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融資

融資を引き出すための決算書の見せ方

銀行融資が厳しくなりました。どんなにいい物件を探しても融資が付かない。このような声が多く聞かれます。いわゆる「かぼちゃの馬車ショック」の影響も大きいのですが、こういう時期だからこそ自らの足許である「決算書」をどう見せるかについて述べてみたいと思います。融資が継続的に付くポイントは「決算書」だからです。決算書は、見せ方次第で大きく評価に差が出ます。知っているか知っていないかの差は大きいのです。有利な条件の融資を継続的に受けたい賃貸事業者にとって決算書は、税務署に提出するもの、ではありません。あくまでも銀行から優良顧客だと認識してもらうためのツールです。そのことを強く意識することがとても重要なことなのです。

貸借対照表(B/S)を見せるポイント

・純資産がプラスであること

銀行員が最初に見るのは純資産の合計です。なぜなら、純資産がマイナスの場合は「債務超過先」であり、その時点で融資の対象からはずれるからです。

・金融資産を多く持つ

個人合算の現金、もしくは金融資産を多く持っているかは、資金繰りを見る上で最も重要な情報です。近時は決算書上の数字の確認にとどまらず、通帳現物提示を求める銀行がほとんどとなりました。直近の残高だけでなく、6か月前までに遡っていわゆる「見せ金」ではないかのチェックもなされるなど、保有金融資産の確認はかなり厳格化されています。
「決算分析より、通帳口座の推移をチェックする方が重要」と話す行員もいます。

・内容がはっきりしない「仮払金」「貸付金」「その他流動資産」「繰延資産」などは減額される

銀行はBSの資産を減点主義でチェックし、減額していきます。中身がはっきりしないものは資産とみなしません。役員貸付金は、「個人の投資の損失穴埋めに回した」など往々にしてネガティブな話が多いため減額されます。いわゆる「会社のお金を個人か関連会社に回したお金」ですから、減額ばかりか、経営者としての評価を下げます。極力回避すべきです。

・不動産の評価額は、「購入した金額」ではなく,各銀行ごとの評価ルールに沿った評価額に引き直される

現時点での入居状況(家賃収入)から算出する銀行もあるため、常に満室経営を心がける必要があります。
ちなみにわたしは、所有の物件については不動産鑑定士による鑑定書の写しを独自に銀行にお渡ししています。

・区分マンションの資産評価は低い

借入で購入の場合、借入は残高そのままでの評価となり、信用棄損をおこすケースがあります。決算書上の純資産でも、銀行は実態バランスシートを作り、そこで実質債務超過になっていないかをチェックしています。

・「役員借入金」は「長期借入金」にせず、銀行借入金と分けて計上する

社長などからの役員借入金を、銀行によっては負債ではなく自己資本とみなす、というところもあります。返済する予定がないならその旨銀行に伝えた方が評価は上がります。

・設備をリースで調達する

総資産に対する自己資本の割合を自己資本比率といい、安全性を計る最も重要な指標です。金融費用は嵩みますが、総資産を増やさないようにまた手許資金温存のために設備の全額または一部はリースで調達します。
自己資本比率は30%、できれば50%まで高めるよう心がけます。

損益計算書(P/L)を見せるポイント

・本業の利益=営業利益をプラスにする

銀行は地に足の着いた本業の利益を基本的な返済力とみなします。

・家賃収入の推移~安定傾向をアピールする

減少傾向にある場合は、それを先に説明し要因と対策を丁寧に説明します。利益だけではなく、家賃収入が安定しているかどうか大事です。

・複数棟所有の場合、一棟ごとに収支表を作成する

一棟ごとに管理し、それぞれの強みと課題を説明できることが大切です。

・役員報酬はチェックされる

役員報酬が極端に低いと「黒字にするため無理に低く抑えているのでは?」という見方をする場合もあります。逆に高すぎる場合、銀行はそのお金がどこに流れているか気にします。個人資産・借入の状況を常に把握しようとするのは、社長個人の状況が、会社の財務状況と一体だと認識しているからです。個人で小規模共済や積立定期預金などで着実に殖えていれば評価は上がります。経常利益が赤字でも、これに減価償却と役員報酬を足した数字が黒字となっているかは重要です。「翌期役員報酬を減らせば、経常利益をプラスにできます」と説明できます。

・接待交際費

この費用が多い会社を銀行が評価することはありません。

・臨時の費用は「特別損失」に計上する

不動産取得時の関連費用、大規模修繕費など、一時的に支出した費用は必ず特別損失に計上してください。こうすることで経常利益のプラスは守られます。

決算増減メモを作成する

B/S、P/Lそれぞれの項目ごとに、前期と今期二期間の数字と増減金額を明示し、その要因を記入したメモを作成します。せっかく訪問して口頭で決算説明を行っても銀行員はメモを取り切れません。大きく数字が変わったところだけでいいので、増減の要因と対策を記せば、銀行員からの評価は上がります。是非実践なさってみてください。

 

著者

元メガバンク支店長 菅井敏之氏
三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事した後、支店長を歴任。
48才で銀行を退職。起業し、アパート経営に力を入れる。現在は年間7000万円の不動産収入がある。
銀行員としてお金を「貸す側」、不動産投資家としてお金を「借りる側」、どちらの視点も持つため、講演やセミナーでも一躍人気講師になった。
初の著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム 2014年3月)は40万部を突破。

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