税務

20240419vol. 48

令和6年は固定資産税評価額の評価替えの年

春のこの時期は税金の支払いに頭を悩まされている方も多いかと思います。所得税や消費税の確定申告を終え、4月下旬の口座振替に備えると共に、固定資産税の納税通知書が早い地域では4月10日前後から、東京都などは6月初旬に届くことでしょう。
そして、この固定資産税については、3年に1度評価額の見直しが行われ、令和6年はまさにその年に当たります。
昨今の地価の高騰による公示価格の上昇や建築資材の高騰とこの評価替えの年度が重なったことにより、今年の固定資産税はどうなってしまうのだろう?と不安に思われている方も多い事かと思います。
今回は固定資産税評価額にまつわるお話を相続税への影響も踏まえ、お話ししたいと思います。

固定資産税評価額の評価替えの考え方 ~土地~

宅地の固定資産税評価額は公示価格の7割を目途に評価することとされています。相続税の計算で使われる路線価は公示価格の8割を目途に算出されていますが、これとは異なる固定資産税を決定するための路線価が各市区町村で3年に1度定められています。このため、固定資産税の路線価は3年間変動がありません。例えば、京橋税務署の平成通りの固定資産税の路線価を見てみると、令和3,4,5年いずれも㎡あたり157万円であり、令和2年116万円から大きく増加しています。

皆さんの所有されている不動産も同様です。それならば固定資産税は3年間同額のはずでは?と不思議に思われる方も多いと思います。ただこれでは、京橋税務署の土地のように116万円から157万円に35%増えた場合に、令和2年から令和3年の評価替えのタイミングで35%固定資産税が増えることになります。おそらく今年はもっと上昇率が高いので、この理論でいくと令和6年は50%増し!などという事にもなりかねない為、急激に固定資産税が増えないよう負担調整などの計算がされ、毎年徐々に税金が上がるような仕組みになっているわけです。

ただいずれにしても、固定資産税評価額が上昇すれば、毎年徐々に固定資産税は増えるわけで、その基準となる価格が今年発表されるわけですから、とても重要な年と言えます。皆さんも固定資産税の納税通知書が届きましたら、ぜひ昨年の通知書と比較していただき、この固定資産税評価額の差を確認してみてください。

 

また、固定資産税路線価は、「全国地価マップ」(https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216)という、一般財団法人資産評価システム研究センターが公表しているHPで確認することができます(令和6年4月現在、6年度評価額はまだ公表されていません)ぜひ、ご参照ください。

固定資産税評価額の評価替えの考え方 ~家屋~

家屋の固定資産税について、よく質問を受けることがあります。

Q.家屋は年数が経過すれば古くなり価値が下がるのだから、固定資産税も下がるはずなのに、固定資産税は減らない。

Q.うちの家屋は築40年を超えるのに、ここ何年も固定資産税評価額は全く下がらず、税金が課税されている。なぜですか?

不思議ですよね。その通りだと思います。ただ、家屋の固定資産税評価額は以下のような計算の仕組みであるため、このようなことが起こるのです。

 

家屋の固定資産税評価額は、総務大臣が定める固定資産評価基準に基づいて行われ、原則として再建築価格を基準として評価を行います。

再建築価格とは、評価の対象となった家屋と同一のものを評価替えの時点において、その場所に新築する場合に必要とされる建築費のことです。

つまり、実際に皆さんが建てた建築費に基づき固定資産税が計算されるのではなく、評価替えの今年、令和6年に同じものを建築した場合にかかるであろう費用に基づき価格を算出し、ここから経過年数に応じた減価を加味していきます。

 

ウクライナ情勢や円安の影響、物価高など、ここ数年で家屋の建築価格は何割も上昇しているわけですから、経過年数による減価を加味しても、皆さんが建築した時より高い固定資産税評価額が計算されてしまうというようなケースも当然でてきます。

前回の令和3年評価替え時の固定資産税評価額より令和6年の評価替えによる固定資産税評価額の方が高くなってしまう場合には、前回の価額をそのまま引き継ぐことになっているため、年数が経っているのに固定資産税評価額は下がらず、固定資産税も下がらないというようなことが起こるのは、これが原因なのです。

 

また、築40年を超えるのに固定資産税評価額が下がらないのは、家屋の経年劣化を計算する経年減点補正率が下限20%と定められているため、建築から何年経過していてもこの家屋を令和6年現在再建築した場合にかかる費用×20%が評価額の下限となるため、前回の評価額が既にこの価格に達していて、固定資産税が下がらないということが起こるのです。

今年改正となった区分所有マンションの評価について

令和6年1月1日以後の相続や贈与により取得した居住用の区分所有マンションの評価額について、大きな見直しが行われました。

これは、いわゆる「タワマン節税」を封じるための改正と言われています。

タワーマンションは実勢価額と相続税評価額の差が大きく、この価額差を利用して相続税を圧縮しようとする対策を封じた形です。

マンションの相続税評価額を計算するときには、評価を土地部分と建物部分に分けて計算をします。 土地は路線価に基づきまずは敷地全体の評価を行い、そこに、各人が所有されている敷地権割合を乗じて計算します。マンションが高層になり、部屋数が増えれば増えるほど、その敷地に対する各人の持分は減るため、例えば2LDK70㎡のお部屋なのに土地は10㎡も所有していないというケースも出てくるわけです。その部屋を貸し出せば、小規模宅地の特例が200㎡まで50%減額できるので、より路線価の高い場所にあるマンションが相続税を圧縮する効果が高くなるという仕組みになっています。

また、建物の評価は固定資産税評価額がそのまま相続税評価となり、貸していれば借家権相当の30%が減額されるという仕組みで、この固定資産税評価額は建物の構造や仕様で算出され、高層階にいくほど評価額が上がるという仕組みにもなっていませんでした。この計算方法が見直しされたわけです。

具体的には、上記の今まで通りの評価額に、「区分所有補正率」というものを土地・建物それぞれに乗じて計算することになりました。

具体的な算式はここでは割愛しますが、ポイントは

  • 築年数が新しい
  • 総階数が多い(高い建物である)
  • 所有する区分の階数が高い
  • 敷地全体に対し敷地権持分が少ない

ほど評価額が高くなる。そういう仕組みになっています。

 

具体的に計算してみると、今までの評価額の1.5倍~2倍程度になるケースが見受けられました。

また、相続税の評価に限らず、固定資産税も高層階にいくほど高くなるように平成29年で改正が行われています。

一方で以下に該当するマンションはこの評価の対象外となり、いままで通りの評価となっています。

  • 居住用でない事業用のテナント
  • 区分所有登記がされていない建物(一棟建物、共有で所有している)
  • 地価を除く総階数が2階以下
  • 部屋数が3以下で、すべての部屋を家族の居住用としている
  • たな卸商品に該当する

 

上記の通り、区分所有マンションの評価は複雑になっていますので、購入の際は相続税への影響も検証したうえでご検討いただければと思います。

不動産の小口化商品について

そんなマンション評価の改正が行われた中で、今注目を集めているのが不動産の小口化商品です。

そもそも高層マンションの相続税評価がどうして改正されたのか?

これは、相続税の圧縮を目的に区分所有マンションを購入し、相続を迎えた後に売却を図る事例などが散見し、不動産を所有する目的が相続税の節税対策に偏りすぎていたのが原因です。

不動産は本来自分や家族の住むための家であり、将来設計のための投資の目的であり、節税のためのものではありません。

また、そんな不動産も、昨今の物価や建築資材の高騰、円安による海外投資家の参入などにより、価額もどんどん上昇し、特に東京23区などの不動産は個人では購入するのがほとんど不可能な状況です。

 

そんな中、不動産の小口化商品は、都心のエリアでも一口500万円~1千万円程度で購入ができ、専門家が管理運営をし、安定的な収益を確保できるものとして注目を集めているわけですが、相続で財産を承継するときを考えてみても、一口ごとに相続人に分配することができる点は、遺産相続争いを回避する上でもとても大きなメリットです。

また、財産評価上も通常の土地建物を所有しているときと同様に、小規模宅地の特例なども使えます。路線価の高い一等地で小規模宅地の特例が利用できる点は、大きなアドバンテージとなるでしょう。

そして、通常の不動産同様、投資目的であるため、区分所有マンションの評価の対象にもなりません。(区分所有登記ではなく、投資家の共有名義であり、居住用ではなく、店舗・事務所など事業用として運用)

 

一つの不動産投資の形態として、時代に合った投資商品といえるでしょう。

税理士 西村敦正氏
株式会社BAMC associates代表税理士。
相続・事業承継を中心とする資産税が専門。
1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案 件に精通している。

TOPへ戻る