社歴の長い法人の中には借入依存度が低くキャッシュが潤沢で、内部留保の蓄積により株価が高額なケースも見受けられます。このような法人の株主である個人に相続が発生すると、株式評価額に対する相続税負担も大きいことから、金庫株(株式の発行会社が自己株式を買い戻して保有すること)による相続税の納税といった方法も検討できます。[br] 相続又は遺贈により財産を取得して相続税を課税された人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合においては、自己株式の譲渡でもみなし配当課税は適用されずに、譲渡対価の全額が株式の譲渡所得の収入金額とされ、譲渡所得課税されます。みなし配当課税だと最高税率で所得税・住民税合わせて43%強の課税がされますが、譲渡所得課税になると、税率が所得税・住民税・復興税合わせて20.315%に抑えられます。[br] 更に譲渡所得課税の場合、所得金額の計算上、相続税額を取得費に加算する特例の適用が可能となります。非上場株式を相続又は遺贈により取得したときに課された相続税額のうち、その株式の相続税評価額に対応する部分の金額を取得費に加算して収入金額から控除することができます。相続人は相続税の納税資金の調達と所得税の負担を抑える事が可能となります。[br] 法人のキャッシュが薄くて、株式買取り資金の融資を検討する場合でも、金融機関として新たな融資機会として興味を示す事も考えられるため、相談してみる価値が有りますし、法人は資金繰りの安定化と借入利息の損金算入といった効果も考えられます。[br]
前回は法人疎開の活用例として基本的なケースを解説しましたが、最終回の今回は応用的なケースを解説します。