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税務

中小企業の生命保険活用法 その2

中小企業の生命保険活用法の二回目になります。
今回は、保険の解約時に別のイベントを実行することによって、単なる課税の繰延べではない本当の意味での節税効果を享受する方法について解説します。

役員退職金の支給による節税

中小企業のオーナーが会社を退職し後継者に会社経営を任せる、あるいはM&Aなどで会社自体を第三者に売却するなど、中小企業の事業承継の問題は尽きることがないと思います。実は、こういったときに生命保険を使った絶好の節税の機会があります。
まず、会社オーナーは事前に自分の引退時期を決めておき、引退時期に解約返戻金の額がピークとなるような生命保険に加入します。一般的には逓増定期保険、長期平準定期保険などが利用されます。
支払い保険料ですが、原則的には半分が損金の額に算入され、残りの半分が保険積立金として資産計上されます。オーナーの引退時期が到来しましたら、生命保険の解約により解約返戻金を受取り、この解約返戻金を原資として、オーナーに役員退職金を支給します。この役員退職金を支給する事業年度と生命保険の解約返戻金を受取る事業年度を同一の事業年度とすることで、生命保険の解約により発生した収入が役員退職金と相殺されて課税の繰延ではない本当の意味での節税効果を享受することができます。
退職金自体にも税制上有利な面が多々あります。
退職金は、長年の勤労に対する報奨的給与として一時に支払られるものであることなどから、税負担が軽くなるよう配慮されています。
退職金に課せられる所得税ですが、総合課税ではなく分離課税で計算することとなっているため、所得の多い方でも別枠で所得税を計算することができ、さらに分離課税の計算上、退職金の支給額から一定の計算方法で算出された退職所得控除額を控除し、この控除後の金額に1/2を乗じた金額に所得税の税率を乗じて所得税額を計算するため、所得が多額となることの多い会社オーナーなどは総合課税よりも分離課税のほうが節税効果が高くなることが多くあります。
さらに、退職金は社会保険料の対象外でもあるため、社会保険料の節税効果もあります。
また、役員退職金が過大である場合には税務上認められない可能性もあるため、事前に功績倍率法等で役員退職金の額を税務上の適正な金額とすることも必要となってきます。

修繕費による節税

法人で自社ビルを所有し事務所を構えている、あるいは賃貸用の不動産を所有し賃貸収入を得ている場合も多いかと思います。
ここでも、生命保険の使った節税のチャンスがあります。
具体的には、生命保険を解約して解約返戻金を受け取る事業年度に、修繕費を損金として計上するのです。
この修繕を行う事業年度と生命保険の解約返戻金を受取る事業年度を同一の事業年度とすることで、生命保険の解約により発生した収入が修繕費と相殺され、課税の繰延ではない本当の意味での節税効果を享受することができます。
ここでの、ポイントは修繕費が資本的支出として資産計上されてしまうようなものではなく、あくまでも法人の費用として損金の額に算入されるような修繕を実行することです。
また、資本的支出とは、簡単に言いますと、建物等の資産の価値を増加させるような支出であり、資本的支出に該当すると、支出時に全額を費用とすることはできず、減価償却という費用配分の手段を通じて数年に渡り費用化していくことになります。
例えば、建物の避難階段の取付けなどに要する支出、オフィス用の事務所を居住用に変更する支出などは資本的支出に該当することになり、原則的には支出時に全額を費用とすることはできません。
一方、修繕費とは、簡単に言いますと建物等の資産の維持に要する費用、あるいは原状回復に要する費用となります。
例えば、外壁塗装に要する費用、地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用などは原則的には修繕費に該当することになり、支出時に全額を費用とすることができます。
また、複数の修繕計画を、解約返戻金を受け取る事業年度においてそれぞれ実行することも効果的かもしれません。
ただし、修繕費であると認識していても、実際には資本的支出に該当し、一時に費用とすることができないこともありますので、その判断は慎重にする必要があります。

生命保険による節税のデメリット

ここまで、生命保険を使った本当の意味での節税効果について説明してきましたが、メリットだけではなくデメリットについても確認したいと思います。

● 一定額のキャッシュフローが固定される。

生命保険の加入によって、毎月あるいは毎年一定額の支払いが発生するため、本業のキャッシュフローに余裕がない法人には利用が難しいかもしれません。

● 解約のピークが決まっている

解約返戻金がピークではない時期に退職、あるいは修繕計画を実行したときなどは、節税額が少なくなる、あるいは結果として生命保険に加入しないほうが良かったということにもなりかねません。

以上、生命保険を利用した節税方法について解説してきました。実際に生命保険に加入する際には、今回は書ききれなかったメリット及びデメリットなども多々ありますので、それらを多面的に確認し検討する必要もあると思います。
さらに、会社の事業計画等も確認し、事前に綿密な準備の基に進めていくことになります。生命保険の活用により、会社オーナー及び会社の双方にメリットがあることを期待しておりますので、顧問税理士などとご相談のうえご検討頂ければと思います。

 

税理士 西村敦正氏
株式会社BAMC associates代表税理士。相続・事業承継を中心とする資産税が専門。1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案件に精通している。

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