣へ移行し始めての公表となりましたが、従来通りのデフレ脱却と経済再生に加え、新型コロナウイルス感染症による経済の立て直し、ウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会を目指した内容に、菅内閣が目指すデジタル化や地球環境を意識した政策が反映されたものとなっています。早速、令和3年度税制改正大綱をみてみましょう。

基本的考え方

税制改正大綱では、冒頭に基本的考え方が表明されています。新型コロナウイルス感染拡大の防止と社会経済活動の両立を目指す中で、デジタル化やグリーン化を加速させる意向が見受けられます。
大きな柱として以下の7項目を掲げられました。

① ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生
② デジタル社会の実現
③ グリーン社会の実現
④ 中小企業の支援、地方創生
⑤ 経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
⑥ 経済のデジタル化への国際課税上の対応
⑦ 円滑・適正な納税のための環境整備

不動産関連

(1)住宅ローン控除
消費税の8%から10%へ増税に伴い、住宅ローン控除等の期間が10年間から13年間へと伸びましたが、その特例が令和4年12月31日入居分(新築の場合は令和2年10月1日から令和3年9月30日まで、中古住宅等は令和2年12月1日から令和3年11月30日までの間に契約が締結されているものに限ります。)まで延長されることになりました。
さらに、合計所得金額が1,000万円以下の場合については、控除の対象となる床面積の要件が50㎡以上から40㎡以上へ引き下げられました。
また、従来会計検査院から、住宅ローン控除の控除率(年末借入金残高の1%)が借入金利を上回るケースが多いと指摘があり、この事から令和4年度の税制改正において控除額や控除率が見直される方針が明記されています。

(2)土地固定資産税の据え置き
令和3年度は固定資産税の評価替えの基準年度であることから、評価額の見直しが行われます。しかし、新型コロナウイルスによる社会経済、生活状況の変化を踏まえた上で税負担への配慮から、令和3年度に限りすべての土地の固定資産税が前年度の税額が増加する場合に据え置かれる事になりました。これは税額が前年度を上回る場合における負担調整措置の適用によるもので、税額が下回る場合にはそのまま引き下げとなります。

(3)住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税額の据え置き
令和3年4月1日から12月31日までの間に直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税限度額が据え置かれました。

(※)上記は耐震、省エネ、バリアフリーの住宅用家屋に係るもので、一般の住宅用家屋に係る非課税限度額はそれぞれ500万円を控除した金額となります。
また、受贈者の合計所得金額が1,000万円以下である場合、住宅床面積の要件が住宅ローン控除と同様40㎡以上からとなります。
その他に令和3年1月1日以後に同資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度においても、床面積の下限が40㎡以上となります。

(4)中小企業投資促進税制に不動産業が追加
中小企業投資促進税制とは、中小企業者(主に資本金等の額が1億円以下の法人や個人事業主)が平成29年4月1日から令和5年3月31日までの期間に新品の機械などのうち、特定経営力向上設備等に該当するものの資産を取得した場合の優遇措置です。
特定経営力向上設備等とは、中小企業等経営強化法に規定する一定の設備で、1台あたり160万円以上の機械及び装置、70万円以上のソフトウェアなどが含まれます。
例えば、新品のソフトウェア(70万円以上)を購入した場合、通常の減価償却費に加え、先行して取得価額の30%分の特別償却の計上、又は取得価額の7%相当額の税額控除が認められます。これまで不動産業はこの制度の対象外とされていましたが、新たに追加されることとなりました。
また、従来不動産業も適用対象とされていた「特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度」については、令和3年3月31日の適用期限をもって廃止されることとなりました。

(5)期限が切れる特例制度で延長が認められる主なもの
【不動産取得税】
◆3年延長◆

  • 宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を2分の1とする特例措置
  • 住宅及び土地の不動産取得税の税率(3%)の特例措置

◆2年延長◆

  • 不動産特定共同事業法に規定する特例事業者等が不動産特定共同事業契約に基づき取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、次の措置を講じた上で延長が認められます。
  • 特例事業者又は適格特例投資家限定事業者が、新築等をした家屋及びその敷地をその新築等後10年以内に譲渡することの要件を廃止する。
  • 適用対象となる特例事業者又は適格特例投資家限定事業者が、取得する不動産の範囲に借地上の家屋を加える。
  • 適用対象から一定の家屋を除外する。

【登録免許税】
◆2年延長◆

  • 土地売買による所有権の移転登記に対する登録免許税の軽減措置(1000/15)
  • 特例事業者等が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、次の措置を講じた上で延長が認められます。

 ① 適用対象となる不動産の範囲に保育所用の建築物及びその敷地を加える。
 ② 建築物の用途が住宅(サービス付き高齢者向け住宅を除く。)、倉庫又は駐車場である場合を除き、当該建築物の建築面積が150㎡以上(新築又は改築の場合には、当該建築物の床面積1㎡当たりの工事に要した費用の額が25万円以上である場合に限る。)の場合にも、特例事業者又は適格特例投資家限定事業者が新築等をする建築物に係る規模要件を満たすこととなります。

◆1年延長◆

  • 相続に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置について適用対象となる登記の範囲に、表題所有者の相続人が受ける土地の所有権の保存登記を加えた上で、その適用期限が延長されます。

※検討事項として
相続等に係る不動産登記の登録免許税について、所有者不明土地等の問題解決に向け、相続発生時における登記申請の義務化や新たな職権的登記の創設等を含めた不動産登記法等の見直しの検討が明記されています。令和4年度の税制改正において必要な措置を検討することが掲げられました。

税理士 西村敦正氏
株式会社BAMC associates代表税理士。相続・事業承継を中心とする資産税が専門。1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案件に精通している。

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