2018.05.21
税務

不動産と相続税

税理士 西村敦正氏 株式会社BAMC associates代表税理士。相続・事業承継を中心とする資産税が専門。1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案件に精通している。

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相続税の基本的な考えについて

相続税についてですが、亡くなった方(被相続人)の相続人等に対して課せられる税金であり、相続財産(負債も含む)及び相続人の人数等の諸条件に基づき、所定の税率によって課せられる税金であることは皆様もおおよそご存知であると思います。[br] ここで、相続財産に所定の税率を乗じて計算するということは、相続財産の評価額を求めることが重要となりますが、こんな疑問がおそらく生じるのではないかと思います。[br] 財産の評価額はどうやって計算するのかと?[br] 財産の評価は財産評価基本通達というルールに従って計算することになっています。[br] 普通預金などは、原則的には相続時の金額がそのまま評価額となります。上場株式等などについては、一定の例外はありますが、原則的には相続発生時の証券取引所等における時価に所有株式数を乗じた金額が評価額となります。

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不動産を購入すると

では、不動産はどうでしょうか?[br] 「相続税対策として不動産を購入する」といったキャッチフレーズを聞いたことがある方も多いかと思いますが、これはある意味で真実でもあります。[br] 不動産の場合には、相続財産の評価方法が複雑になっていますが、ここに相続税を安くするポイントがあります。[br] 例えば、甲さんの財産が普通預金で1億円だけだったとします。この場合には、相続財産は普通預金1億円であり、評価額を1億円から変動させることはできません。[br] これが、土地を相場に基づき1億円で購入したとすると、評価額は路線価×土地面積となります。[br][br] 「土地の評価額 = 路線価 × 土地面積(㎡)」[br][br] この路線価という金額は、通常の相場の8割程度となるように、国税庁により設定されています。(路線価が設定されていない地域もあり、その場合は倍率方式で評価します。)[br] 上記の例で路線価が80万円、土地面積が100㎡であった場合には土地の評価額は8,000万円(80万円×100㎡)となります。[br] これは、相続財産が全額普通預金であったときと比較して、相続財産の評価額が1億円から8,000万円に下がることになり、相続税は財産の評価額に一定の税率を乗じて計算することから、結果的に相続税も下がることになります。これが「相続税対策として不動産を購入する」の概要となります。

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小規模宅地の特例等とは

相続税について考えたことのある方は、小規模宅地等の特例という言葉を聞いたことがある方もいると思います。この特例について簡単に説明しますと、被相続人が所有していた土地等で一定の要件を満たすものについては、相続税の計算上、土地の評価額を一定割合減額することができる制度になります。[br] (1) 居住用宅地(限度面積330㎡、減額割合80%)[br] 被相続人が居住していた居住用の土地等が該当します。[br] (2) 事業用宅地(限度面積400㎡、減額割合80%)[br] 被相続人が事業を行っていた土地等が該当します。[br] (3) 貸付事業用宅地(限度面積200㎡、減額割合50%)[br] 被相続人が不動産の貸付等を行っていた土地等が該当します。[br] 被相続人が亡くなった後、不動産を売却しなければ残された遺族が相続税を支払うことができないといった状況にならないよう配慮されこの制度があります。[br] 今回はこの特例の適用を受けるための一定の要件について詳しく説明することは避けますが、あくまでも要件を満たしたときにだけこの特例の適用が受けられることは覚えておいて頂ければと思います。[br][br] 上記の2の例では、甲さんは預金1億円で土地を購入しただけでしたが、さらに金融機関から1億円を借り入れ、マンションを建設したケースを考えてみます。[br] マンション建設後の甲さんの財産及び負債の相続税評価額は以下のようになります。[br] ・土地……[br] 貸家建付地 80万円×100㎡×(1-0.7×0.3)=6,320万円[br] 小規模宅地等の特例 6,320万円×(1-50%)=3,160万円[br] ・建物……[br] 1億円×0.7×(1-0.3)=4,900万円[br] 固定資産税評価額とするため0.7を乗じています。[br] ・金融機関からの借入金……1億円[br][br] 「合計:土地3,160万円 + 建物4,900万円 − 借入金1億円[br] =△1,940万円 → 0円」[br] となり、相続財産の評価額が普通預金のみの1億円から0円に下がりました。[br] この特例の適用の有無によって土地の評価額が大幅に変わり、従って相続税額に大きな影響を及ぼすことがお分かりになると思います。[br] 今回のケースのような土地は貸家建付地、建物は貸家と呼ばれ、評価する際には以下の計算式を用います。[br] 「貸家建付地の評価額 = 相続税評価額 ×(1−借地権割合 × 借家権割合)」[br] 「貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1-借家権割合)」[br][br] 注意:マンションに空室はないと仮定しています。[br] :借地権割合は地区によって違いますが、今回は0.7として計算しています。[br] :借家権割合は全国共通で0.3となっています。[br] :固定資産税評価額は通常再建築価額の7割程度に設定されています。[br][br] 次回は小規模宅地の特例等及び任意組合を使った不動産投資について、さらに詳しく説明していく予定です。

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